周囲の人に感謝を忘れずに、などと言いつつ、社員登用されないわけはないだろうとのたまった私。
その後、自分の傲慢さを思い知ることになった。

定年まで2年を残して会社を去った元上司、ダンディ氏。
なぜか、一月に一度くらい連絡が来る。
私の方から積極的に連絡をとることはないが、メッセージが来れば返信する。

出会いは遡ること約23年。
大部分は仕事上で絡むことが少なく、ある程度の距離を保ってつきあってきた。
少しだけ関係が変わったのは、12年ほど前か、直属ではないものの私の上司になってからだ。
当時はまだ子会社で、ダンディ氏と対立していた執行役員ミッチーの「チルドレン」だった私。私の部署に異動してくる前からそのことはわかっていたはず。
だから、私は自分の立場もあまりよくなくなるだろうと予想していた。
「対立」していたと言っても、どちらかというとダンディ氏の方が一方的に嫌っている傾向だったし。

しかし、予想に反して、ダンディ氏は仕事面では私を正しく評価してくれたばかりでなく、完全に上司として私を守ってくれたのだ。
少しだけ見直しはしたものの、心のそこでは「保身もあるだろう」という気持ちは拭い去れず、ダンディ氏との距離を縮めはしなかった。
それから、私は暗黒の時期を迎え、明らかに様子がおかしかったのだろう。
どこから連絡先を手に入れたかはわからないが、絶妙の頻度でメールをしてくるようになった。
でも、その時期私はあまりに必死で、ここで誰かに頼ればもう戻れないだろうと思い、しずかーにシャッターを下ろしていた。

やがて、ダンディ氏は静かに30年以上勤めた職場を去ったのだ。
そのときも、私は自分の傲慢さを恥じたはずだった。あんなに守ってもらったのに、ダンディ氏が傷ついていることに少しも気づかなかった自分に。自分だけが大変だと思い違いをしていたことに。
なのに、今回もあまりに傲慢なことに気づかされた。

それまでのやりとりから、どうも本人が言う通り、退職からこっち、職場の他の人とは連絡をまったくとっていないようだった。
 
年末のどうでもいい話の中で職場の愚痴をこぼした私に、
実は、2年ほど前から人事にナルちゃんを社員に引き上げてもらうように交渉していた。まだ、実現していないのか?

と聞かれたのだ。

もう辞めてしまった人なのだし
そんな情報言っても仕方ないだろう

と社員登用が決まったことを伝えもしなかった私。そして、社員登用はまるで自分の力だけだったように思っていた私。
なんのことはない、ダンディ氏やQたろうくんがちゃんと根回ししてくれていたのに。

ああ、こうして記録しているうちに、後悔がものすごく大きくなってきた。