「正直に話せば許してやる」

許すの声がかすんで聞こえる。


ネクタイを締め上げら息が出来ないような錯覚。


ボキボキと鳴らしていた代表の止った指の動きの中に俺の命の炎が燃える。

相葉先輩の声も聞こえない。


なに固まっちゃってるんですか!

元をただせば先輩が俺を引きづりこんだんじゃないですかぁぁぁぁ。

胸倉をつかみたいのは代表じゃなくて俺の方です。


「つくし様、また新しいバイトを始めたみたいですね」

必死で笑おうとする頬はケロイド状に引きつってる。


「俺が知ったら店をつぶすってどんなバイトだ?」

代表・・・

何処から聞いちゃったんですか?

ケチャプでハートとか・・・

確認するのが怖い。


貧血おこして意識を失った方が楽だ。


「飲食店・・・関・・・係・・・ウェートレスというか、メイドというか・・・」

自分の声も聞こえなくなりそうな緊張感。


「連れて行け」

やっぱ、そうですよね・・・。


今の時間なら昼時よりは空いてるかもしれない。

男性客が一人もいなければ・・・

儚い希望。


リムジンが横付けされるメイド喫茶。

それでだけで何事かと道行く人が足を止める。

ドアが開いて登場するのはそれ以上に視線を集める代表だ。


道明寺HD代表 道明寺司。

お気に入りはメイド喫!

週刊誌一面の題名まで浮かんできた。

ここでこれ以上の注目度は上げたくない。


店で暴れないでくださいと祈る。


「ガチャン」

ドアの開く音。


「いらっしゃいませ♪ご主人様」

つくし様の声が紛れてないことに安心して小さく息を漏らす。


「俺が、いつお前らのご主人様になった」

その場を一瞬で凍らせる冷気が一気に店の中に吹き込まれる。


「代表、この店はそれが挨拶なんです」

相葉先輩の遠慮がちな声には興味ない態度でずかずかと店の中に代表が足をすすめた。


辺りを見渡す視線。

きっとつくし様を探してるはず。


「あれ~司来てくれたんだ」

はしゃいだ声が右サイドから突然聞こえてきた。


「し・・・げる・・・」

一度飲み込みかけた声を絞り出す様な代表の声。


「なんで、お前がここにいるんだ。牧野がいるんじゃねェのか?」

「あら、ここ私の経営なの、ちょっとつくしを借りてるけど文句ないわよね」

「勝手に俺のを使うんじゃねェよ」

「つくしはものじゃないでしょ」

「独占しすぎるとつくしに嫌われちゃうぞ」

代表の鼻先数センチのところまで迫る滋さまの顔。


その力に押されるように代表が一歩足を引いた。

俺の足先を踏む手前5センチ。


「千葉」

「ハイ!」

予想外に名前を呼ばれたことに動揺を隠せない。

声が裏返りそうになった。


「なんで、滋の店だって黙ってんだ」

黙っていたって、代表聞かなかったじゃないですか!!!!

言いたいことは飲み込んですいませんと謝る情けなさ。



「牧野を出せ」

気を取り直したように代表が叫んだ。