『うん、うん、それでね、』

ガチャ ただいまー

『あ、ごめんっ…! 切るね』
プツッ…


「会いたい……」

電話をすると会いたくなってしまう。でも私の好きな人は、あいつのものでした。
あの子の薬指にはめた指輪、それはもう変わらなくて、私には変えられなくて。もうこの気持ちは無くさないといけないのに、いつまでもなくならない。苦しい、虚しい。由依が結婚してるという事実はなくならないだろうか。電話をしてるその瞬間だけはその事実を忘れられていた。



由依とは高校の同級生だった。一緒にいるとすごく落ち着いて、楽しくて、あぁこれが恋なのかと。それは多分由依も同じ気持ちだったと思う。その頃はまだ同性愛は珍しく、お互い気持ちを伝えられずに、一緒にいれるだけでいいやとただただ月日だけが流れて。

卒業しても連絡は取ってたしたまにご飯も行って。あの頃の私に勇気があれば、なにか変わっていたかもしれないのに。

いつの日か由依は、大学で出会った先輩と結婚するんだ、と寂しそうに笑った。
その日から私の心は孤独だった。



ある日由依といつものように電話をしていた。

『なんか寂しいなー、今夜あの人帰ってこないんだ。理佐、うちに遊びにおいでよ』

『行く』

即答だった。すぐに由依の家に向かう準備をした。
あぁ何してるんだろう私。由依には大事にしてくれる人がいて。わかってる、でも会いたくてたまらないんだ。

ピンポーン
ガチャ

「由依…」
「理佐、早かったね!上がって?」

電話してる時と変わらない、いつものようにたわいのない話をして。
でも今日の由依は少し元気がなかった、長年好きでいたんだそんなのすぐわかる。なにかあいつとあったんだろうか。

お風呂も済ませて、もう寝る頃。
あいつと並んで寝てるんだろうなと思うとそんなベッドで由依の隣には寝れなくて、どこで寝たらいいか聞こうとすると、

「理佐…?一緒に寝てくれないかな…」
私の袖をくっと遠慮気味に引っ張る由依の頬は薄く赤く染っていて。何を意味するのかも分かっていて。

いやでもさすがにまずいだろう。私は由依のことが好きで…由依はもうあいつのもので…色んな葛藤を繰り返して、頭の中ではわかっていたのに…

気づいたら朝で、私は由依の手を握ってて。手離したくない、どうにか私のものにならないだろうか…

それから私と由依との関係は、ただの友達ではなくなった。由依には大事にしてくれる人がいるというのに。会えると決まった日は何回もこれが最後って決めているのに、由依の顔を見る度にまたすぐに会いたくなって。由依は今私の事をどう思っているのだろうか。私だけが由依との日々に嬉しくなっているのだろうか、もしもあいつがいなければ私のものだったのだろうか。

でも、私のものではない事実に寂しさを感じていた。



ピロンッ
『今日もあの人帰ってこないよ』

由依はとても残酷な人だ 由依は私の気持ちには気づいているはずだ

「ごめんね由依、さようなら…」

私は由依の連絡先を消した

もうあの頃に戻る気は無い

大好きでした



end.