映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」 | MOONLIGHT EXPRESS ムーンライトエクスプレス

映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」

「人間には胴元になる遺伝子を持つ者と、カモになる遺伝子を持つ者がいる。」という研究を大学の講義で習った。

あらゆるギャンブルが成り立つためには、遺伝子的に胴元となる者とカモになる者がいるのではないかとういう仮説による研究で、そうでなければ皆が胴元になりたがりあらゆるギャンブルが成り立たないのではないかという事だった。

それを聞いてヒヤリとした。

僕は元々ギャンブルが弱く、カモられる遺伝子を持っているのではないかと思ったからだ。

それから僕はカモではなく胴元になることを意識して行動している。

例えば、カモにならないよう一切のギャンブルをやらず、胴元側になるためにパチンコ屋でアルバイトをした。

学生時代にはパチンコを行ったが、それは攻略法が分かった「花百景」という台のみであり、攻略法のおかげで随分と金儲けをした。
本来、胴元であるパチンコ店をカモにしたのである。

この映画の主人公(黒木華)は典型的なカモ遺伝子の持ち主である。

気の弱い真面目な性格だが、ネットで見つけた結婚相手に嘘をつくずる賢さがある。

そのずる賢さが仇となり、綾野剛演じる男に騙されズルズルと幸せを壊されていくカモとなる。

騙されどんどん落ちていく様は間抜けで馬鹿でどうしようもなく、呆れてしまい映画を見なきゃよかったと思った。

映画の上映時間は3時間の長丁場。

映画の前半で、早く帰りたいなぁ。失敗したなぁ。岩井俊二監督はやっぱり合わないと思った。

しかし、どん底まで落ちてからの主人公のひた向きで真面目な姿が健気で応援したくなる。

観客は胴元の目線から騙されているカモである主人公を間抜けに思い、途中からカモの目線になり主人公を応援したくなるのだ。

観終わった後には3時間が長く感じられず気分がスッキリした。

カモは自分をカモだとは気付かない。

この主人公も最後まで騙されたとは気付かないままに生き抜くのだ。

この主人公のように実直に生き、そのことが自分を救うようになるのならカモ遺伝子を持っていてもいいなと思った。

大学時代に友達の従妹が岩井俊二と結婚した。

その友達が聞いているのを知らずに、「岩井俊二の映画って映画って感じがしないんだよね」って言ったら、それを端で聞いていた友達に、「岩井さんすごいいい人なんだよ。」っていう訳のわからない反論をされた。

僕は「スワロウテイル」も「リリイ・シュシュのすべて」も見てないけど、岩井俊二の「リップヴァンウィンクルの花嫁」はいい人が作る映画だねってその友達に言いたい。