※ この記事は初学者用に聖書を編集し 注を付したものです。
ノアの息子であるセムの8代後に、テラが生まれた。
テラには、アブラム・ナホル・ハランが生まれた。
ハランにはロトが生まれた。ハランは、父テラより先に故郷カルデアのウルで死んだ。
アブラムの妻の名はサライ、ナホルの妻の名はミルカといった。サライには子供が出来なかった。
テラは、アブラム・ロト・サライを連れてカナン地方へ行くために、ウル を出発した。しかし『パダン・アラム』のハランまで来るとそこにとどまった。
テラはそこで死んだ。
ある日、主(しゅ)がアブラムに言われた。
「今いる土地を出なさい。親族と別れ、父の家を離れて、私が示す土地に行きなさい。
私は、あなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大きくしよう。そして、あなたを祝福する者を祝福し、あなたを呪う者を呪う。
地上の氏族はすべて、あなたによって祝福される。」
アブラムは主の御言葉に従った。
アブラムは、妻のサライと甥のロトを連れ、すべての財産を携え、ハランで加わった人々と共にカナン地方へ出発した。それはアブラムが 75歳の時だった。
アブラムはカナン地方に入り、シェケムの聖所『モレのテレビンの木』の所まで来た。当時、カナン地方はカナン人が住んでいた。
主はアブラムに言われた。
「あなたの子孫にこのカナンの地を与える。」
アブラムは主のために祭壇を築いた。
アブラムは、そこからベテルの東の山地に移ると、ベテルを西に、アイの町を東にして天幕を張った。そこにも主のために祭壇を築いた。
注:以下の聖句を参照。
『 あなたたちの先祖は、アブラハムとナホルの父テラを含めて、昔ユーフラテス川の向こうに住み、他の神々を拝んでいた。』(ヨシュア記24章2節 新共同訳)
『 信仰によって、アブラハムは、自分が財産として受け継ぐことになる土地に出て行くように召し出されると、これに服従し、行き先もわからずに出発したのです。』
(ヘブライ11章8節 新共同訳)
『 あなたこそ、主なる神。アブラムを選んでカルデアのウルから導き出し、名をアブラハムとされた。あなたに対して忠実なその心を認め、彼と契約を結び、子孫に土地を与えると約束された。』(ネヘミヤ記9章7~8節 新共同訳)
『 わたしたちの父アブラハムがメソポタミアにいて、まだハランに住んでいなかったとき、栄光の神が現れ、「あなたの土地と親族を離れ、わたしが示す土地に行け」と言われました。それで、アブラハムはカルデア人の土地を出て、ハランに住みました。神はアブラハムを、彼の父が死んだ後、ハランから今あなたがたの住んでいる土地にお移しになりました… 』(使徒言行録7章2~4節 新共同訳)
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アブラハムがカルデアのウルに住んでいたとき、神は、アブラハムにカナン地方へ行くように示された。だからアブラハムは、テラ・ロト・サライと共に、親族と別れてウルを出発したのである。ところが、何らかの理由で途中のハランにとどまることになった。それで神は、再度アブラハムに現れて、約束の地であるカナンの地へ行くようにと示された。
「それで … ハランに住んだ」とあるので、神が示す土地=ハランと読めてしまう。
しかし、神が示された土地はカナンである。
ベテルは元々「ルズ」と呼ばれていたが、後にアブラハム(アブラム)の子孫であるヤコブがベテルと名付けた(創世記はモーセが神から霊感を受けて書かれたものである)。
新共同訳で、「あなたは生まれ故郷、父の家を離れて、わたしが示す地に行きなさい」(創世記12章1節)と訳されている。これと同じく、創世記24章4~5節でも「故郷」と訳されている。そのため、アブラハムの故郷がハランであるかのように読めてしまう。しかし、新共同訳の訳は間違いである。
「故郷」と訳されている単語のヘブライ語は「erets」である(Site)。
erets の意味は、Earth, land, ground, country, territory などであり、故郷の意味はない。これは、創世記24章4~5節も同じである(Site)。
テラは、アブラハム・ロト・サライを連れてカナン地方へ行くために、故郷のウルを出発した。そして、アブラハムたちが途中のハランにとどまっているときに、神はアブラハムに現れ、カナン地方へ行くようにと再度示された。この話の流れからいって「生まれ故郷を離れて」と訳すのは明らかにおかしい。「今いる土地を離れて」と訳すのが正しい。
このように新共同訳が間違っているため、「アブラハムの故郷と召命の場所について、聖書の記録には混乱が見られる」と誤解する者もいる。
聖書の記述に混乱や矛盾は一切ない。日本語訳が混乱し矛盾しているのである。
アブラムは非常に多くの財産を持っていた。アブラムと共に旅をしていたロトも多くの財産を持っていた。そのため、その土地は、彼らが一緒に住むには不十分であった。
ある日、アブラムの家畜を飼う者たちと、ロトの家畜を飼う者たちとの間に争いが起こった。
アブラムはロトに言った。
「あなたは身内だ。私とあなたの間はもちろん、お互いの羊飼いの間でも争いがないようにしよう。
ここで別れようではないか。あなたが西に行けば、私は東に行く。あなたが東に行けば、私は西に行こう。」
ロトは、ヨルダン川流域の低地を選んで東に移り、その後ソドムに移った。
その頃、ソドムの人々は主に対して多くの罪を犯していた。
一方、アブラムはカナン地方に住んだ。
主がアブラムに言われた。
「目を上げて東西南北を見渡しなさい。
あなたが見渡す全ての土地を、永久にあなたと子孫に与える。そして、あなたの子孫を砂粒のように多くする。
さあ、立って縦横に歩き回るがよい。」
その後、アブラムはヘブロンに移って住み、そこに主のために祭壇を築いた。
注:次の聖句を参照
『 アブラハムとその子孫に対して約束が告げられましたが、その際、多くの人を指して「子孫たちとに」とは言われず、一人の人を指して「あなたの子孫とに」と言われています。この「子孫」とは、キリストのことです。』(ガラテヤ3章16節 新共同訳)
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信仰によってキリストと結ばれた者も、アブラハムの子孫と見なされる(ガラテヤ3章26~29節・ローマ8章14~17節・エフェソ1章11節を参照)。
時に、5つの国(ソドム・ゴモラ・アドマ・ツェボイム・ツォアル)が同盟を結び、シディムの谷で、エラムとその連合国に戦いを挑んだ。
これら5つの国は、エラムに支配されていたが、背いたのである。
シディムの谷は、アスファルトの穴が多かった。
ソドムとゴモラの王は、逃げる時その穴に落ちてしまったが、ほかの王は山へ逃れた。
ソドムとゴモラの町にあった財産や食糧は、すべて奪い去られた。ソドムに住んでいたロトも連れ去られてしまった。
逃げ延びた人がアブラムにこの事を知らせた。当時、アブラムはアモリ人のマムレと同盟を結んでいた。
アブラムは、訓練を受けた者318人を招集し、追跡した。そして町にあったすべての財産を取り返し、ロトとそのほかの人々も取り返した。
アブラムがエラムとその連合国を打ち破って帰って来ると、ソドムの王が出迎えた。いと高き神の祭司である、サレムの王メルキゼデクもパンとブドウ酒を持って来た。
メルキゼデクは言った。
「天地の造り主がアブラムを祝福されますように。敵をあなたの手に渡された、いと高き神がほめたたえられますように。」
アブラムはすべての物の10分の1をメルキゼデクに贈った。
ソドムの王はアブラムに言った。
「どうぞ財産をお取りください。しかし、人は私にお返しください。」
アブラムはソドムの王に言った。
「糸一本・靴ひも一本でも、あなたの物は何も頂きません。アブラムを裕福にしたのは私だと、あなたに言われたくありませんから。
ただ、私と共に戦ってくれた者たちには、分け前を取らせてください。」
これらの事の後、主の言葉が幻の中でアブラムに臨んだ。
「アブラムよ、恐れてはならない。私はあなたの盾だ。あなたの受ける報いは、非常に大きいだろう。」
アブラムは言った。
「主よ。私には子がなく、僕(しもべ)が家を継ぐことになっていますのに、
私に何をくださるというのですか。」
主は言われた。
「その者が跡を継ぐのではなく、あなたの子が跡を継ぐ。」
主は、アブラムを外に連れ出して言われた。
「天を仰いで星を数えることができるなら、数えてみなさい。あなたの子孫は、あの星ようになる。」
アブラムは主を信じた。主はそれを義と認められた。
また主はアブラムに言われた。
「この土地をあなたに与えて、これを継がせる。」
アブラムは言った。
「主よ。それを何によって知ることができるでしょうか。」
主は言われた。
「3歳のメス牛、3歳のメス山羊、3歳のオス羊、山鳩、家鳩の雛を持って来なさい。」
アブラムは、これらのものを持って来て2つに裂き、裂いた物を互いに向い合せて置いた。しかし、鳥は裂かなかった。
荒い鳥が死骸の上に降りて来ると、アブラムはそれを追い払った。
日の沈む頃、アブラムが深い眠りに襲われた時、大きな恐ろしい暗闇が彼に臨んだ。
主はアブラムに言われた。
「よく覚えておきなさい。あなたの子孫は他国の人々に仕え、400年間 苦しめられるだろう。
しかし私は、その国の人々を裁く。あなたの子孫は、多くの財産を携えて脱出できるだろう。
この地に戻ってくるのは4代目の者たちだ。それまでは、アモリ人の悪が極みに達しないからだ。」
日が沈み、暗闇になった。煙の立つ炉と燃える松明が、裂いた物の間を通り過ぎた。
主は、アブラムと契約を結んで言われた。
「この土地を、あなたの子孫に与える。エジプトの川からユーフラテス川に至るまで。」
注:次の聖句を参照。
『 あなたがたに ”霊” を授け、また、あなたがたの間で奇跡を行われる方は、あなたがたが律法を行ったから、そうなさるのでしょうか。それとも、あなたがたが福音を聞いて信じたからですか。それは、「アブラハムは神を信じた。それは彼の義と認められた」と言われているとおりです。だから、信仰によって生きる人々こそ、アブラハムの子であるとわきまえなさい。聖書は、神が異邦人を信仰によって義となさることを見越して、「あなたのゆえに異邦人は祝福される」という福音をアブラハムに予告しました。それで、信仰によって生きる人々は、信仰の人アブラハムと共に祝福されています。律法の実行に頼る者はだれでも、呪われています。』(ガラテヤ3章5~10節 新共同訳)
アブラムが鳥を裂かなかったばかりに、子孫が400年間苦しむことになった。
「鳥を裂かなかった」とは、どういう意味か。RAPT有料記事40を参照。
さて、アブラムの妻サライには、子供ができなかった。
彼女には一人の奴隷がいた。エジプトの女で、名をハガルといった。
サライはアブラムに言った。
「主は私に子を授けてくださいません。どうぞハガルを側女(そばめ)にしてください。そうすれば、私は子を持つことができます。」
アブラムがサライの願いを聞き入れたので、ハガルは身ごもった。
ところがハガルは、自分が身ごもったのを知ると、サライを見下げるようになった。
サライはアブラムに言った。
「私の苦しみはあなたのせいです。ハガルをあなたに与えたのは私だというのに、彼女は私を軽んじます。主が、あなたと私の間をお裁きになるように。」
アブラムはサライに言った。
「ハガルはお前の奴隷だ。好きにすればよい。」
サライがハガルを苦しめたので、ハガルはサライのもとから逃げた。
ハガルは、シュル街道にある泉の畔まで来ると、そこで主の御使い会った。
主の御使いはハガルに言った。
「あなたはどこから来て、どこへ行くのか。」
ハガルは言った。
「女主人のサライから逃げているのです。」
主の御使いが言った。
「サライのもとに帰って従順に仕えなさい。
あなたは男の子を産む。その子をイシュマエルと名付けなさい。主があなたの苦しみを聞かれたのだ。
イシュマエルは野生のロバのような人になる。彼はすべての人に逆らい、すべての人は彼に逆らう。彼は兄弟すべてに敵対する。」
ハガルは主の御名を呼んで言った。
「あなたこそ、私を顧みられる神(エルロイ)です。」
ハガルは、サライのもとに帰り、イシュマエルを産んだ。
注:この『イシュマエル』の子孫がアラブ人であるとされる。そのため、イスラム教では、モーセ五書が啓典の一つとなっている。しかし、イスラム教において聖書は、「改竄と捏造が繰り返されたもので聖典としての価値を失っている」とみなされているため、イスラム教徒が聖書を読むことはほとんどない。
イスラム教は、西暦610年頃に ムハンマド(マホメット)によって作られた宗教である。
アブラムは不信仰に陥って、サライが子供を産むことは不可能だと思い、人間的な考えで自分の子孫を増やそうとした。その結果、イシュマエルが生まれ、その子孫からムハンマドが誕生することになってしまった。しかし、アブラムはその後、信仰を取り戻し、正しい行いをしたことによって、彼の子孫からイエス・キリストが誕生した。このように、神を信じる義人の行いが、その後の世界の運命を左右することになる(RAPT有料記事272を参照)。
ある日、主がアブラムに言われた。
「私は全能の神であるから、私に従って歩み、完全な者となりなさい。
私はあなたと契約を結ぶ。あなたの子孫は大いに増えるだろう。」
神はさらに言われた。
「これからはアブラムではなく、アブラハムと名乗りなさい。私があなたを諸国民の父とするからだ。王となる者たちがあなたの子孫から出るだろう。
あなたとの間に、またあなたの子孫との間に、私は永遠の契約を立てる。
カナンの全地を永久の所有地として与える。そして、あなたたちの神となる。
だから、あなたとあなたの子孫も、私の契約を守らなければならない。
守るべき契約はこれだ。すなわち、男子は包皮を切り取り、割礼を受けなければならない。直系の子孫はもちろん、奴隷も必ず割礼を受けなければならない。
これによって私の契約は、あなたたちの体に記されて永遠のものとなる。
割礼を受けない者は、私の契約を破るゆえ、民の間から断たれる。」
神はまた言われた。
「あなたの妻サライは、名をサラとしなさい。私は彼女を祝福し、諸国民の母とする。」
アブラハムはひれ伏した。
しかし、心の中で思った。
「100歳の私に子が生まれるだろうか。90歳のサラに子を産むことができるだろうか。」
アブラハムは神に言った。
「どうか、イシュマエルがあなたの御前に生き永らえますように。」
神は言われた。
「いや、サラが男の子を産む。その子をイサク(彼は笑う)と名付けなさい。
私は、イサクと契約を立てて、彼の子孫のために永遠の契約とする。
また イシュマエルについても、彼を祝福し、子孫を大いに増やそう。彼は12人の首長の父となるだろう。私は彼を大いなる国民とする。
しかし、私はイサクと契約を立てる。」
神はアブラハムと語り終えると、昇って行かれた。
注:次の聖句を参照
『「アブラハムの信仰が義と認められた」のです。… アブラハムは、割礼を受ける前に信仰によって義とされた証しとして、割礼の印を受けたのです。こうして彼は、割礼のないままに信じるすべての人の父となり、彼らも義と認められました。… 神はアブラハムやその子孫に世界を受け継がせることを約束されたが、その約束は、律法に基づいてではなく、信仰による義に基づいてなされたのです。… 信仰によってこそ世界を受け継ぐ者となるのです。』(ローマ4章9~16節 新共同訳)
後編に続く。