この次の火曜日、一姫の誕生日。
やってきた一姫に、私は2年ぶりにケーキを焼いて持たせた。

一姫の「夫」という人には会わないことにしている。
だって、いまはあまりにもよくわからない関係だから。


いま通っている学校を卒業するまでの生活費を一部貸してほしいと言ってきたのは昨年の終わり近く。
もちろん、学費とは別で、学費は私が出す前提だ。
色々、色々でたらめだ。
でも、もうどんなことがあっても驚かない、傷つかない、悲しくもない。
冷静に借金とはどんなものかを話して聞かせた。
どんなことを言ったところで、人にはそれぞれ、来るべきときがこなければ理解できないことがあるのだろう。
このごろ、父親の悪口みたいなことを言うようになった一姫。私は敢えていうのだ。
おとうさんのおかげだということは忘れないで。感謝を。
私は戸籍上の夫に対して正直な気持ちは恨みしかない。
だけど、一姫と二太郎にとってはなにがなんでも、取り替えることは絶対にできない父親なのだ。
できれば立派な父であったと死ぬまで思って欲しい。
たとえ、母が彼を恨んでいることを知っていたとしても、だ。


一姫がケーキを食べずに何年か前のように捨ててもいい、と本気で思っている。

もう、私はわたし。

そう思えるから、だから、今回ケーキを焼いたのだと思うから。


一姫、あなたにはたぶん伝わっていないと思うのだけれど、私は今日あなたにあえてかうれしかったのです。