ヒミズ | リリィのシネマBOOK

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ぐうたら主婦リリィが、気ままに綴る、映画レビュー
劇場観賞は月平均5・6本、洋画贔屓かな


劇場鑑賞しました
 
ヒミズ
 

 
 
 
 
制作国 日本 (2011年)
 
原作 古谷実
 
監督/脚本 園子温
 
キャスト
染谷将太 (住田祐一)
二階堂ふみ (茶沢景子)
渡辺哲 (夜野正造)
諏訪太朗 (まーくん)
川屋せっちん (藤本健吉)
吹越満 (田村圭太)
神楽坂恵 (田村圭子)
光石研 (住田の父)
渡辺真起子 (住田の母)
モト冬樹 (てつ)
黒沢あすか (茶沢の母)
堀部圭亮 (茶沢の父)
でんでん (金子)
村上淳 (谷村)
窪塚洋介 (テル彦)
吉高由里子 (ミキ)
西島隆弘 (YOU)
鈴木杏 (ウエイトレス)
新井浩文
 
 
 
 
 
 
 
解説
「冷たい熱帯魚」「愛のむきだし」の園子温監督が古谷実の同名コミックスを、舞台背景を東日本大震災後に設定して映画化した衝撃と感動の思春期ドラマ
愛のない両親によって、どん底に突き落とされ自らの未来に絶望した15歳の少年の魂の彷徨を、同じように孤独な少女やホームレスの大人たちとの交流を通して描き出していく
主演は、本作の演技でみごとヴェネチア国際映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)に輝いた染谷将太と二階堂ふみ
 
あらすじ
15歳の孤独な少年、住田祐一の夢は、誰にも迷惑をかけずに生きる平凡な大人になること
一方、同級生の景子の夢は、自分が愛する人と支え合いながら人生を歩んでいくことだった
住田に景子は好意を抱き、住田の実家である貸しボート屋を手伝うなど積極的にアプローチする
それを疎ましく思いながらも、少しずつ心を解きほぐしていく住田
ところが、借金をつくって蒸発していた父親が戻ってきたことで、住田の運命は大きく狂い始める
 

 
 
 
リリィの評価  ★★★★☆
 
 
感想
 
原作漫画全4巻既読、園子温監督作品は初体験でした
斬新かつ残忍な世界観をハイテンションで描く監督らしいとインプットされていたので、どのようにこの救いようのない若者の絶望を映像化するのか
更にヴェネチア国際映画祭の新人俳優賞に主演2人が輝き、注目も期待もいやが上にも高まりました
 
鑑賞後、とある疑問のため、監督のインタビュー記事をいくつか探して目を通してみました
原作をなぞらえていると言っても、映画は紙面と表現方法が異なって当然だし、別物だと考えています
しかしそれでも、何故漫画とラストをまったく真逆に変えたのか?と言う一点が解せなかったからです
露骨なネタバレは避けますが、ご鑑賞された方ならピンときていただけるでしょうか
いみじくも「ヒミズ」のタイトルは原作の結末こそ相応しく、映画の結末には相応しくありません
“ヒミズ”とはもぐらの一種で、一生を暗がりに生きることから“日見ず”の意味でつけられた名称だからです
  
冒頭、3.11震災の惨たらしい爪痕が映し出されましたが、インタビューによると撮影は不謹慎かなと思う監督の懸念を吹き飛ばして、地元の人々に記録に残ると歓迎されたそうです
確かにいずれ何事もなかったように片づけられる被害がまだ生々しい映像は、どんな言葉より雄弁に真実を語りかけてきます
そして、監督は震災を経験した後、一度白紙に戻して、脚本を大幅に書き直していたそうです
もしかしたら原作により忠実な実写版「ヒミズ」が制作されていたかもしれませんが、監督は趣旨を変えざるを得なくなったと答えていました
希望に負けたと・・・
だから園子温版「ヒミズ」は、日本を背負って立つ若者の未来を、絶望の闇に閉ざしたままに終わらせず、“わずかでも希望はある、無様でも這ってでも生きろ!”と言う不屈のメッセージを込め、再生の物語として世に送り出したのだと納得しました
 
  
酷薄な家庭環境でただただ願ってきた“平凡”を自ら逸脱することを仕出かしてしまい、絶望の自己崩壊を彷徨する15歳の主人公・住田を、染谷将太くん
屈折した両親から愛情に恵まれず、クラスメート住田の存在にシンパシーを抱く、自称ストーカー茶沢を、二階堂ふみちゃん
この2人の熱演は、多感で複雑な思春期の表情の動き、瞬きのひとつからも目が離せず、鮮烈な悲鳴のように胸を引っ掻きました
国際的に大きな賞を与えられましたが、その価値が十分にあって、とてもいい見応えを感じました
脇にも名立たる俳優さんが出演していて、でんでんさんはヤクザを演じさせたら天下一品だし
狡猾なスリ常習犯に窪塚洋介さん、勿体ないほどチョイ役に吉高由里子さんが起用されていました
演技指導には厳しいと定評のある園子温監督の下、さすが誰も下手なものを見せませんね
 
個人的に途中ん?と反感を覚える解釈も間々ありましたが、住田と茶沢の遣り取りは全部好きです
どこも切り取って繰り返し観たいけど
たどたどしいキス
「(未来を)想像して見て、すごく幸福だと思わない?」「私たち、こんなに愛し合ってるんだからね」と茶沢に言われて、見えないように顔を背けた住田が、「うん、幸福だ」と涙を流した静かな微笑
きっと、忘れられないでしょう
 
   


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