本「サラバ!」
僕の妹は嫌われ者だ。
本人もそれを自覚していて、人は自分の事を嫌いから入るのだと言っていた。
自分の思う事を素直に口に出し、自分のやりたいようにやる事が災いしているのかもしれない。
小さなころから酷いアトピーで外見に恵まれなかったから人に避けられたのかもしれない。
僕も子供の頃はアトピーで幼稚園に通っていた時、背中のぶつぶつを確認され今日は綺麗だから遊んでやるといじめられた覚えがある。
僕は小学生にあがるといつの間にかアトピーが治った。妹は大人になるまでずっとアトピーに悩まされたようだ。
妹はとても心が強いのでいじめとまではいかなかったようだが、人の輪には入れず、異端児として扱われていたようだ。
父親に殴られていた僕は、子供の頃妹をよく殴っていた。
妹は今でも恨みに思っているらしい。僕も父親を恨んでいるところがあるので当然だと思う。
ブルーハーツは「弱い者たちは夕暮れ、更に弱いものを叩く」と歌っていたが、僕の家に当てはまることだった。
そんな妹はおじさん受けが昔から良く、父の上司や親せきの間で妹を可愛がってくれる人達がいた。義父も妹の事は我が子のように可愛がっている。
高校生ぐらいまで彼氏が出来たなんて噂を聞かなかったが、大人になると異性にもモテるようになったらしい。
アトピーが治ってきたことと無縁ではないかもしれない。
妹は昨年四回目の結婚をし、四人目の子どもを産んだ。
大きくなった上の二人はとても母親になついており、子供たちの良い母親なのかもしれない。
母の話によると今は穏やかで幸せそうだという事だ。
「サラバ!」の主人公の姉は僕に妹を思い起こさせる。
人に嫌われても我が道を行く。その徹底した生き方は僕の妹の生き方に相通じるものがある。
主人公の母親のマイペースぶりも形は異なるが僕の母親のようだ。
この物語の主人公のように色々な事に恵まれていないが、僕は主人公の立場や気持ちに共感して僕の為の物語のように読み進んだ。
主人公の姉と自分の価値観がガラリと変わるところでは、病気になって僕と妹の立場が変わった時を思い起こされた。
とても興味深い壮大な話だった。
飲んだ時に母親に薦めたが、今は読んでほしくないような気持になっている。
本を読む時や、映画を観る時の、この物語は自分のための物語だと思う感覚がすごく好きだ。
「サラバ!」に関しては、妹や母親を含めて僕たち家族の為の物語だと思った。
そう思う経験は中々ない、ものすごく貴重な経験を得られたと思う。