「あー、暑い。なんとかなんないかなあ、この天気」
「いらっしゃい、百合ちゃん」
べたついた空気を脱ぎ捨てるように肩を揺らし、俺の左隣のイスを引いた。
空いている席は、キリマンジャロの中年の隣と俺の隣。
まあ、当然の選択だな。
「ママ、生ちょうだい」
茶色がかった髪をくるくるとまとめて留めている。
どうやったら、この巻貝のような頭になるのか、いつもながら不思議に思う。
たまに出会う、巻貝が今日はすぐ隣にいる。
銀色の長いはさみのようなもの一つで出来ているな。
「なに?」
急に、巻貝が人の顔に変わった。
しまった、つい見入ってしまった。
俺としたことが。未知との遭遇に弱い。
「すみません」
慌ててコップを手にとり、口に運んだ。
「入ってないよ」
見ると、確かに氷だけだった。
しまった、中年の観察に夢中になりすぎた。
どうも、今日の俺は変だ。