「おばさん、ヒロシ兄ちゃんかえってきたんでしょう。2階にいるの?」リョウコの声がした。
母のマユミが「昨日帰ってきたのよ。まだいるんじゃない?」
「じゃ、おじゃまします」
「あら、今日は意外と礼儀正しいのね」
リョウコの家は2軒となりにある。
ヒロシの父シゲオとリツヨ、リョウコの父ヨシオが親友で一緒に家を建てたのである。
だから、小さなときから互いの家を自分家のように行き来していた。当然母親同士も大変仲がよい。
ヒロシは教育実習のため、昨日帰ってきていた。20日間の実習を受け、単位を取得しなければ教員免許がもらえない。
「ヒロシ兄ちゃん入っていい。」と部屋の外からリョウコの声がした。
「いいよ」
「じゃ、邪魔するね」
「なんで俺が帰っているの知ってんだよ。」
「あ・・昨日お姉ちゃんとお母さんがヒロシ兄ちゃんが教育実習で長崎に帰ってくるって電話で話しているの聞いちゃった。」
「私、うれしくって。あしたからヒロシ兄ちゃんと一緒に学校行けるなんて夢みたい。あした迎えに来てあげるね。」
「おい、一緒に行くのは良しとしても、学校の中でヒロシ兄ちゃんとか呼ぶなよな」
「うん、わかってるって」
リヨウコはうれしそうに返事をした。リョウコはミニスカートにTシャツ姿で、動くたびにスカートから白いものがちらっと見える。また、床にうつむいて本を読んでいるときには、胸の谷間が見える。
ヒロシは、こいつも大きくなったな~思った。考えればこうやって2人きりで部屋にいるなんて何年ぶりだろう。いつももう一人リツヨがいた。
「リョウコ、お前部活何やってんだ?」
「さ~て、何でしょう。当ててみてよ。」
「バレー、バスケ、弓道?」
「は・ず・れ、実は野球部」
「え~、本当かよ」
「女子の野球部ってできたんだ」
「何を馬鹿なこと言ってんのよ、硬式野球部のマネージャー兼アイドル」
「だって、ヒロシ兄ちゃんのファンの私としてはそれがベストの選択だったのよ。わかった?」
「明日から学校のこと、一緒に行くときにレクチャーしてあげるね。」
「お前、3年何組だよ」
「3組よ、どうして」
「3年3組の担当だけはずしてもらおう~と」
「それは、無理ね。だって担任は社会のチズコ先生よ。知っているでしょ。」
「だから、たぶん私のクラスを担当することになるわよ」とケラケラ笑った。