理佐side

 

由依は最近冷たい。元々、私も由依も甘えるようなキャラではなかったが、付き合ってからはもうずっと私から甘えている。由依もそれはまんざらではないようで、うれしそうな顔をしていた。少し前までは。私が仕事で最近忙しくなってきて、家のことはほぼ任せっきりだし、それに加えて、少しでもかまってほしいと思ってしまう。

優しい由依は、面倒だと思いながらもかまってくれていた。なのに最近そっけない返事も増えてきた。

 

理佐  「今日いつもより少し遅くなるから先寝ててもいいよ」

 

由依  「どれくらい?」

 

理佐  「分からないけど終わったらすぐ帰るよ」

 

由依  「分かった」

 

さっきまでそっけない感じだったのに、遅くなると言えば寂しそうな顔で早く帰ってきてという顔をしている。その顔を見て今日はいつもより気合が入った。

 

結局仕事はいつもより倍あって友香と二人でずっと残業をしていた。今日の分が終わり、友香とエレベーターを乗って頭の中では今日由依を襲おうかいやでも最近そっけないしなとか頭の中で葛藤をしていたが時間を見ると22時30分。もう由依は寝ているだろう。でも、帰ったら確実に寝ているところを襲うであろう。

 

理佐  「ねえ友香この後飲みに行かない?話したいこともあるし」

 

菅井  「んーまぁいいけど、、疲れてるから飲みすぎないようにしよ」

 

理佐  「私がお酒強いの知ってるくせに」

 

由依に連絡は・・・いっか。どうせ少ししたら帰るし。友香にはさっきの悩みを聞いてもらうだけだし。

 

 

落ち着いたBARで由依の話をしながら飲んでいると、もう会いたくないと思っていた人に話しかけられた。久しぶりに顔を見たら、もうこの人に感情はないと思っていたのに、走馬灯のように昔のことを思い出し、胸が苦しくなった。それを悟られないように、一度は愛して、一生をささげようと思った人を冷たくあしらった。

友香はそれを見てなのか、はたまた私の顔を見てなのか、解決して来いといった。

だが、追っても何を言えばいいのかわからない。

 

友香  「理佐のためじゃないの勘違いしないで由依ちゃんのため」

 

由依、、そうだ由依には素直に思ったことを言うじゃないか。私は学んだんだ。言葉にしないとすれ違うって。解決してこよう。ここできっぱり終わらせよう。

友香には申し訳ないが、先に帰ってと伝えて元カノのねるの後を追った。

 

理佐  「はぁはぁはぁ・・・ねる!」

 

ねる  「痛い離して!」

 

理佐  「あっごめん。((ぱっ」

 

ねる  「なんなの!ほんとに。折角、人が忘れかけてたところに急に現れるし、前より綺麗になってるし、私は少し前まで苦しんでたのに!」

 

理佐  「え?なんでねるが苦しむの?ねるが私を振ったんじゃん。私はずっと好きだったし、ずっと一緒にいるつもりだった。」

 

ねる  「それは・・・もういいよ。ごめん話しかけて。もう見かけても知らないふりするから」

 

そういってねるはまた私の前から消えようとする。別れた時もそうだった。いきなり別れようと言われ、私もああ私に飽きたんだなと思い、分かったと一言言ってねるはすぐに私の目の前からいなくなった。辛かった。すごく好きでたまらなくてでも、中々口にすることはできなくてでも、ねるはわかってくれていると思い、うまくやってたつもりでいた。由依に出会ってから言葉にする大切さを知った。このままでは同じことでの繰り返しだと思いもう一度追いかける。

 

理佐  「ねるっ!わかんないよ。言ってくれないと分からない。私はねるがずっとすきだったしねるのためならなんでもできた。でも、私あんまり言葉にするの下手だし、プライド高いし、自分に非があるんだろうと思っててもどこかでねるをずっと恨んでた。愛してた分裏切られたと思ってたから」

 

ねるはこちら振り向かず、泣きながら話した。

 

ねる  「そうやってあの時も言葉にしてくれたらよかった。あの時引き留めてくれたらよかった。理佐、私も多分理佐が思っている以上に理佐のこと愛してたよ」

 

 

 

 

 

 

 

ガヤガヤ

もう何杯目だろうか。あの後話して、自分の愚かさに呆れて、ねるを傷つけてしまったこと、他にもいろんな後悔がぶわっとでてきてふらっと寄った居酒屋で一人で飲んでいる。

ねるは、企業の社長の娘であり、末っ子だった。だから上に何人も兄弟がいたため、政略結婚などというものはなかった。悪く言うとほったらかされていた。その分ねるは自由な子だったし寂しがり屋だった。だがある日両親から婚約者がいると言われ、結婚が勝手に進められていたという。それを知ったねるは、ものすごく否定をしたが、今まで親孝行というものをしなかったため思い悩んだ。普段、愛情表現をしない私にも不安を抱いていたため、私のことをためしたのだという。

だが、あの時理由さえも聞かない私に、ああこの人も私に愛情をくれる人ではなかった。私は誰からも必要とされていないと思ったらしい。それを聞き私は泣き崩れた。

ひたすら謝り続けた。

 

ねる  「理佐もう大丈夫だから。理佐の気持ちが知れただけ、十分救われたよ。私はちゃんと愛されてたんだなって思うよ。ありがとう。」

 

泣きたいのはねるの方なのに泣きじゃくる私に向かって笑いながらそう言う。

 

ねる  「ごめんね。試すようなことをして。もっと言葉にすればよかったね私も。でもね、やっぱり引き留めてほしかったな」

 

ねるは強いと思った。ずっと声が震えていて目には涙がたまっている。

それなのに私は声を出せないくらいに泣いて、ねるはまた改めて落ち着いて話そうと言い、電話番号だけ渡され、「お嬢様」と迎えが来て、どこかへ行った。