血は水より濃いが酒より薄い | MOONLIGHT EXPRESS ムーンライトエクスプレス

血は水より濃いが酒より薄い

昨年4月の頭に祖母が亡くなった。

もう胃ろう(直接栄養分を胃に流し込むこと)をしていたので先が長くないことは分かっていたが唐突だった。

仕事前に母から電話があり、その日から3日間会社を休んだ。
会社を休んだ当日「あまちゃん」の2回目の放送があり、いつもは会社で見られないのだが、それを見てハマってしまい。その後の全てを録画して見るようになった。

僕は礼服をクリーニングに出し、仕事のスーツのまま母の実家に向かった。母の実家には伯母と従弟たちが数人集まっていた。

僕は祖母の顔を見てその安らかな死顔に安心した。

すごく我儘で好き勝手に生きた人なんだけど、良い死に方をしたんだと思いホッとした。

その内、家族全体が集まるんだけど、とても居心地が悪かった。皆が僕が精神科に通っていることを知っているのだけど、腫れ物に触るように僕を扱うのだった。

恵まれたことに友だちに精神科に通っているっことを伝えても、そんな態度をとられたことがない。

しかし身内の中にそういう人間がいることを嫌う人が中にはいるのだ。

特に露骨だったのは従姉と結婚した旦那で、この男はバンド活動をすると言って高校を中退し東京でしばらく暮らし帰郷した時にたまたま従姉と再会し結婚したのだ。

婿養子で母の実家に入り、伯母に紹介された地元の味噌・醤油メーカーにパートで勤めていて、話せば悪いやつじゃないけど学がないためまともな会話ができないが、跡取りとして威張っているのだ。

昔は話もしていたが僕が精神科に通い始めてから露骨に嫌な態度をとるようになった。

程度の差こそあれ、母の末の妹一家を除いて、全員が腫れ物に触る感じで僕に接するため、自分の祖母の通夜・葬式なのにアウェイ感が半端なかった。

身内びいきの事を“血は水より濃い”なんていうけど、他人の方がよっぽど僕に良くしてくれる。

その時に僕が思ったのは“血は水より濃いけど酒よりは薄い”という事だ。

それは全くの見ず知らずの他人よりも身内びいきをするが、遠くの親戚よりも近くの他人というように血縁関係にあるよりも酒を一緒に飲める友だちの方が結び付きが強く大事なものだと僕は
思う。

僕は病気になっても変わらず接してくれる友達に感謝するし、そんな友だちを持って誇りに思う。

祖母の葬儀は滞りなく終わった。

もうしばらくは親戚で集まることはないだろう。

次に集まるとしたら僕の結婚式か。

その時は従姉達は呼ばないし、自分達が主役なのでアウェイじゃなくホームになるように万全に準備を整えようと思う。