第31回 法律用語の解説 ~民法編~
こんにちは。法律相談部2回生の永島(ながしま)です。
今回は、民法96条に規定されている、詐欺・強迫について解説します。
1 詐欺
民法では、詐欺による意思表示は取り消すことができると規定されています。(96条1項)
以下のような事例の中で、詐欺が問題となります。
1 事例
不動産業を営むBは、Aの所有する甲土地の資産価値に目を向け、入手したいと考えていた。
そこで、BはAに対して「甲土地付近で土壌汚染調査をしたところ、有害物質が検出された。
わが社は行政庁から、甲土地を買い取り、有害物質を取り除いてほしいと頼まれた。
甲土地を売ってくれないか。」と口からでまかせの説明をした。
Aは、Bの話を信じ、甲土地をAに売却した。
2 定義
事例のように、詐欺とは、他人をだましてその者を錯誤に陥れて意思表示をさせることと定義されます。
したがって、詐欺の場合にも、錯誤の要素があるということです。そして、その場合の錯誤は動機の錯誤です。
錯誤について既に学ばれた方もおられると思います。わからない方は教科書等で調べてみてください。
また、当ブログで錯誤について解説している記事もありますので、ぜひご覧ください。
3 要件
次に、詐欺を理由とする意思表示の取消しの要件について解説します。
詐欺を理由とする取消しが認められるためには、次の要件が必要になります。
⒜欺罔者(だます人)の故意
⒝欺罔行為(だます行為)と意思表示の因果関係
⒞欺罔行為の違法性
⒜の要件は、故意によってだましたと認められなければ、詐欺が認められないということです。
この故意は、だます意思(欺罔の意思)と表意者に意思表示させる意思とから成り立っているもので、このいずれもが充たされたとき、故意があるとされます。
⒝の要件は、欺罔行為によって表意者が欺罔されたことと、欺罔されたことによって意思表示をしたことが必要であるということです。
⒞の要件は、欺罔行為は取引上要求される信義に反するものでなければならないということです。
以上の詐欺の要件が充たされれば、表意者は意思表示を取り消すことができます。(96
条1項)
また、第三者が詐欺を行った場合、相手方が詐欺の事実を知り、または知ることができた限りにおいて、表意者は意思表示を取り消すことができます。(96条2項)
2 強迫
次に、強迫について解説します。
強迫による意思表示も、民法96条1項によって取り消すことが可能です。
以下のような事例の中で、強迫が問題となります。
1 事例
(Ⅰ)BはAに対し「契約をしないならばひどい目にあわせる」などと告知し、恐怖を感じたAはBと契約を締結した。
(Ⅱ)Bは会社役員であるAの不正を知った。そこでBは、Aとの契約を無理やり締結しようと考え「契約をしないならば不正を告発する」と告知した。自身の不正が告発されることに恐怖を感じたAはBとの契約を締結した。
事例(Ⅰ)では、AはBに脅されています。これは明らかに強迫行為ですが、事例(Ⅱ)のようなA自身が不正を行っていたことを告発するという場合でも、強迫が認められる場合があります。
2 定義
事例のように、強迫とは、他人に害悪を示して恐怖心を生じさせ、その人の自由な意思決定を妨げる行為です。
3 要件
強迫を理由とする意思表示の取消しが認められるには、以下の要件が必要です。
⒜強迫者の故意
⒝強迫行為と強迫による意思表示の因果関係
⒞強迫行為の違法性
詐欺と同様に、強迫が認められるためには、⒜故意による強迫であること、⒝強迫行為によって意思表示をしたこと、⒞強迫行為が取引上要求される信義に反するものであることが必要です。
なお、強迫者の故意は、強迫する意思と、表意者に意思表示をさせる意思から成り立っています。
以上の要件が充たされれば強迫による意思表示は、96条1項で取り消すことができます。
3 詐欺と強迫の違い
詐欺による取消しは、善意無過失の第三者(ここにいう第三者は取消しの意思表示がされる前に登場した者です)に対抗することができません。しかし、強迫による取消しは、善意無過失の第三者にも対抗することができます。
なぜこの違いがあるのでしょうか?
その理由は、詐欺の場合、本人が注意することによって詐欺にあうことを回避できる可能性があるという点で、表意者にも責任があるのに比べ、強迫をされて意思表示をする場合、強迫の事例の(Ⅰ)のように表意者に責任がないことが大半であるから、強迫の場合は表意者が詐欺の場合より強く保護される必要があるからです。
以上が詐欺・強迫についての解説になります。
今回は解説していないですが、詐欺による取消しの意思表示がされた後に第三者が登場した場合についても考えなくてはなりません。これについては、重要な判例がありますので、気になった方はぜひ調べてみてください。
本日でブログの投稿は一旦終了とさせていただきます。
ご覧下さりありがとうございました!!
また法律相談部では共に切磋琢磨し、部を盛り上げていく仲間も随時募集しています。
活動に関しての質問、入部希望等の連絡は当アカウントのDMにお願いします!
こんにちは。法律相談部2回生の永島(ながしま)です。
今回は、民法96条に規定されている、詐欺・強迫について解説します。
1 詐欺
民法では、詐欺による意思表示は取り消すことができると規定されています。(96条1項)
以下のような事例の中で、詐欺が問題となります。
1 事例
不動産業を営むBは、Aの所有する甲土地の資産価値に目を向け、入手したいと考えていた。
そこで、BはAに対して「甲土地付近で土壌汚染調査をしたところ、有害物質が検出された。
わが社は行政庁から、甲土地を買い取り、有害物質を取り除いてほしいと頼まれた。
甲土地を売ってくれないか。」と口からでまかせの説明をした。
Aは、Bの話を信じ、甲土地をAに売却した。
2 定義
事例のように、詐欺とは、他人をだましてその者を錯誤に陥れて意思表示をさせることと定義されます。
したがって、詐欺の場合にも、錯誤の要素があるということです。そして、その場合の錯誤は動機の錯誤です。
錯誤について既に学ばれた方もおられると思います。わからない方は教科書等で調べてみてください。
また、当ブログで錯誤について解説している記事もありますので、ぜひご覧ください。
3 要件
次に、詐欺を理由とする意思表示の取消しの要件について解説します。
詐欺を理由とする取消しが認められるためには、次の要件が必要になります。
⒜欺罔者(だます人)の故意
⒝欺罔行為(だます行為)と意思表示の因果関係
⒞欺罔行為の違法性
⒜の要件は、故意によってだましたと認められなければ、詐欺が認められないということです。
この故意は、だます意思(欺罔の意思)と表意者に意思表示させる意思とから成り立っているもので、このいずれもが充たされたとき、故意があるとされます。
⒝の要件は、欺罔行為によって表意者が欺罔されたことと、欺罔されたことによって意思表示をしたことが必要であるということです。
⒞の要件は、欺罔行為は取引上要求される信義に反するものでなければならないということです。
以上の詐欺の要件が充たされれば、表意者は意思表示を取り消すことができます。(96
条1項)
また、第三者が詐欺を行った場合、相手方が詐欺の事実を知り、または知ることができた限りにおいて、表意者は意思表示を取り消すことができます。(96条2項)
2 強迫
次に、強迫について解説します。
強迫による意思表示も、民法96条1項によって取り消すことが可能です。
以下のような事例の中で、強迫が問題となります。
1 事例
(Ⅰ)BはAに対し「契約をしないならばひどい目にあわせる」などと告知し、恐怖を感じたAはBと契約を締結した。
(Ⅱ)Bは会社役員であるAの不正を知った。そこでBは、Aとの契約を無理やり締結しようと考え「契約をしないならば不正を告発する」と告知した。自身の不正が告発されることに恐怖を感じたAはBとの契約を締結した。
事例(Ⅰ)では、AはBに脅されています。これは明らかに強迫行為ですが、事例(Ⅱ)のようなA自身が不正を行っていたことを告発するという場合でも、強迫が認められる場合があります。
2 定義
事例のように、強迫とは、他人に害悪を示して恐怖心を生じさせ、その人の自由な意思決定を妨げる行為です。
3 要件
強迫を理由とする意思表示の取消しが認められるには、以下の要件が必要です。
⒜強迫者の故意
⒝強迫行為と強迫による意思表示の因果関係
⒞強迫行為の違法性
詐欺と同様に、強迫が認められるためには、⒜故意による強迫であること、⒝強迫行為によって意思表示をしたこと、⒞強迫行為が取引上要求される信義に反するものであることが必要です。
なお、強迫者の故意は、強迫する意思と、表意者に意思表示をさせる意思から成り立っています。
以上の要件が充たされれば強迫による意思表示は、96条1項で取り消すことができます。
3 詐欺と強迫の違い
詐欺による取消しは、善意無過失の第三者(ここにいう第三者は取消しの意思表示がされる前に登場した者です)に対抗することができません。しかし、強迫による取消しは、善意無過失の第三者にも対抗することができます。
なぜこの違いがあるのでしょうか?
その理由は、詐欺の場合、本人が注意することによって詐欺にあうことを回避できる可能性があるという点で、表意者にも責任があるのに比べ、強迫をされて意思表示をする場合、強迫の事例の(Ⅰ)のように表意者に責任がないことが大半であるから、強迫の場合は表意者が詐欺の場合より強く保護される必要があるからです。
以上が詐欺・強迫についての解説になります。
今回は解説していないですが、詐欺による取消しの意思表示がされた後に第三者が登場した場合についても考えなくてはなりません。これについては、重要な判例がありますので、気になった方はぜひ調べてみてください。
本日でブログの投稿は一旦終了とさせていただきます。
ご覧下さりありがとうございました!!
また法律相談部では共に切磋琢磨し、部を盛り上げていく仲間も随時募集しています。
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