大阪府堺市保護者会(PTA)裁判の概要 | 義勇兵のブログ

義勇兵のブログ

高校時代に芦原会館で空手を学び、武道・武術の研究がライフワークになりました。
趣味の少林寺拳法、羅漢拳法、ガンプラ、読書他色々なことを書いていきます。

城陽市のPTAや学童保育所の保護者会の改革を行っています。


にほんブログ村 教育ブログ PTA活動へ
にほんブログ村



最近話題の某保護者会(PTA)裁判  会費等返還請求事件についての概要を紹介します。


1、訴状 原告
「(抜粋)
請求の趣旨
1、被告は、原告に対し、金1万3千円とこれに対する、訴状送達の翌日から支払い済みまで年5分の割合の金員を支払え。
2、訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。

請求の原因
第1 当事者
 1     原告は、○○○○○中学校に在籍する生徒2名の保護者である。
 2、被告は、○○○○○中学校・高等学校に在籍する生徒の保護者を主な対象とする、保護者会(所謂PTA)の会長である。

第2 被告の不法行為
 1 被告は、原告が平成25年4月に○○を○○○○○中学校へ入学させた際、保護者会からの説明及び配布された書面により、参加が強制であると原告に誤認させた。
 2 被告は、原告が平成25年度限りで退会を申し出たにも関わらずこれを認めず、会費を徴収し、原告が返還を請求したにも関わらず、返還を行わなかった。
 3  被告は、原告が平成26年4月に○○を○○○○○中学校へ入学させた際、保護者会への加入意思が無いことを知りながら、入会金及び会費を徴収し、原告が返還を請求したにも関わらず、返還を行わなかった。」


2、答弁書 被告
「 答弁書(別紙)

4、私の言い分
(1) 訴状を拝見する以上、いかにも強制的入会とありますが、原告は平成25年度保護者会学級委員を引き受けられ、委員会活動にも積極的に参加されている事を考えると、強制的とは考え難く、逆に保護者会の行事に対し理解と支援を頂いていると思っていました。強制的入会を主張される方が何故、委員会活動に積極的に参加されるのか?疑問です。

(2)○○会則第3章ー第7条にあるようにPTAではなく、保護者会であり、第3章ー6条にあるように自主独立のルールに基づき進めている会であります。
本会は、学校の教育活動に大きく関与している為(義勇兵注 被告代表は後ほど第1準備書面に対する回答で「関与」の表現を「寄与」に訂正されています。)、団体行動に影響が生じる可能性がある為、本校生徒の保護者は全員参加を呼びかけております。しかし、原告のお子様に影響が出ても構わないと、お申し出があり、学校にもお話し合いをお願いしましたが、6月1日に回答書が送られ、6月11日迄に会費の返還請求と結論付けられましたので、現金書留で会費○○○○○円×2名分&○○○○円の入会金=○○○○○を送付した次第です。本来、会費は学期ごとに3回に分けて授業料と一緒に引き落とされ、現時点では1回分の返還で良かったのですが、学校のシステム上、直ぐに止められない旨事務局から聞き、念の為、一年分の送金にいたりました。

(3)今回、法的措置をとられた事を考え原告のお子様に対して保護者として十分検討されたと判断し学校長に再度相談の上、退会はやむを得ない判断と思いますので、会費の返還の許可を取り、ご指定の口座に速やかに返金さけていただきます。

*最後に、同じ学校に通わせる保護者として、保護者会より生徒達に支給さるお弁当や、保護者会主催の行事に、原告のお子様達が一緒に集えない事を考えると、胸が痛くなります。」


3、第1準備書面 原告
4、第1準備書面に対する回答 被告
5、第2準備書面 原告
6、第2準備書面に対する回答 被告
7、判決文

某保護者会(PTA)裁判では被告の不法行為については判断されませんでしたが、任意団体が入会・退会手続きのルールを定めていないために起きた問題です。

今回の裁判では被告も退会を認め、会費を返還しようとしたことから、判決文にあるように、

「主文
1、被告は、原告に対し、○○○○○円及びこれに対する平成26年6月25日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2、訴訟費用は原告は原告の負担とする。
3、この判決は第1項に限り仮に執行することができる。」

との原告・被告双方に配慮した判決が出されたと思います。

原告の訴状・準備書面の内容を読むと分かりますが、被告が入会に際して消費者契約法に基づく重要事項の説明を行わず、また原告が退会を申し出た後、退会を認めていないにも関わらず、会費を送り返す対応を行ったことが原因です。(退会通知は裁判が始まった後、7月17日に被告から原告に内容証明郵便にて送付)

PTAや保護者会のような任意加入の任意団体が、入会に際しての消費者契約法の重要事項の説明と、口頭・文書による入会意思の確認を行わなければ、こういう問題が起きることが明確になったと思います。




参考資料

「 判決文

会費等返還請求事件
口頭弁論集結日 平成26年8月1日

判決
(一部省略)

主文
1、被告は、原告に対し、○○○○○円及びこれに対する平成26年6月25日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2、訴訟費用は原告は原告の負担とする。
3、この判決は第1項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由
1、原告の請求
主文第1項同旨

2、請求の原因
(1)平成25年4月に原告の○○が、平成26年4月に同○○が、それぞれ○○○○○へ入学したものであるが、それぞれの入学に当たって、原告は被告へ入会させられた。
(2)原告は、被告に対し、平成26年3月中に、平成25年度限りで被告を退会する旨申し出た。
(3)しかるに、被告は平成26年4月以後に、原告の口座から○○と○○の保護者としての会費等○○○○○円を引き落とした。
(4)よって、原告は、被告に対し、会費等の返還として○○○○○円及びこれに対する平成26年6月25日(訴状送達日の翌日)から支払い済みまで年五分の割合による遅延損害金を請求する。
(5)被告は、原告に対し、被告への入会が強制と認識させて、原告を入会させて、原告を入会させたものであり、これは民法709条の不法行為を構成する。これによる原告の損害金は○○○○○円である。
(6)よって、原告は、被告に対し、不法行為による損害賠償○○○○○円及びこれに対する平成26年6月25日(訴状送達の翌日)から支払い済みまで年五分の割合による遅延損害金を請求する。

3、被告の認否
請求の原因(1)ないし(3)の会費等の返還請求は認めるが、同(4)の不法行為による請求は否認する(被告の答弁書1枚目には、原告の請求を全部認めるかのごとき記載があるが、同2枚目には、原告の被告への入会が強制的であったことを争う記述があるから、不法行為について自白が成立したものとは認められない。)。

4、判断
(1)原告の会費等返還請求と不法行為に基づく請求との関係について

原告の上記2つの請求は、両立するものではないから、選択的な請求(いずれか1つの請求が棄却されるときに、他方の請求について判断を求めるもの)であるというべきところ、被告は会費等の返還請求を認めており、この請求は不当利得に基づく返還請求及び催告後の遅延損害金請求として認容すべきであるから、不法行為に基づく請求については判断する必要がない。

(2)訴訟費用の負担について

証拠(甲5ないし甲7)によると、原告は、被告に対し、本件で請求している会費等○○○○○円を平成26年6月11日までに返還するよう求める内容証明郵便を同1日に発送したところ、被告は原告に対し現金書留で○○○○○円を送金し、これは同月11日までに原告へ到達したこと(被告の主張によると、自動引落解消に時間が係ることを考慮して、平成26年度1年分の会費等として○○○○○円を送金したという。)、しかし、同現金書留郵便には○○○○○円の趣旨の説明書が同封されていなかったので、原告は被告に対し、同月12日、同金員を現金書留で送り返したこと、以上の事実が認められる。

上記事実によれば、原告が被告に対し返還を求めた期限又はそれに近い日に、返還を求めた金額を超える現金が被告から送られてきたのであるから、その現金には、原告が返還を求めた金員が含まれていたことが明らかである。したがって、原告としては、返還を求めた○○○○○円を受け取り、残りの○○○○○円から返送に要する費用を差し引いた残額を送り返せば事足りたものというべきであり、そのようにすれば本件訴訟を提起する必要はなかったのである。

以上のような事情を考慮すると、民事訴訟法62条により、本件の訴訟費用は全部原告に負担させるのが相当である。

5、結び

よって、よって、原告の会費等返還請求及び遅延損害金請求は理由があるから認容し、訴訟費用は原告に負担させることとして、主文のとおり判決する。

以上です。