映画「狭霧の國」
僕は割と人形劇を見て育ってきた。
ドリフターズの人形劇の孫悟空も覚えているし、サンダーバードも記憶にある。NHKのひょっこりひょうたん島やプリンプリン物語や三国志なんかも知っている。
僕が子供の頃は多くの人形劇が見られた。
特に強烈に覚えているのはNHKでやっていた影絵の人形劇で「パンを踏んだ娘」だ。
金持ちの性格の悪い娘が、貧乏な家庭に施すパンを水たまりに捨て、踏みつけると地獄へ落ちるのだ。
凄い話だし、地獄の様子の恐ろしさや、娘の性格の悪さが相当印象的だった。
様々な人形劇に触れてきたので、人形劇を観ることに抵抗がない。
この映画は人形劇でしかも怪獣映画という事に惹かれた。
僕は怪獣映画に疎く、最近までゴジラとガメラが別の会社の怪獣だという事も知らなかった。
真夜中の映画サークルで先輩に、だからゴジラとガメラは共演することがないと聞いてビックリした。
子供の頃はウルトラマンなんかも好きだったし、怪獣もそれなりに興味を持っていたが、怪獣映画をまともに見たことがなかった。ハリウッドのゴジラやキングコングを観たぐらいだ。
だからこの映画が90年代の怪獣映画へのオマージュと聞いてもピンとこない。
映画の舞台は明治時代の大分県だ。
もちろん地元が舞台であり、実際に竹田市で撮影されてということも映画館に足を運ぶきっかけになった。
都会から帰ってきた青年が、実家の倉に閉じ込められた目の見えない少女と出会い、少女が通じていた怪獣と向き合う話だ。
人形劇の良さは、表現が制限されるので違和感があるが、一度納得するとその世界に入っていけることだ。
人形の造形が大人向きなこともあり、この世界では怪獣はリアルな存在だと感じられた。
人間の醜さも人形で上手に表現されていた。
多くの制約のせいだろうか、40分という短さは物足りなさを感じたし、単純によくある話に思えた点は満足とまではいかなかった。
それでも、そんなに古くない昔に、大分の山奥に怪獣がいた伝説を僕の心に育ててくれた事は良かった。