※ この記事は初学者用に聖書を編集し 注を付したものです。
ギデオンの子アビメレクの後、イッサカル人のトラが士師(裁き人)として立てられ、イスラエルを救った。彼は23年間イスラエルを裁いた。
トラの後、ギレアデ人のヤイルが士師として立てられ、22年間イスラエルを裁いた。 ヤイルは死んで、カモンに葬られた。
イスラエルの人々は再び主の御前に悪を行い、バアルやアシュトレト、更にはアラム人・シドン人・モアブ人・アンモン人・ペリシテ人らの神々に仕えた。
主がイスラエルに対して怒りを発し、彼らをペリシテ人とアンモン人に売り渡されたので、彼らは18年間イスラエルの人々を虐げ悩ました。
また、アンモン人がユダ・ベニヤミン・エフライムを攻めるためにヨルダン川を渡って来たので、イスラエルは非常に悩まされた。
イスラエルの人々は主に助けを求めて言った。
「私たちはバアルに仕え、あなたに罪を犯しました。」
主はイスラエルの人々に言われた。
「私は今まで、あなたたちを敵の手から救い出してきた。
しかし、あなたたちは私を捨ててほかの神々に仕えた。それゆえ私はあなたたちを救わないだろう。
あなたたちが選んだ神々に助けを求め、彼らに救ってもらうがよい。」
イスラエルの人々は主に言った。
「何でもあなたが良いと思われることをしてください。ただどうか、きょう私たちを救ってください。」
そうして彼らは自分たちのうちから異なる神々を取り除いて主に仕えた。
それで主の心はイスラエルの悩みを見るに忍びなくなった。
時に、アンモン人はイスラエルを攻めるためにギレアデに陣を敷いた。
これに対してイスラエルはミツパに陣を敷いた。
ギレアデの長老たちは、勇士であるエフタをトブの地から連れ戻した。
エフタは遊女の子で、父はギレアデであった。
かつてギレアデの子供たちは、エフタに対して「お前はよその産んだ子だから家を継ぐことはできない」と言って彼を追い出した。
それでエフタは兄弟たちのもとから逃げ去ってトブの地に住んでいた。
民はこのエフタを連れ戻して自分たちの指揮官にしたのである。
時に、主の霊がエフタに臨んだ。
エフタはアンモン人に向かって兵を進めた。
主はアンモン人をエフタの手に渡されたので、彼らはイスラエルの前に屈服した。
エフタは6年間イスラエルを裁いた。
エフタの後、イブツァンが7年間イスラエルを裁いた。
イブツァンの後、ゼブルン人のエロンが10年間イスラエルを裁いた。
エロンの後、ピラトン人のアブドンが8年間イスラエルを裁いた。
士師のアブドンが死んだ後、イスラエルの人々がまた主の前に悪を行った。
それで主は彼らを40年間ペリシテ人の手に渡された。
ここにダン族の者で名をマノアというツォアルの人がいた。彼の妻は不妊で、子を産んだことがなかった。
主の御使いが彼女に現れて言った。
「あなたは男の子を産むだろう。それで、あなたはブドウ酒や濃い酒を飲んではならない。また汚れた物を一切 食べてはならない。生まれた子の頭にかみそりを当ててはならない。その子は生れた時から神にささげられたナジル人だからだ。彼はペリシテ人の手からイスラエルを救う先駆者となるだろう。」
やがて彼女は男の子を産んで、その名をサムソンと名付けた。
サムソンは成長し、主は彼を恵まれた。
サムソンがツォアルとエシュタオルの間にいたとき、主の霊が初めて彼を感動させた。
注:「ナジル」とは、ヘブライ語で「聖別された者」という意味である。ナジル人という人種がいるわけではない。民数記6章2~8節を参照。
サムソンは、ティムナに行ったときペリシテ人の娘に目をひかれた。
彼は帰って来て父と母に言った。
「ティムナに住むペリシテ人の娘を私の妻に迎えてください。」
彼の父と母は言った。
「イスラエルの中に女がいないとでも言うのか。割礼を受けないペリシテ人から妻を迎えようとするとは。」
父母はこれが主の計画であることを知らなかった。
その頃、ペリシテ人がイスラエルを治めていた。
こうしてサムソンは父母と共にティムナに行った。
彼がティムナのブドウ畑に着くと、1頭の若い獅子が吠えて彼に向かって来た。
そのとき主の霊が激しく彼に臨んだので、彼はあたかも子山羊を裂くようにその獅子を裂いた。手には何の武器も持っていなかった。サムソンはこの事を父にも母にも告げなかった。
サムソンは女の所へ行って話し合った。彼女はサムソンの心に適った。
日が経って、サムソンは彼女を妻にするために一旦帰ったが、あの獅子の死骸を見るために脇道にそれた。すると獅子の体に蜂の群れがいて、蜜があった。
彼は蜜を手でかき集め、歩きながら食べた。父と母の所に行って彼らにその蜜を与えたので、彼らもそれを食べた。しかし獅子の体からその蜜をかき集めたことは告げなかった。
サムソンは宴会の席を設けた。
ティムナの人々は30人の客を連れて来て同席させた。
サムソンは30人の客に言った。
「あなた方に1つの謎を出そう。もし7日の間に解くことができたなら、あなた方に晴れ着を30着さし上げよう。解くことができなければ、あなた方がそれを私にくれなければならない。」
彼らは言った
「謎を出しなさい。聞かせてもらいましょう。」
サムソンは言った。
「食らう者から食い物が出て、強い者から甘い物が出た。」
彼らは3日経ってもこの謎が解けなかった。
4日目になって、彼らはサムソンの妻に言った。
「夫を説き伏せて謎の意味を明かすようにしなさい。さもないと、あなたと父の家を火で焼くだろう。あなたは私たちの物を取るために私たちを招いたのか。」
サムソンの妻は彼に泣いて言った。
「あなたはただ私を憎むだけで愛してくれません。あなたは私の国の人々に謎を出してその意味を私にも明かしてくれません。」
サムソンは言った。
「自分の父にも母にも明かしていない。どうしてお前に明かせよう。」
彼女は彼に泣きすがった。
7日目になって、サムソンはついに彼女に明かした。ひどく彼に迫ったからである。
彼女は謎を人々に明かした。
日が沈む前に、町の人々はサムソンに言った。
「蜜より甘い物に何があろう。獅子より強いものに何があろう。」
サムソンは彼らに言った。
「私の若いメス牛で耕さなかったなら、謎は解けなかった。」
このとき主の霊が激しくサムソンに臨んだので、サムソンはアシュケロンの町の者30人を殺し、彼らから晴れ着を奪い取って、謎を解いた人々にそれを与えた。
サムソンは激しく怒って父の家に帰った。
日が経って、サムソンは妻を訪れたが、彼女の父は会うことを許さなかった。
彼女の父は言った。
「あなたがあの娘を嫌いになったと思ったので、あなたの客であった者に嫁がせた。妹の方が綺麗ではないか。代りに妻にしてほしい。」
サムソンは彼に言った。
「今度は私がペリシテ人に害を加えても、私に罪はない。」
そこでサムソンはキツネ300匹を捕え、尾と尾を結び合わせて、その結び目に松明を1本ずつ取り付けた。
その松明に火をつけると、それをペリシテ人の麦畑に送り込んで麦を焼き、オリーブ畑も焼いた。
ペリシテ人が言った。
「サムソンの仕業だ。舅(しゅうと)が彼から妻を取り返して客に与えたからだ。」
そこでペリシテ人は、サムソンの妻だった女とその父の家を火で焼き払った。
サムソンが彼らに言った。
「お前たちに仕返しせずにはおかない。」
サムソンは彼らを徹底的に撃って大勢殺した。
こうしてサムソンは、ユダの領地にあるエタムの岩の裂け目に行って、そこに住んだ。
そこでペリシテ人はユダに陣を敷き、レヒを攻めた。
ユダの人々はペリシテ人に言った。
「なぜ私たちの所に攻めて来たのですか。」
彼らは言った。
「サムソンに報復するためだ。」
そこでユダの人々はエタムの岩の裂け目に行って、サムソンに言った。
「ペリシテ人が我々の支配者であることを忘れたのか。どうしてこんなことをしたのか。」
「彼らが私にしたように彼らにしたのです。」
「我々はあなたをペリシテ人の手に渡すために来たのだ。」
「では私を殺さないと誓いなさい。」
「ただあなたをペリシテ人の手に渡すだけだ。殺しはしない。」
彼らは2本の新しい綱で彼を縛り、岩から引き揚げた。
サムソンがレヒに来たとき、ペリシテ人は声を上げて彼に近づいた。
そのとき主の霊が激しく彼に臨んだので、彼の腕を縛っていた綱が火に焼けた亜麻のようになってその縄目が解け落ちた。
彼はロバの新しいあご骨を1つ見つけると、それで1000人を打ち倒した。
彼は非常にのどが渇いたので、主に祈った。
「あなたはこの僕(しもべ)の手によって、この大きな救いを施された。それなのに私は今にも渇いて死に、無割礼の者の手に落ちようとしています。」
そこで神は、レヒにある窪んだ所を裂かれたので、そこから水が流れ出た。
サムソンがそれを飲むと、彼の霊は元気を取り戻した。
サムソンはガザへ行った。
ガザの人々は「サムソンが来た」との知らせを受けると、町の門で待ち伏せし、「朝まで待って彼を殺そう」と言って、夜通し静かにしていた。
ところがサムソンは夜中に起きて町の門の扉と2つの門柱を手につかみ、かんぬきもろとも引き抜いて肩に載せ、ヘブロンの向かいにある山の頂上に運んで行った。
この後、サムソンはソレクの谷にいるデリラという名の女を愛した。
ペリシテ人の領主たちは、その女の所に来て言った。
「サムソンを説き伏せて、彼の怪力がどこにあるのか、またどうすれば彼を縛り上げることができるのかを見つけなさい。そうすれば銀1100枚を差し上げよう。」
そこでデリラはサムソンに怪力の秘密を尋ねた。しかし彼は3度うそをついて教えなかった。
彼女はサムソンに言った。
「あなたの心が私を離れているのに、どうして『愛している』などと言えるのですか。あなたは3度も私を欺き、あなたの怪力がどこにあるのかを教えてくれません。」
デリラが毎日その言葉で彼に迫ったので、彼の魂は死にそうになるほど苦しんだ。
そして彼はついに打ち明けた。
「私は生れた時から神にささげられたナジル人だから、頭にかみそりを当てたことがない。もし髪を剃られたなら、力が抜けて普通の人のようになるだろう。」
デリラはサムソンが心の一切を打ち明けたとみて、ペリシテ人の領主たちを呼んだ。
デリラは自分のひざの上にサムソンを眠らせ、彼の髪の毛をそり落した。
こうして彼の力は抜け去った。
「ペリシテ人があなたに迫っています」とデリラが言うと、サムソンは目を覚まして「いつものように出て行って暴れて来る」と言った。彼は主が自分を離れたことに気付いていなかった。
ペリシテ人はサムソンを捕えた。そして両眼をえぐり、ガザに引いて行って、
青銅の足かせをはめて牢屋の中で臼(うす)を引かせた。
その後、サムソンの髪の毛は再び伸び始めた。
さて、ペリシテ人の領主たちは、彼らの神ダゴンに盛大な犠牲をささげて祝いをしようと、共に集まって言った。
「我々の神は、敵サムソンを我々の手に渡された。」
彼らはまた喜んで言った。
「サムソンを呼んで見せ物にしよう。」
彼らは牢屋からサムソンを呼び出して笑いものにした。
目が見えないサムソンは、自分の手を掴んでいる者に言った。
「私の手を放して、この建物を支えている柱に寄りかからせてほしい。」
建物には男女が満ち、領主たちも皆そこにいた。
屋根の上には3000人ほどいて、見せ物にされているサムソンを見ていた。
サムソンは主に祈った。
「主なる神よ。どうか私を思い起こしてください。ああ、神よ。どうかもう一度私を強くして、ペリシテ人に復讐させてください。」
サムソンは建物を支えている2つの中柱の1つを右腕に、もう1つを左腕に抱えて、それに身を寄せた。
そして「ペリシテ人と共に死のう」と言って、力を込めて身を屈めた。
すると建物が、その中にいた領主たちとすべての民の上に崩れ落ちた。
サムソンが死ぬ時に殺した者の数は、彼が生きている時に殺した者よりも多かった。
やがてサムソンの身内が彼を引き取り、ツォアルとエシュタオルの間にある墓に彼を葬った。
サムソンがイスラエルを裁いた期間は20年であった。
注:サムソンはダン族の出身であるが、ダン族はこのサムソンを最後にほとんど聖書に登場しなくなる。黙示録7章では、その額に神の刻印を押された者の中にダン族だけがいない。