私には、父親の記憶がほぼない。
それでも一応、私にもいたのであろう。
でも、私が物心ついた時にはほとんど家におらず、遊びに連れていってもらった思い出もほとんどない。
勿論、可愛がってもらった記憶も。
母と父はでき婚だったようだ。
まぁつまり、私ができたから結婚したわけだ。
私は、人の運命を変えてしまった人間。
しかも、悪い方向に。
そんな私の両親は、私が高校生の時に離婚した。
いてもいなくても一緒だった父親だった。
両親が離婚する時、あの、私と犬猿の仲の妹が、母にこう言ったそうだ。
「お姉ちゃん、大丈夫かな…?」
妹から見ると、私は父親っ子だったらしい。
自分では、全くそんなつもりはなかったんだけど。
無意識の内に、なのかな…。
いや、今となってははっきりと、「違う」と言えるけどね。
私と同じように、両親に離婚歴のあるTAIJIは、インタビューで、「(蒸発した父親のことを)好きだった」って言っていたよね。
両親の離婚、父親の蒸発、母親の再婚。
私が経験したのは、両親の離婚と父親の再婚だけだったけど、それでもじゅうぶん辛かった。
父親が好きだった、父親に可愛がられていたTAIJIは、私よりも辛かったんだろうな…。
私には、グレるほどの勇気がなかったから非行に走れなかったけど、そんな勇気があれば、いっそグレたかった。
父親に、隠し子がふたりもいると知った時の衝撃の大きさ。
私や妹の存在意義とは?
言葉では表しきれないこの気持ち。
深い深い奈落の底に突き落とされた。
両親の離婚より、隠し子がいたことの衝撃の大きさ。
自分の子どもって、無条件に愛される存在じゃないんだな、と思った時の絶望感。
家族を捨てて、別の女に走る。
捨てられたんだというこの気持ち。
父親が好きだったTAIJIは、私なんかよりよっぽど辛かったんだろうな…。
でも、TAIJIと私とで、別れの後に見えた景色は、かなり違っていたんだろう。
100人いれば、100通りの見え方があると思う。
メジャーデビューの年に結婚し、子どもも生まれて父親になったTAIJIは、父親のことを、「好きだった」と語る。
その後、離婚を経験したTAIJIは、そこから更に父親への思いを深めたのだろうか。
私は逆だ。
結婚して子どもが生まれ、余計に父親のことを許せなくなった。
自分の子どもってあんなに無条件に可愛いのに、別の女に走った父親は絶対に許せない。
たとえ父親が死の淵にたったとしても、絶対に許すことはないだろう。
父親にとっては、私達が可愛くない存在であったんだろうな。
TAIJIも、父親が蒸発した時にはそう感じたんだろうか?
TAIJIにしろ私にしろ、父親に愛されていたらそう簡単には捨てられないよね。
TAIJIのことを想う時、凄く切なくなる。
それは単に、TAIJIが居なくなって哀しいとかいう感情だけではなく、お互いに、10代の頃から苦しい思いをして生きてきたことを考えるから。
どんな気持ちで生きてきたのか、気持ちが感じ取れてしまうから。
もっと平穏な子ども時代を過ごしたかったよね…。
「あの人強気だから大丈夫だよね」
「あの人頑張っているから大丈夫だよね」
そう思わないで。
その姿の向こう側では、失ったものを埋めようと必死にもがいているもうひとりの自分がいる。
人一倍幸せになりたい気持ちも心の底にあるだろう。
Xという居場所をみつけ、メジャーデビューを果たし、結婚して子どもも生まれたTAIJIも、幸せになったはずなのにな…。