図書・図書館史レポート(2022) | Every book its reader.(いずれの本にもすべて,その読者を。)

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(設題)日本または西洋のどちらかを選び、それぞれの時代(古代、中世、近世、近代以降)の図書館発展の特徴をコンパクトに要約し、かつ私見(400字程度のまとめ)を述べてください。

 

1.序論

今日、図書館は気軽に利用できる施設であるが、図書館が現在の形に至るまでには様々な歴史がある。古代、中世、近世、近世以降における図書館について説明し、最後に私見を述べる。

 

2.日本における図書館の歴史

(1)古代

古代には中国や朝鮮半島から日本に文字が伝わり、天智天皇の時代には行政文書を扱う部署として図書寮が設置された。図書寮の主な業務は、図書の管理・保存だけではなく、仏像の保管や経典の写書など多岐にわたり、独立した図書館ではなく、記録の編纂や保管の役割が強かった。

奈良時代末期から平安時代にかけて、貴族階級には個人的な文庫も登場した。平安時代中期には大陸文化の影響が薄らぎ国風文化が発達した。

奈良時代末の貴族、石上宅嗣は芸亭と称する書斎を設け、儒教の典籍を収蔵し好学の人たちに開放した。これが我が国最古の公開図書館であり、図書の閲覧だけではなく教育施設として講義や討論も行われた。また、菅原道真は紅梅殿と呼ばれる文庫を所有し、私塾としての教育的機能を兼ね備えた機関として注目された。

(2)中世

鎌倉時代以降には貴族から武士へ権力が移り武士階級の文庫や学校が登場した。印刷出版の方では、中国との交流が深まり宋版本が請来され、文書の複製技術が高められた。文化の面では武家の文化が成立し、中央の文化が地方に拡散することになり文化の庶民性が強くなった。

この時代の武家文庫を代表するものとして鎌倉中期に北条実時によって創設された金沢文庫があり、図書には金沢文庫の蔵書印が押されていた。これが所有権の主張を示した最初だと言われている。

また、現存する日本最古の学校図書館といえる足利学校もこの時代に創立されたと言われている。武人から多くの図書が寄進され、儒学関係の典籍は豊富であった。図書利用に関しては、貸出禁止、閲覧は1冊に限定などの決まりがあり、司籍が図書の管理にあたっていた。

図書の利用に関しての決まりがあることや、蔵書印が押されている点は現在の図書館に近いものがある。

(3)近世

江戸時代には仏教政策により武士教育が発展し学問所や藩校が設けられた。下層階級にも文化が広がり、国民文化、町民文化として栄えた。整版本が再度盛況を迎え一般人にも本が流通し始めた。この時代の図書館には、武士や大名の文庫、調停や公家の文庫、町人の文庫、幕府直轄学校や藩校の文庫、神社や寺院文庫などがある。

徳川家光は紅葉山文庫という新しい書物蔵を設け書物奉行が蔵書管理にあたった。将軍のための図書館ではあったが、書物奉行の許可を得る形で幕府の機関や大名からの貸出にも応じていた。

昌平坂学問所は幕府の直轄学校となり、その文庫は中央図書館的な機能を果たしていた。

庶民は貸本屋で読書の機会を得ていたが、江戸末期には羽田八幡宮文庫と呼ばれる神社文庫が設立され庶民も利用することができた。本の貸し出しや学者の講演会なども開催されており現在の公共図書館にかなり近い形であった。

(4)近代以降

 近代に入ると、西洋から図書館を導入してその定着を国策として行うようになり書籍館が開設された。国立中央図書館の礎となる最初の図書館である。明治13年には東京図書館と称され初めて図書館と呼ばれた。明治30年帝国図書館に改称、明治39年に新館が完成、蔵書24万冊の近代図書館として誕生した。

戦後の図書館はGHQの指導で再出発し、「図書館法」などが制定された。館外貸し出しの促進やレファレンスサービスの導入などが実施されてはいたが、図書館の数も蔵書数の数も少なかった。そこで一部の図書館員たちが日本図書館協会中小公共図書館運営基準委員会を立ち上げ、運営基準として『中小都市における公共図書館の運営』(通称『中小レポート』)を提起した。その後日本図書館協会は「中小レポート」の理念をベースとした実践編として『市民の図書館』を刊行した。これらを基にした活動により、図書館は気軽に利用でき、本の貸し出しも可能な現代の図書館へと生まれ変わったのである。

 

3.結論

 これまで述べてきたように図書館は近代に入るまでは、貴族や武士など一部の限られた人間が使用できる施設であった。しかし多くの人の努力により、今では国民が気軽に利用できる施設となっている。図書館の歴史を学ぶことは今後の図書館について考えるにあたり非常に有益であった。

現在、情報媒体は紙から電子ベースへと移行しつつある。電子情報は保存方法等を考えても非常に有益なものであるが、簡単に発信、保存できるがゆえに誤った情報も多いといえる。あふれる情報の中から、正しい情報、必要な情報を見極め管理し、後世に伝えていくことが今後の図書館としての大きな役割である。そしてこれまでの図書館がそうであったように、その情報を伝えていく次世代の人材を育てることも図書館に期待されている。そのためには他の教育機関などとも連携し、幼い頃から本や図書館に慣れ親しむことができる環境作りが非常に大切であると考える。

 

参考資料

千 錫烈 編著『図書・図書館史』 学文社 2014.2

新藤 透『図書館の日本史』 勉誠出版 2019.1

 

(講評)

設題のポイントをしっかり押さえ、日本の図書館史を大変分かりやすくまとめられています。特に初期の図書館が限られた特権階級のためのものから、現代の誰でも自由に使えるものに変化してきたことを理解している内容であり秀逸でした。私見も納得できる内容でした。
引き続き頑張ってください。

 

初めて提出したレポートでしたが、褒めてもらえて俄然やる気が出ました。

教科書も読みやすくレポートも書きやすかったですニコ