【仙台、横浜、私。(前編) 】から1ヶ月経ってしまった。次は、横浜について。
closet child横浜店 が震災で多大なる被害を受けていた。
のほほんとしたキャラクターの店長で、あまり辛そうな姿は見せないが、本当はしんどかったんじゃないかなと思う。ただでさえ都内に比べて売り上げが下がる立地の横浜店。単独経営ではなく親会社があってチェーン展開をしていたのが幸いして、数日後には別のビルで営業している洋服売場の一部に仮設CDコーナーを作って営業することができたけれど、同時に今後の店舗をどうするか、アルバイトの雇用問題、割れてしまった商品の保障などなど…問題山積。チェーン店なだけに、横浜CD店の存続すら危うかった。
チェーン展開する運営会社側からしたら、売上が厳しい地域から撤退するのは当然のこと。でもヴィジュアル系CD専門店が撤退するというのは、その土地のシーンごと撤退することに繋がる。だから絶対に存続して欲しくて、露骨なまでにクローゼットチャイルド横浜店を応援しています。
クローゼットチャイルドが店名を変える前のDISK WAVE時代から、創刊したばかりのリスクノオトを大変評価して頂き、様々なご協力を頂いていました。また様々なバンドと出会う中で、横浜育ちのバンドマンの多くが学生時代DISK WAVEに通っていたとのこと。
学生時代に触れる環境というのはすごく重要。高校生は、学校・塾・アルバイト・部活とすごく忙しいし、お金だってそんなに持っていない。例えば横浜から新宿まで、片道約1時間、往復交通費約1000円。目的がなければ行かないだろう。地元横浜で十分に楽しめる娯楽はある。流通品のみを扱っている大手CD店は何件もある。学校の友達の大多数はそういったCD店で入手できる音楽を聴いている。
このような状況でも、もし学校帰りに寄れる場所にヴィジュアル系専門店があれば、一人でふらりと立ち寄ることができる。店員さんとヴィジュアル系の話をすることができる。興味を深めてCDを買ったり、専門雑誌を読んだり、地元のライブハウスに行ってみようと思うかも。学校の友達をCDショップに連れて行って、一緒に見たりするかも。
地方から東京のCDショップやライブハウスに行くのは、より踏み込んだファン心理。すごく好きでなければ行かない。あなたは全く知らない音楽に、往復2時間と1000円の交通費、そしてチケット代2500円を出す?
学生時代に地元でヴィジュアル系に触れて好きになったからこそ、お金と時間に余裕ができる大学生・社会人になってから東京のライブハウスに通い、ツアーを追っかけて、グッズを買ってくれる。学生時代にヴィジュアル系に踏み込む環境がなかったら、その時触れた別のジャンルの音楽やファッション、スポーツなどに傾倒していくだろう。
つまり、各地域で学生を取りこむ基盤がなかったら、東京に新しい世代の客層が増えないのではないか?
東京のシーンは、お客さんもバンドマンも、地方で中学・高校時代を過ごし、東京に憧れを抱き育った人たちの集合体だと思うんだ。東京生まれ・東京育ちは少数派だ。
商売をする側は、とりあえず東京でCDを売って、東京でライブをやれば大丈夫だと思っているだろう。でもそうやってみんながみんな東京だけで活動するようになったら、疎外された地域から新たなファン、新たなバンドは生まれず、東京にも行かない。ヴィジュアル系シーン全体の過疎化につながるのではないだろうか。
横浜のレーベル、ART POP の社長には「お前は横浜のくせに、なんで横浜でイベントやらないんだ」と言われたけれど、リスクノオトを立ち上げた2000年はバンドブームのともしびが消えつつある時代で、何の後ろ盾もない私はリスクノオトを存続させていくことで精一杯。地域活性化や若手育成は、ピラミッドの上の方の人たちがやってくれよと思っていた。でもそういった動きは残念ながらほとんど無く、地方のライブハウスが潰れ、CDショップが潰れ、現在に至る。
今まではそれも仕方のないことかと思ったけれど、震災後、地元を離れて遊びに行くことに不安を抱く日々が続いて、各地域に音楽シーンがあるべきではないかと思った。地元のシーンは地元の人間が守るしかない。だから今更だけど、横浜に興味を持ってもらえるような情報発信をしている。観光+αでいい。横浜に触れてほしい。横浜には横浜独特のカラーがあるんだ。
横浜在住のCalmand Qual のTak とMiss Jelly Fish のシャカ が、ラーメン屋の話をしていたそうだ。意味合い的には、「自分が気に入って、無くしたくないと思う店があったら、そこに通い続けなきゃいけない。どんなに客が少なくても、自分はこの味が好きだということを、食べに行って気付いてもらわないと、もしかしたら店主は自分のラーメンが美味しくないのではないかと自信を無くして店をたたんでしまうかもしれない。そうならないように通い続けるべきなんだ」と。
それを聞いたクローゼットチャイルド横浜店の店長 は、「バンドも同じですよね、いくら良いと思っていても、ライブ動員が少なかったり、CDが売れなかったりしたら、バンド側は自信を無くして解散してしまう」と。
だからね、カッコイイと思ったらカッコイイと、声を大にして言って頂きたい。その言葉が積もり積もれば、クチコミとしてバンドに大きな影響を与える。もちろんメンバー本人にも、あなたはカッコイイと伝えてほしい。その一言一言がバンドの勇気や自信になる。それから、最近はCDよりもチェキなどの一点もの写真が売れるけれど、ピラミッドの上の大人たちが見ているのはCDの売上とライブ動員。まずはCDを買ってもらいたい。そしてライブに来て、グッズを買うならばタオルやリストバンドのようにライブの盛り上がりが目に見えて分かるアイテム。バンドロゴの入ったタオルが一斉に掲げられていたり、お揃いのリストバンドをつけた拳が上がっていたりする写真を見たら、こんなに熱いファンがたくさんいるバンドなんだなって思ってもらえる。ファンの行動一つ一つに、意味や影響力があるんだよ。出来ることからでいいので、自分の好きなバンドを効果的に応援してね。