天気が良いので部屋と風呂場の掃除をした。


 妻がせっせとしていたので、自分もせざるを得なかっただけなのだが。


 普段放っておいたところところを掃除すると、埃が舞ったり、黴の臭いがしたり。


 これは何の隠喩だろうかと考えた。単純に考えれば記憶である。


 そう言えば、最近作った曲に

「澱となって沈んだ過去を今更なぜかき回す」という歌詞をつけた。


 掻き回すとか、搔き乱すとか、否定的な文脈で用いられることが多い。

 

 他人を怒らせる手段として、その人の過去をほじくり返すのは有効である。自分もよく失敗した。


 因みに、最も効率的に相手を怒らせる方法は、名前を3回続けて言い間違えることである。これは亜月裕作『伊賀野カバ丸』で学んだ。


 まあ、そのまま葬りたい過去を誰しも持っているだろう。


 その一方でこう思う。


 後悔はその人を形づくる。

 

 自分が犯した失敗をどう受け止め、どう活かしていくかで、その人となるのではなかろうか。


 ミステリー小説に出てくる犯人や刑事はそんな人間ばかりである。

 過去を一切省みないサイコパスも登場もしたりするが。


 佐々木譲の本を読んでいるときだった。登場人物の行動原理に近しいものを感じた。


 その時なぜ自分がミステリー小説を好むかわかった気がした。