※ この記事は初学者用に聖書を編集し 注を付したものです。

 

 

モーセのために泣き悲しむ日はついに終った。

 

ヨシュアは知恵の霊に満ちた人であった。モーセが彼の上に手を置いたからである。

 

モーセが死んだ後、主(しゅ)はヨシュアに言われた。

「民と共にヨルダン川を渡り、私が与える土地に行きなさい。

 

あなたたちが足の裏で踏む所はすべて、私がモーセに約束したように、あなたたちに与えるだろう。

 

あなたたちの領域は荒野からレバノンに及び、また大河ユーフラテスからヘト人の全地にわたり、日の沈む大海に達するだろう。 

 

あなたが生きている間、あなたに立ち向かうことのできる者は1人もいないだろう。

 

私はモーセと共にいたように、あなたと共にいる。私はあなたを見放すことも、見捨ることもしない。

 

律法をあなたの口から離すことなく、昼も夜もそれを思い、すべて守って行えば、あなたの道は栄え、あなたは勝利を得るだろう。

 

私はあなたに命じたではないか。強く雄々しくあれ。

 

あなたがどこへ行っても主が共におられるゆえ、恐れてはならない。」

 

ヨシュアは民の役人たちに命じた。

「民に食糧を用意するように言いなさい。3日のうちに ヨルダン川を渡る。」

 

注:以下の聖句を参照。

『 あなたの神、主の務めを守ってその道を歩み、モーセの律法に記されているとおり、主の掟と戒めと法と定めを守れ。そうすれば、あなたは何を行っても、どこに向かっても、良い成果を上げることができる。』(列王記上2章3節 新共同訳)

 

〔 イエスは言われた。「『心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。』 これが最も重要な第一の掟である。第二も、これと同じように重要である。『隣人を自分のように愛しなさい。』 律法全体と預言者は、この二つの掟に基づいている。〕(マタイ22章37~40節 新共同訳)

 

ヨシュアは、シッテムから密かに2人の斥候(せっこう)を遣わして、エリコとその周辺を探るように命じていた。

 

彼らはエリコに行って、名をラハブという遊女の家に泊まった。

 

ところが、エリコの王にこのことを告げる者がいた。

 

そこで王は人を遣わしてラハブに命じた。

「お前の所に泊まりに来た者を出せ。彼らはこの国を探るために来たのだ。」

 

しかし、ラハブは屋根に積んであった亜麻の束の中に2人を隠していた。

 

彼女は王の使いに言った。

「確かに私の所に来ましたが、日が暮れて門が閉まる頃に、その人たちは出て行きました。どこへ行ったのかは知りません。急げば追いつけるでしょう。」 

 

そこで王の使いは彼らを追って出て行った。その後、城門はすぐに閉じられた。

 

ラハブは2人に言った。

「主がこの土地をあなた方に賜わったことや、この土地の住民が皆あなた方の前に震えおののいていることを、私は知っています。

 

なぜなら、あなた方がエジプトから出て来られたとき、主が葦の海の水を干されたことや、アモリ人の2人の王シホンとオグを滅ぼしたことを聞いたからです。

 

私たちはそれを聞くと心が挫け、全く勇気を失ってしまいました。あなた方の神、主は、上の天にも下の地にも神でいらせられるからです。 

 

それでどうか、私があなた方に親切にしたように、あなた方も私の一族に親切にすると、いま主の前で誓い、確かな証拠をください。

 

そして私の家族と親族すべてを生き永らえさせ、私たちの命を救ってください。」

 

2人は彼女に言った。

「もし我々のことを誰にも漏らさないならば、命にかけてあなた方を救います。」

 

そこでラハブは彼らを窓から綱で吊り下ろした。その家が町の城壁の上に建っていて、彼女はそこに住んでいたからである。 

 

2人は彼女に言った。

「我々が攻め込むとき、この赤いひもを窓に結び付けておきなさい。またあなたの一族をこの家に集めておきなさい。 

 

誰かが家の外へ出て血を流すことになっても、その責任はその人自身にある。

 

しかし家の中にいる人が血を流すなら、その責任は我々にある。

 

またあなたが我々のことを誰かに漏らすならば、我々はこの誓いから解かれる。」

 

ラハブは言った。

「あなた方の仰せのとおりに致します。」

 

こうして彼女は彼らを送り出した。

 

2人は ヨシュアのもとに帰り、その身に起ったことをすべて報告した。 

 

注:以下の聖句を参照。

『 信仰によって、娼婦ラハブは、様子を探りに来た者たちを穏やかに迎え入れたために、不従順な者たちと一緒に殺されなくて済みました。』(ヘブライ11章31節 新共同訳)

 

『 人は行いによって義とされるのであって、信仰だけによるのではありません。同様に、娼婦ラハブも、あの使いの者たちを家に迎え入れ、別の道から送り出してやるという行いによって、義とされたではありませんか。』(ヤコブ2章24~26節 新共同訳)

 

ヨシュアは朝早く起き、すべてのイスラエルの人々と共にシッテムを出発した。

 

ヨルダンに着くと、川を渡らずにそこに野営した。 

 

3日後、役人たちは宿営の中を行き巡り、民に命じた。

「レビ人である祭司たちが契約の箱を担ぐのを見たならば、その後に続きなさい。そうすれば行くべき道がわかる。

 

ただし契約の箱との間には約2000キュビト(約890メートル)の距離を置き、それ以上 近づいてはならない。」

 

ヨシュアはまた民に言った。

「身を清めなさい。主があなた方のうちに不思議を行われるからだ。」 

 

主はヨシュアに言われた。

「今日から私は、全イスラエルの前にあなたを尊い者とする。

 

こうして私があなたと共にいることを彼らに知らせるだろう。 

 

ヨルダン川の水際に着いたなら、契約の箱を担ぐ祭司たちに命じ、川の中に留まるように言いなさい。」

 

ヨシュアはイスラエルの人々に言った。

「主なる神の箱を担ぐ祭司たちの足が水の中に踏み留まるとき、ヨルダンの水は流れをせき止められ、壁のように高くなるだろう。」

 

春の刈入れの時期で、川の水は岸一面にあふれていたが、箱を担ぐ祭司たちの足が水際に浸ると同時に、上から流れてくる水は留まって、遠くにある町アダムの辺りで壁のように高く立ち、塩の海の方に流れてくる水は完全にせき止められた。

 

全イスラエルが干上がった川床を渡って行く間、契約の箱を担ぐ祭司たちは、

川床の真ん中に立っていた。

 

すべての民が川を渡り終わったとき、主はヨシュアに言われた。

「証しの箱を担ぐ祭司たちに命じて、ヨルダンから上がって来させなさい。」 

 

ヨシュアが命じると、祭司たちは川床から上がって来た。

 

それと同時に、水はもとの流れに戻り、以前のように岸一面にあふれた。

 

正月の10日、民はヨルダン川を渡り、エリコの東の境にあるギルガルに宿営した。

 

アモリ人とカナン人の王たちはみな心が挫け、元気がなくなっていた。主がヨルダン川の水をせき止めて、イスラエルの人々を渡らせたと聞いたからである。

 

ヨシュアがエリコの近くにいたとき、目を上げて見ると、1人の人が剣を手に持ち、こちらに向かって立っていた。

 

ヨシュアはその人に歩み寄って言った。

「味方か、それとも敵か。」 

 

彼は言った。

「いや、私は主の軍勢の将としていま来たのだ。」

 

ヨシュアはひれ伏して言った。

「我が主は、何を僕(しもべ)に告げようとされるのですか。」

 

主の軍勢の将は言った。

「靴を脱ぎなさい。あなたが立っている場所は聖なる所だ。」

 

ヨシュアはそのとおりにした。

 

注:正月は、イスラエルの人々がエジプトを脱出した月である。

 

エリコの町は、イスラエルに備えて城門を堅く閉ざし、誰も出入りできなかった。 

 

主はヨシュアに言われた。

「見よ、私は既にエリコとその王、および勇士たちをあなたの手に渡している。 

 

兵士は町の周囲を一周し、それを6日間 続けなさい。

 

7人の祭司たちは、それぞれ雄羊の角笛を吹きながら、箱に先立って行きなさい。

 

そして7日目には町を7周し、角笛を長く吹き鳴らしなさい。

 

その角笛の音が聞えたなら、民はみな大声で勝ちどきの声を上げなさい。

 

そうすれば町の周囲の石垣は崩れ落ち、攻め入ることができる。」 

 

ヨシュアはそのとおりに民に命じた。

 

7人の祭司たちは主の御前を進み、角笛を吹き鳴らした。

 

契約の箱はその後に従った。 

 

武装した兵士が祭司たちに先立って行き、最後尾の兵士は契約の箱に従った。

 

こうして主の箱を持って町の周囲を1周し、そして宿営に戻った。

 

その次の日も町の周囲を1周して宿営に帰った。6日間そのようにした。

 

7日目には夜明けとともに起き、同じようにして町を7周した。町を7周したのはこの日だけであった。 

 

7周目に祭司たちが角笛を吹いたとき、ヨシュアは民に言った。

「勝ちどきの声を上げよ。主はこの町をあなた方に賜わった。 

 

この町とその中のすべての物は、主への奉納物として滅ぼし尽くしなさい。

 

ただし遊女ラハブとその家にいる者はみな生かしておきなさい。我々が送った使者たちをかくまってくれたからだ。 

 

また奉納物に手を触れてはならない。奉納物をかすめ取ってイスラエルの宿営が滅ぼさることがないようにするためだ。

 

ただし銀・金・青銅の器・鉄の器は聖なる物だから、主の倉に納めなさい。」

 

民が勝ちどきの声を上げると、石垣は崩れ落ちた。

 

そこで民は皆すぐに攻め入った。

 

そして町にあるものは、男・女・若者・老人も、また牛・羊・ロバも、ことごとく剣にかけて滅ぼした。

 

しかし遊女ラハブとその一族の者は、ヨシュアが生かしておいたので、今日までイスラエルのうちに住んでいる。

 

ヨシュアは人々に誓いを立てて言った。

「このエリコの町を再建する人は、主の前に呪われるだろう。

 

その礎を据える人は長子を失い、その門を建てる人は末の子を失うだろう。」

 

主はヨシュアと共におられたので、ヨシュアの名声は、あまねくその土地に広がった。

 

注:北イスラエルの王アハブの治世(紀元前869年~850年)に、このヨシュアの預言が実現することになる。列王記上16章29~34節を参照。

 

ヨシュアはエリコから人を遣わして、ベテルの東にあるアイを探って来るように命じた。

 

彼らは行ってアイを探り、ヨシュアのもとに帰って来て報告した。

「全軍を出撃させるには及びません。2・3千人だけで十分でしょう。彼らは少ないですから。」

 

そこで約3千人の兵士がアイに攻めた。

 

ところが彼らはアイの兵士の前に敗退してしまった。

 

アイの兵士が彼らのうち36人を殺したので、民の心は挫けて水のようになってしまった。

 

ヨシュアは、イスラエルの長老たちと共に主の箱の前で夕方まで地にひれ伏し、塵をかぶった。 

 

ヨシュアは言った。

「ああ、主なる神よ。何故この民に ヨルダン川を渡らせ、私たちをアモリ人の手に渡して滅ぼそうとされるのですか。

 

ヨルダン川の向こうに留まっていればよかったのです。

 

イスラエルが既に敵に背を向けた今となって、私はまた何を言い得ましょう。

 

カナン人とこの土地に住むすべての者は、これを聞いて私たちを攻め囲み、私たちの名をこの土地から消し去ってしまうでしょう。

 

それであなたは、あなたの大いなる名のために何をしようとされるのですか。」

 

主はヨシュアに言われた。

「立ちなさい。どうしてそのようにひれ伏しているのか。 

 

イスラエルは罪を犯して契約を破った。彼らは奉納物を盗み取り、偽ってそれを自分の所有物にした。

 

それでイスラエルは敵に立ち向かうことができず、敵に背を向けたのだ。彼らも滅ぼされるべき者となったからだ。

 

あなたたちがその滅ぼされるべき者を滅ぼし去るのでなければ、私はもはや、

あなたたちとは共にいないだろう。 

 

明日の朝、まず部族ごとに進み出なさい。次に、主の指摘を受けた部族は氏族ごとに進み出なさい。次に、主の指摘を受けた氏族は家族ごとに進み出なさい。最後に、主の指摘を受けた家族は男子一人ずつ進み出なさい。

 

指摘された者は、その持ち物と共に火で焼かれなければならない。主の契約を破り、イスラエルのうちに愚かなことをしたからだ。」

 

こうしてヨシュアは朝早く起き、イスラエルを部族ごとに進み出させた。

 

ユダの諸氏族を進み出させたところ、ゼラの氏族が指摘された。

ゼラの氏族を家族ごとに進み出させたところ、ザブディの家族が指摘された。

ザブディ家の男子を1人ずつ進み出させたところ、アカンが指摘された。

 

ヨシュアはアカンに言った。

「我が子よ。イスラエルの神、主に栄光を帰し、また主を賛美し、あなたのしたことを私に告げなさい。隠してはならない。」

 

アカンはヨシュアに答えた。

「私は主に対して罪を犯しました。分捕り物の中に、シナルの美しい外套(がいとう)1枚、それから銀200シェケル(約2300グラム)と、重さ50シェケル(約570グラム)の金の延べ棒があるのを見て欲しくなり、それを取りました。私の天幕の中に隠してあります。」

 

そこでヨシュアはアカンを捕え、彼の全財産を取って、イスラエルのすべての人々と共に、彼と彼の家族をアコルの谷へ引いて行った。 

 

そしてヨシュアは言った。

「なぜあなたは私たちを悩ましたのか。主は今日あなたを悩まされるだろう。」

 

イスラエルの人々は石で彼を撃ち殺し、また彼の家族をも石で撃ち殺し、彼の持ち物をすべて火で焼いた。 

 

彼らはアカンの上に石塚を大きく積み上げたが、それは今日まで残っている。

 

そして主は激しい怒りをやめられた。

 

主(しゅ)は ヨシュアに言われた。

「恐れてはならない。おののいてはならない。

 

兵士をみな率いてアイに攻め上りなさい。アイの王・その民・その町・その土地をあなたの手に授ける。

 

まず町の後ろに伏兵を置きなさい。」

 

そこで ヨシュアは勇士3万人を選び、それを夜のうちに遣わした。

 

ヨシュアは彼らに命じた。

「町の後ろに伏せていなさい。だたし町を遠く離れてはならない。

 

私は残りの兵士と共に町に攻め寄る。そして敵が向かって出てくるとき、我々は退却するふりをする。

 

敵はこの前と同様、我々が退却すると思うだろう。そうすれば敵は我々を追って町から出てくるだろう。

 

その時あなた方は伏せている所から立ち上がって町を取りなさい。主があなた方の手に町を与えてくださる。」

 

そうして彼らは、ベテルとアイの間の待ち伏せする場所に行って身を伏せた。

 

ヨシュアは明くる朝早く起きて民を招集し、イスラエルの長老たちと共にアイの町に上って行った。

 

そしてアイの北側に陣を取った。またヨシュアは約5000人を選び、町の西側に配置した。

 

こうして兵の主力を町の北に置き、最後部を町の西に置いた。

 

イスラエル軍とアイの間には1つの谷があった。ヨシュアはその夜そこに宿営した。

 

アイの王はこれを知ると、すべての民と共に急ぎ起き出し、イスラエルと戦うために進軍した。

 

しかし町の後ろに伏兵がいることを王は知らなかった。 

 

ヨシュアたちは彼らに打ち破られたふりをして荒野の方へ退却した。

 

町に残っていた兵士たちはそれを見ると、皆ヨシュアたちの後を追い、 アイにもベテルにも残っている兵士は1人もいなくなった。

 

そのとき主はヨシュアに言われた。

「投げ槍をアイに向けて差し伸べなさい。私は町をあなたの手に渡す。」

 

そこでヨシュアが投げ槍をアイの方に差し伸べると、伏兵は一斉にその場から立ち上がって町に攻め込み、直ちに町に火を放った。 

 

アイの兵士が後ろを振り返って町を見ると、煙が天に立ち昇っていた。

 

彼らはどこにも逃げることができなかった。

 

ヨシュアたちは向きを変えてアイの兵士を撃った。

 

また町に攻め入った伏兵たちも町を出て彼らに向かったので、彼らはイスラエル軍の間に挟まれた。

 

こうしてイスラエルが彼らを撃ったので、逃げ延びた者は1人もいなかった。 

 

その日アイの人々は全滅した。その数は男女合わせて1万2000人であった。 

 

こうしてヨシュアはアイを焼いて廃墟としたが、それは今日まで荒れ地となっている。 

 

注:この『ヨシュアのカナン侵攻』を引き合いに出して、「キリスト教の神は異教徒を人間と思っていない狂った神だ」などと言う狂った仏教徒がいる。

 

神がカナン人たちを滅ぼすように命じられたのは、そうしなければイスラエルがカナン人たちに滅ぼされて救いを失ってしまうからである(神が悪人を裁くのは義人を守るためである)。

 

神はカナン人たちが「異教徒だから」滅ぼすように命じられたのではない。「異教徒だから滅ぼせ」などという記述は、旧約・新約をとおして聖書のどこにもないし、そのように解釈できる記述もない。

 

ヨシュアの時代は、相手を殺さなければ自分が殺されてしまうような野蛮な時代だった。そしてカナン人たちは人間の生贄や淫乱邪悪なことを平気で行っていた(レビ記18章)。神はカナン人たちが悪なる行いをやめるのを400年間待たれたが、彼らはやめなかった(創世記15章13~16節参照)。

だから現代人の価値観や常識で三千年以上前に書かれたヨシュア記を読むこと自体がそもそも間違いである。

 

異教徒も含めてこの世のすべての人が救われることを神は望んでおられる。

以下の聖句を参照。

 

『 神は、すべての人々が救われて真理を知るようになることを望んでおられます。』(テモテⅠ2章4節 新共同訳)

 

『 異教徒の間で立派に生活しなさい。そうすれば、彼らはあなたがたを悪人呼ばわりしてはいても、あなたがたの立派な行いをよく見て、訪れの日に神をあがめるようになります。』(ペトロⅠ2章12節 新共同訳)

 

『 あなたがたがまだ異教徒だったころ、誘われるままに、ものの言えない偶像のもとに連れて行かれたことを覚えているでしょう。』(コリントⅠ12章2節 新共同訳)

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使徒たちは神の命令に背いて異教徒を伝道したとでもいうのか。