40代最後の誕生日の朝。
英会話のレッスンをしようとパソコンに向かっていると、昨夜私の実家である隣家に泊まった一姫がやってくる。
「ヤマダと初詣いくから着付けして」

数年ぶりに会うヤマダと着物と小物をアレコレしながら、ふとした隙にヤマダが耳打ちする。
「よかったですね、解決したみたいで」
ヤマダには5年ほど前にいろいろ世話をかけたのだ。
結局いまもなんとなく付き合いが続いている中学校時代の友人はヤマダだけらしい。

夕刻、初詣から帰って私の姉たちとその子供たちと夕食を共にしたあと、一姫がそっと包みを渡してきた。
「これ、しょぼいかもしれないけど、誕生日プレゼント」

一姫が帰ってから開けてみると、水中花のようなアロマ漬けの花とカードが入っていた。


今まで散々暴言吐いてごめんなさい。
今はふたりの娘に生まれてよかったと思っています。
もちろん、お母さんにも死んでほしくないし。
早くお金を稼いで旅行にでも連れて行きたいと思っているので、少なくともあと20年くらいは長生きしてください。


この幼い文章を読んだ時、胸ぐらをつかまれて「死んでくれよ!」と凄まれた日のことが胸に蘇った。
そして、それがやっと過ぎ去ったことだと感じられた。

長い、長い、本当に長い反抗期が終わった。
終わることがないのではないかと思っていた反抗期が、いまやっと終わった。