※ この記事は初学者用に聖書を編集し注を付したものです。

 

バルナバとサウロは、その任務を果した後、マルコと呼ばれていたヨハネを連れて、エルサレムからシリアのアンティオキアに帰って来た。

 

彼らがほかの預言者や教師たちと一緒に主(しゅ)に礼拝を捧げ、断食していると、聖霊がこう告げた。

「バルナバとサウロを私のために聖別して、彼らに授けておいた仕事に当らせなさい。」 

 

バルナバとサウロは聖霊に送り出されて、セレウキアに行き、そこから舟でキプロス島に渡った。 

 

サラミスに着くと、ユダヤ人の諸会堂で神の言葉を宣べ始めた。彼らはヨハネを助手として連れていた。

 

島全体を巡回してパフォスまで行ったところ、そこでユダヤ人の魔術師バルイエスという偽預言者に出会った。 

 

バルイエスは地方総督の所に出入りしていた。この総督は賢明な人であって、

バルナバとサウロを招いて神の言葉を聞こうとした。

 

ところが魔術師エルマは、総督を信仰からそらそうとして、しきりにバルナバとサウロの邪魔をした。

 

サウロ、またの名をパウロは、聖霊に満たされ、エルマをにらみつけて言った。

「あらゆる偽りと邪悪で固まっている悪魔の子よ、すべて正しい者の敵よ。主の真っすぐな道を曲げることを止めないのか。

 

主の御手がお前の上に及んでいる。お前は盲目になって、当分、日の光が見えなくなるのだ。」

 

たちまち、霞みと闇がエルマにかかったため、彼は手さぐりしながら、手を引いてくれる人を捜し回った。

 

総督はこの出来事を見て、主の教えにすっかり驚き、そして信じた。

 

パウロとその一行は、パフォスから船出して、パンフリアのペルガに渡った。

 

ここで、ヨハネは一行から身を引いてエルサレムに帰ってしまった。

 

パウロとバルナバは、ペルガから更に進んで、ピシディア州のアンティオキアに行き、安息日に会堂に入って席に着いた。

 

律法と預言書の朗読があった後、会堂長たちが彼らの所に人を遣わして、「この会衆に何か奨励の言葉がありましたら、どうぞお話しください」と言わせた。 

 

そこでパウロが立ち上がり、手を振りながら言った。

「イスラエルの人たち、ならびに神を敬う方々、お聞きください。

 

イスラエルの神は、私たちの先祖を選び、エジプトの地に滞在中、この民を偉大な者とし、御腕を高く差し上げて、彼らをその地から導き出された。

 

そして約40年の間、荒野で彼らの行いを耐え忍び、カナンの地では7つの異民族を打ち滅ぼし、その地を私たちの先祖に譲り与えられた。

 

その後、神は預言者サムエルの時代まで裁き人たちをお遣わしになった。

 

その時、イスラエルの人々が王を要求したので、神はサウロを彼らにお遣わしになった。

 

それから神はサウロを退け、ダビデを立てて王とされたが、彼について証をして、『私はエッサイの子ダビデを見つけた。彼は私の心に適った人で、私の思うところをすべて実行してくれるだろう』と言われた。

 

神は約束に従って、このダビデの子孫の中から救い主イエスをイスラエルに送られたが、ヨハネがイスラエルのすべての民に悔い改めの洗礼を、あらかじめ宣べ伝えていた。 

 

ヨハネはこう言った。

『私はあなた方が考えているような者ではない。しかし、私の後から来る方がいる。私はその靴を脱がせてあげる値うちもない。』

 

兄弟たち、アブラハムの子孫の方々、ならびに皆さんの中の神を敬う人たち。

この救いの言葉は私たちに送られたのです。 

 

エルサレムに住む人々やその指導者たちは、イエスを認めずに処刑し、それによって預言者の言葉が成就しました。

 

そして、イエスについて書いてあることをすべて成し遂げてから、人々はイエスを木から取り降ろして墓に葬りました。

 

しかし、神はイエスを死人の中から蘇らせたのです。

 

イエスは、ガリラヤからエルサレムへ一緒に行った人たちに、幾日もの間現れました。彼らは今や人々に対してイエスの証人となっています。

 

私たちは、神が先祖たちに対してなされた約束を、ここに宣べ伝えているのです。 

 

神はイエスを蘇らせて、私たち子孫にこの約束をお果しになった。

 

それは、詩編の第2編にも、『あなたこそは、私の子。今日、私はあなたを生んだ』(詩編2編7節)と書いてあるとおりです。

 

また、神がイエスをいつまでも朽ち果てることがないようになさったことについては、次のように言われました。

『私は、ダビデに約束した確かな聖なる祝福を、あなた方に授けよう。』(イザヤ55章3節)

 

だから、ほかの箇所でもこう言っておられる。

『あなたの聖者が朽ち果てるようなことは、お許しにならないであろう。』(詩編16編10節)

 

事実、ダビデは、その時代の人々に神の御旨に従って仕えましたが、やがて眠りにつき、先祖たちの中に加えられて、ついに朽ち果ててしまいました。

 

しかし、神が蘇らせた方は、朽ち果てることがなかったのです。

 

だから兄弟たち、このことを承知しておいていただきたい。

 

このイエスによる罪の許しの福音が、今やあなた方に宣べ伝えられているのです。

 

そして、モーセの律法では義とされることができなかったすべてのことについても、信じる者は誰でも、イエスによって義とされるのです。

 

だから、預言者たちの書に書いてある次のようなことが、あなた方の身に起らないように気をつけなさい。

『侮る者たちよ、驚け、そして滅び去れ。私は、あなた方の時代に1つのことをする。それは、人がどんなに説明して聞かせても、あなた方が到底信じられないことだ。』(ハバクク1章5節)

 

集会が終ってからも、大勢のユダヤ人や信心深い改宗者たちが、パウロとバルナバについて来たので、2人は彼らが引き続き神の恵みに留まっているようにと説き勧めた。

 

次の安息日には、ほとんど町中の人が、神の言葉を聞きに集まって来た。

 

するとユダヤ人たちは、その群衆を見て妬ましく思い、パウロの語ることに口汚く反対した。

 

パウロとバルナバは大胆に語った。

「神の言葉は、まず、あなた方に語り伝えられなければならなかった。

 

しかし、あなた方はそれを退け、自分自身を永遠の命に相応しくない者にしてしまった。

 

だから私たちは、これから方向を変えて異邦人たちの所に行く。 

 

主は私たちにこう命じておられる。

『私は、あなたを立てて異邦人の光とした。あなたが地の果てまでも救いをもたらすために。』(イザヤ49章6節)

 

異邦人たちはこれを聞いて喜び、主の言葉を賛美した。

 

そして、永遠の命に定められていた者は皆、信じた。 

 

こうして、主の言葉はこの地方全体に広まっていった。

 

ところが、ユダヤ人たちは、信心深い貴婦人たちや町の有力者たちを煽動して、

パウロとバルナバを迫害させ、2人をその地方から追い出させた。

 

注:モーセの律法を行っても神から義と認められることはない。

次の聖句を参照。

『 人を生かすことができる律法が与えられたとするなら、確かに人は律法によって義とされたでしょう。しかし、聖書はすべてのものを罪の支配下に閉じ込めたのです。それは、神の約束が、イエス・キリストへの信仰によって、信じる人々に与えられるようになるためでした。信仰が現れる前には、わたしたちは律法の下で監視され、この信仰が啓示されるようになるまで閉じ込められていました。こうして律法は、わたしたちをキリストのもとへ導く養育係となったのです。わたしたちが信仰によって義とされるためです。』(ガラテヤ3章21~24節 新共同訳)

 

「異邦人」とは、非ユダヤ人のことである。

「ユダヤ人だけが救われる」とするのが、ユダヤ教である(これこそ予定説である)。

ユダヤ教の教典「タルムード」は、モーセ五書(創世記~申命記)に対して絶対的な優位性を有する(タルムードの内容は サイト を参照)。

 

パウロとバルナバは、イコニオンへ行った。

 

弟子たちは、ますます喜びと聖霊とに満たされていた。

 

2人がイコニオンでも同じように、ユダヤ人の会堂で語った結果、ユダヤ人やギリシヤ人が大勢信じた。

 

ところが、信じなかったユダヤ人たちは異邦人たちを唆して、兄弟たちに対して悪意を抱かせた。

 

それにもかかわらず、2人は長い期間をそこで過ごして、大胆に主のことを語った。

 

主は、彼らの手によって徴(しるし)と奇跡を行わせ、その恵みの言葉を証された。

 

そこで町の人々が2派に分れ、ある人たちはユダヤ人の側につき、ある人たちは使徒の側についた。 

 

その時、異邦人やユダヤ人が役人たちと一緒になって反対運動を起し、使徒たちを辱しめ、石で打とうとした。

 

2人はそれに気づき、ルステラ、デルベ、及びその付近の地へ逃れ、そこで引き続き福音を伝えた。

 

さて、ルステラに足の不自由な人が座っていた。彼は生まれつき足が悪く、歩いたことは一度もなかった。この人がパウロの話を聞いていた。

 

パウロは彼をじっと見て、癒されるほどの信仰が彼にあるのを認め、大声で、「自分の足で、まっすぐに立ちなさい」と言った。

 

すると彼は踊り上がって歩き出した。

 

群衆はパウロのしたことを見て声を張り上げ、「神々が人間の姿をとって、私たちの所にお降りになったのだ」と叫んだ。

 

彼らはバルナバをゼウスと呼び、パウロはおもに語る人なので、彼をヘルメスと呼んだ。 

 

そして、郊外にあるゼウス神殿の祭司が、群衆と共に2人に犠牲をささげようと思って、雄牛数頭と花輪を門前に持って来た。

 

バルナバとパウロは、これを聞いて自分の上着を引き裂き、群衆の中に飛び込んで行き、叫んで言った。

「皆さん、なぜこんなことをするのですか。私たちもあなた方と同じ人間です。

 

私たちは、あなた方がこのような愚にもつかぬ偶像を捨てて、天地万物をお造りになった生ける神に立ち帰るようにと、福音を説いているのです。

 

神は、過ぎ去った時代には、すべての国々の人がそれぞれの道を行くままにしておかれましたが、それでも御自分のことを証しないでおられたわけではありません。

 

あなた方のために天から雨を降らせ、実りの季節を与え、いろいろな恵みをお与えになっているのです。」

 

こう言って、2人はやっとのことで、群衆が自分たちに犠牲をささげるのをやめさせた。

 

ところが、あるユダヤ人たちが アンティオキアやイコニオンから押しかけて来て、群衆を仲間に引き入れたうえ、パウロを石で打った。

 

彼らは死んでしまったと思ってパウロを町の外に引きずり出した。

 

しかし弟子たちがパウロを取り囲んでいる間に、彼は起き上がって町に入って行った。

 

注:ギリシャ神話の主神である「ゼウス(デウス)」は「サタン」である。

次の聖句を参照。

『 ペルガモにある教会の御使いに、こう書きおくりなさい。鋭いもろ刃のつるぎを持っているかたが、次のように言われる。わたしはあなたの住んでいる所を知っている。そこにはサタンの座がある。あなたは、わたしの名を堅く持ちつづけ、わたしの忠実な証人アンテパスがサタンの住んでいるあなたがたの所で殺された時でさえ、わたしに対する信仰を捨てなかった。』

(黙示録2章12~13節 口語訳)

「サタンの座」とは、ペルガモンにある「ゼウスの大祭壇」のこと。

 

翌日、パウロとバルナバは、デルベに向かって出発した。

 

デルべの町で福音を伝えて、大勢の人を弟子にした。

 

その後、ルステラ、イコニオン、アンティオキアの町々に引き返し、弟子たちを力づけ、信仰を持ち続けるようにと奨励し、「私たちが神の国に入るには、多くの苦難を経なければならない」と語った。

 

また、教会ごとに彼らのために長老を任命し、断食をして祈り、彼らを主に委ねた。

 

それから、2人はパンフリア州のペルガで御言葉を語った後、アタリアに行き、

そこから船でシリア州のアンティオキアに帰った。

 

彼らは到着早々、教会の人々を呼び集めて、神が彼らと共にいてしてくださった数々のこと、また、信仰の門を異邦人に開いてくださったことなどを報告した。

 

さて、ある人たちがユダヤからやって来て、「あなた方も、モーセの慣例に従って割礼を受けなければ救われない」と、兄弟たちに説いていた。

 

パウロやバルナバと、彼らとの間に、少なからぬ紛糾と論争が生じた。

 

それで、パウロ、バルナバ、その他数人の者がエルサレムに行き、使徒たちや長老たちと、この問題について協議することになった。

 

エルサレムに着くと、彼らは教会と使徒たち、長老たちに迎えられて、神が彼らと共にいて成されたことをすべて報告した。 

 

ところが、パリサイ派から信仰に入った人たちが立って、「異邦人にも割礼を施し、モーセの律法を守らせるべきである」と主張した。

 

激しい論争があった後、ペトロが立って言った。

「兄弟たちよ、ご承知のとおり、異邦人が私の口から福音の言葉を聞いて信じるようにと、神は初めの頃に、諸君の中から私をお選びになりました。

 

そして、人の心を御存じである神は、聖霊を我々に賜わったと同様に、彼らにも賜わって、彼らに対して証をなし、また、その信仰によって彼らの心を清め、我々と彼らとの間に何の分け隔てもなさらなかった。 

 

それなのに、諸君はなぜ、先祖も我々自身も負いきれなかった軛(くびき)を、あの弟子たちの首にかけて神を試みるのですか。

 

確かに、主イエスの恵みによって我々は救われるのだと信じるが、それは彼らも同様です。」

 

すると、全会衆は黙ってしまった。

 

それから、バルナバとパウロは、神が行われた数々の徴(しるし)と奇跡のことを説明した。

 

2人が語り終えた後、ヤコブはそれに応じて述べた。

「兄弟たちよ、私の意見を聞いていただきたい。

神が初めに異邦人たちを顧みて、その中から御名を負う民を選び出された次第は、シメオンが既に説明しました。預言者たちの言葉も、それと一致しています。

 

すなわち、こう書いてあります。

『その後、私は帰って来て、倒れたダビデの幕屋を建て変え、崩れた箇所を修理し、それを立て直そう。残っている人々も、私の名を唱えているすべての異邦人も、主を尋ね求めるようになるためである。世の初めからこれらのことを知らせておられる主が、こう仰せになった。』(アモス9章11~12節)

 

そこで、異邦人の中から神に立ち帰る人たちを悩ませてはいけません。

 

ただ、偶像に供えてある汚れた物と、不品行と、絞め殺した動物の肉と血を避けるようにと、彼らに書き送るべきです。昔から、どの町にもモーセの律法を宣べ伝える者がいて、安息日ごとにそれを諸会堂で朗読しているからです。」

 

そこで、使徒たちや長老たちは、全教会と協議した末、バルサバと呼ばれているユダとシラスの2人を選んで、パウロやバルナバと共に、シリア州のアンティオキアに派遣することに決めた。

 

パウロたちは人々に見送られて、シリア州のアンティオキアに行き、会衆を集めて書面を手渡した。人々はそれを読んで、その勧めの言葉を喜んだ。 

 

ユダとシラスは共に預言者であったので、多くの言葉をもって兄弟たちを励まし、力づけた。

 

しばらくそこで過ごした後、ユダは帰って行った。一方、シラスは引き続き留まることにした。

 

パウロとバルナバも滞在を続けて、ほかの多くの人たちと共に、主の言葉を教え、宣べ伝えた。