理佐side



私と由依は中学2年生の時、付き合っていた。


由依の家に行ってお菓子を食べながら由依のピアノを聞けるのも私だけの特権だった。
何よりもその時間が幸せだった。


そんなある日、私が教室に入ろうとすると由依がからかわれていた。


「由依って理佐と付き合ってるんでしょ?」


「なんで女子同士で付き合ってるの?ちょっと好きなところ言ってみてよ笑」


由「私は理佐となんて付き合ってないから!ただの幼なじみ!」


そう言って由依は教室から飛び出していってしまった。
あの時の言葉が辛くてそれから由依とは壁を感じてお互いを避けて高校に進学した。


そんな今も由依とはずっと話していない。でも私は変わらずにずっと由依が大好き。
斜め前の席に座る由依を眺めているだけでも幸せだと感じてしまった。


でもそんな時に予想してもいなかった展開が起こった。


先生「今度文化祭があるから実行委員を決めたいと思う。やりたい人!」


そんなのやるわけがない。放課後は沢山遊びたいに決まっている。
みんな考えていることは同じなのか誰も手をあげなかった。


先生「だよね。だから今回はくじ引きにします!」


いろんなところから聞こえるブーイングの声。


くじ引きか…くじ運ないんだよなー…
40人くらいいるクラスの中から2人なら確率は低い。当たるわけがない。


でも私は引いたくじを見た瞬間終わったと感じた。


そして黒板を見た瞬間もっと終わったと感じた。黒板に書かれていた名前は私の名前とあと1人。


先生「じゃあ実行委員は渡邉と小林だな。なんか困ったことがあったら全然言っていいからな。」





早速放課後に実行委員の集まりがあるらしく集まったはいいけれど、気まずい雰囲気のままだ。


由「理佐…これやり直し…」


理「え?なんで?」


由依がやり直しと言って渡してきたものはさっき私が作った文化祭で使う飾り付け。


由「ここサイズ合ってない…」


理「ごめん…で、でも……これくらいよくない…?」


由「理佐のそういうところがダメなの。不器用で雑なところはあの頃と変わってないんだね笑」


理「由依の丁寧なところも変わってないよ。器用なところも。」


由「理佐が不器用で雑すぎるだけ笑」


久しぶりに私だけが見た由依の笑顔。
その日はなんとか明るい雰囲気で終われた。


理「由依、送っていこうか?」


由「うん。ありがとう。」


理「なんか久しぶりだね。由依とこうやって話して一緒に帰るの。」


由「そうだね。」


昔はよく手を繋いで帰ってたのに今は話すことで精一杯。


由「理佐あれ見て。」


理「ん?」


由依が指をさした方にいたのは手を繋いで楽しそうにしているカップルの姿だった。


私たちも昔みたいにやってみる?って言いたかったけれど、ふと思い出した。


前に愛佳から聞いた言葉。


「ゆいぽん自分のことあんまり話そうとしないから知らないけど、付き合ってる人いるでしょ。」


そうだ。由依にはきっと付き合っている人がいる。だからダメなんだ。



由依side



久しぶりに理佐と話せた。まだあの頃みたいにスムーズには話せないけれど、あの頃に戻れたみたいで嬉しかった。


今でも私は理佐のことが好きで、何回も何回もあの時言った言葉を後悔していた。


でも最近隣のクラスの葵と理佐が良い感じの雰囲気なのは知っている。
理佐の話をすれば顔を赤くする葵。そして葵の話をすると笑顔になる理佐。


そんな時にカップルを見かけたから、なんとなく理佐に見てと指をさした。


由「付き合っているっていいよね。私と理佐もあんな感じだったのかな。」


理「付き合ってる…」


由「え?」


理「あ、いや、由依も付き合ってる人いるんだよね。」


由「なんで…?」


理「この前、愛佳から聞いてさ…」


その後すぐに口を滑らせたという顔をした理佐。


理佐からそんな言葉聞きたくなかった。しかも期待していた言葉とは全く違う言葉。


理「由依…?」


理佐がうろたえたような声を出す。


そして私は気づいた。無意識に涙が頬を伝っていたことに。
私は慌てて涙を拭った。


理「由依…」


由「来ないで!」


駆け寄ってこようとした理佐を私は強い口調で突き放した。


理「で、でも…由依……泣いてる…」


理佐が心配してくれているのがわかる。
そんなふうに優しくするから昔から勘違いしちゃうんだ。ばか。理佐のばか。


理「ねぇ!由依」


由「いいから!」


私はもう一度突き放すように言った。


由「もういいから、もう一人で帰るから……私のこと送らないで早く葵のところ行きなよ…」


勢いで意味のわからないことを言ってしまった。


理「えっ、なんでそこで葵の名前が出てくるの?」


由「だって好きなんでしょ!」


理「待って!私は別に葵のこと好きとかそんなんじゃない!」


由「だって!葵のこといつも気にかけてるじゃん!」


理「だからそれは…葵って放っておけないっていうか…」


由「それが好きってことなんじゃないの!?」


理「だから違うって!人の気持ち勝手に決めつけないでよ…」


由「理佐の気持ちなんてわからないよ!」


私があれから何回理佐に話しかけようとして仲直りしようとしたことか。
ずっとずっと理佐が好きだった。


理佐に一度謝ったことがあった。
でもその時理佐は優しく微笑みながら気にしてないからと言っていた。


理「そうだよね。わからないんだ。思ってることは口にしないと。」


理「由依、私は…」


その時、走ってきた人が私にぶつかってきた。
なんとなく話の接ぎ穂を失って2人は黙り込んだ。


由「そろそろ帰ろっか…」


理「由依」


由「ごめん、今はもう聞きたくない」


由「でもまた一緒に帰れて嬉しかった。また明日。」


理「………」



理佐、由依side



私はいつになったら素直になれるのだろう…
この実行委員の活動で相手に素直になれるように頑張ろう。