自分が子どもの頃は夜九時以降はテレビ禁止だったこともあり、時おり家族団らんに花が咲いた。
父はそういうとき、座を盛り上げるのがうまかった。
翻って令和の我が家は特にルールを設けていない。
食事を一緒にする機会も子どもたちが成長するに連れ、減った。
家族共通の話題で盛り上がることは滅多にない。そんなもんだろう。
子どもが大学生になり、大人の思考に近づけば、また関係性も変わるかもしれない。その時が楽しみだ。
高校三年生の長男は、年相応に憎たらしい口をきくが、たまに返事をよこすときの口調は純朴である。
好きなお笑い番組を見ているときは実に朗らかに笑う。
その純朴さと朗らかさは貴重だよといつも思っている。
大学受験を控え、それだけじゃないかもしれないが、鬱屈は抱えているようだ。
かねがね精神力が伸びるとき、学力も伸びると感じている。
何というか、認知能力が上がるのだ。反抗期の十代に顕著だが、人は普段バイアスをかけて物事を見ている。
それが何かをきっかけに、そのバイアスがとれ、物事をそのまま受け止められるようになることがある。
それが受験期に重なると成績が伸びやすい。
傍から見ると、性格が素直になったなと感じられたりするが、他人の言動にことごとく突っかかっていたのを、そうだというものは取り入れるようになるからそう見えるのだろう。
きっかけは与えられるものではない。自力で切り開いてほしいと思っている。
高校一年生の次男は、おしゃべり好きで、話しかけやすい。貴重な存在である。
ドラマを見ながら、先の展開について二人でああだこうだ言うのが好きで、静かに見たい妻によく迷惑がられる。
この前は高校から見える山が素晴らしいという話をしてくれた。
その素直さが人生を豊かにしてくれるだろう。
妻は、基本的に機嫌の良い時しか口をきいてくれない。一度言ったことや言わずもがな的なことは、言えば叱られる。
最小限の言葉で構成する、言わば俳句的な会話を強いられている。
腹の調子が悪いと呟いても、反応はない。
ただ、そういうときはかぼちゃスープとかお腹に優しい料理を作ってくれる。
ありがたいことだ。