りさぽん





『由依、遅いな…』


携帯のホーム画面で"16:32"と表示されている現在。


なんど会話履歴を見返しても約束の時間は"16:20"。。。


心配になり送ったメッセージの横には"16:25"の時間を示す文字だけ。


『探しに行くか、』


一度出た学校にもう一度足を進めた。




「なんでお前が渡邉先輩と付き合ってんの?」「お前じゃ釣り合ってねえんだよ」「さっさと別れろよ」

どこかで聞いたことのある声が屋上に繋がる扉の隙間から漏れ聞こえてきた。


『私の名前が聞こえたけど…』

ふぅ、と一息ついて重たい扉を開けた。


由依「や…いやです…」

微かに聞こえる大好きな人の怯えるような大嫌いな声。


『ねぇ、なにしてんの』

""渡邉先輩の親衛隊""だといつも周りを彷徨くロクに名前も知らない3人組が私の彼女である由依を囲んでいた。


""わ、渡邉先輩?!""


由依「…!りさぁっ…!ぐすっ」

私を見て安心したのか泣き出す由依。


『由依大丈夫?ケガはない?』

由依「うわぁぁーん、りさぁ~、怖かった、ぐすっ」


泣きながら由依は私に抱きついてきた。

『ん~、よしよし、もう大丈夫だよ』

由依「ぐすっ、ぐすっ、」


由依の頭を撫でながら相手に向き直った。

『お前らさぁ由依になにしてたの』

「た、ただ仲良く、し、してただけですよ、ね、ねぇ」
「そ、そうです、そうです、」

白々しい…うっとうしいな…


『それならどうして由依が泣いてるの』

「いや、、えっと……」


『ちっ!お前らが別れろとか言ってたの聞こえてんだよ…!』

思わず体に力が入り、由依の身体がビクッと反応した。


『あっ…由依ごめんね…』

由依「…ううん、りさっ、ぐすっ、ありがと」


""気に入らない…""


風の音に邪魔されながらも僅かに私の耳に届いた言葉。


『あぁ?なに?』

自分でも驚くほどの低い声。

どうやら私は由依のこととなると感情を制御するのが苦手らしい。


「そ、そんな奴のどこがいいんですか!」

開き直ったのかなんなのか、ただただ由依の悪口を言い始めた。


「ドジだし…」 『うん』


「のろまだし…」 『うん』


「1人じゃなにもできないし…」 『うん』


「たいしてかわいくないし!」 『うん』


「それに、それに…」 

『それに??それとももうおしまい?』


そう言うと下を向いて黙り込んでしまった。


『はぁ…あのね、私は由依のことが大好きなの。君たちみたいに勝手に私の近くに寄ってくるんじゃない。私が側にいて欲しい。側にいたい。そう思ったから一緒にいるの。』


「……」


『君たちには分からないかもしれないけれど、私は由依の"ドジ"で"のろま"で"1人ではなにもできない"ような君たちにはダメに映るような所でも由依っていう、大好きな人っていうたったそれだけのことでとそれは大好きな所にかわるの。』


「…はい、、」


『怒りが収まったわけではないけど、これ以上はなに言っても仕方ないから1つだけ約束して。』


「は、はい!」


『2度と由依を泣かせないでね。次はほんとに許さないから。』


「は、はい!!す、すいませんでした!」


そう言うと3人は勢いよく屋上から出ていった。


由依「ぐすっ、りさ、ありがと、ぐすっ」

『ほ~ら!いつまでも泣いてないの。由依の笑ってる顔が見たいよ?』

由依「えへへへ//」


泣いたからなのか夕陽に照らされてなのか由依の顔はほんのり赤っぽくてものすごくかわいく私の目に映った。


『っっ//かわいすぎ// さっ!帰ろっか!』


由依「うん!」

手を出すとギュッと勢いよく握り返してくれた。





由依「ねぇ…どうしてりさは私が好きなの…?」


帰り道、突然立ち止まったかと思うとなんともかわいらしい質問をしてきた。


『どうしてかって?う~ん、由依が由依だったから…かな!』


由依「…?どういうこと?」

わかりやすくハテナを顔に浮かべる由依。


『それなら逆に由依は私が私じゃなくても好きになってた?』

由依「わ、わかんないけど…なってないと思う…」


『それはどうして?』

由依「だってりさにしかない良いところがいっぱいあるから…!!」


『そうでしょ?私もおんなじだよ』


由依「で、でも私良いところないから…」


『ゆ~い!そんなこと言わないの!そこまで言うならいまから私の家行こっか?由依の良いところ私がいっぱい教えてあげる。』


私は君がいないとだめなんだよ。
私の幸せはあなたが隣にいること。

理佐「由依、私はねーー」
""君ありて幸福""



今日はなんだかすっごい書きたいし書ける日だったので2つも書いちゃいました!!