D君の家を再び訪れた。

「ヒカリいるよね?」

「必ず聞くよねwいるよ、白いモヤでりりの中に入ってるけど。」

D君は笑って言った。

「でも見る限りいっつも一緒にいるね。本当にどこにも行ってないんだと思う。彼なりに、絶対守るとか、今後りりをプロデュースするって気持ちでいなきゃこんな風にいられないよ。」

「どういうこと?」

「普通さ、みんな『死んだら終わり』って思うんだよ。だけど、死んだら今度こういう世界があるんだ、じゃあ俺はこうしようってヒカリさんが気持ちを切り替えて、死んでるけど『生き甲斐』を見つけてるんだと思う。でなきゃこんなにべったり付いてない。」


死んでも、肉体がないだけで、彼は未だに目標を持って精一杯自分にできることをしているようだった。

「変な話だけどさ、彼の遺品をこれから片付けなきゃいけないのね。彼がいるってことは、やっぱり大事にしてたコレクションとかは取っておいて欲しいものなの?」

私は尋ねた。

「そりゃそうだろうね!生前なんて言ったか知らないけど、やっぱり大事にしてたものが捨てられたりするのは本人も辛いだろうよ。どれを取っておいて欲しいか、ヒカリさんに聞いてみてごらん。」

D君は答えた。


ヒカリの部屋に入った時、ヒカリにどれを取っておいて欲しいかを聞いてみた。

何か言ってるのかもしれなかったが、やはり私にはそこまで汲み取れなかった。

それでも、彼が大事にしていたプラモデル類は私がそのまま引き取ることにした。
翌日に一人旅が控えていた時の夜のこと。

真夜中にヒカリに起こされた。(なぜか「起こされた」という感覚があった)


まだ朝まではだいぶ時間もあった為、再び寝ようとしたのだが、どうにもこうにも体中が痛い。

まるで軽いスタンガンを全身に当てられているようだった。

その痛みは足先から顔まで覆っていた。


『もしかして明日何か危険があるのではないか?』
と、私はとても不安になった。


というのも、前日高速道路を車で走っていると不思議な出来事があったのだ。

何百回も通っている高速道路なのだが、アクセルを踏んでも踏んでもスピードが上がらなくなってしまったのである。

それどころか、踏み込んでいるのにスピードが落ちるという始末。

坂道等では全くない。


ヒカリなりに何かの危険を知らせてくれてるのか思い、そのまま落ちたスピードで家まで帰った。


そのこともあり、もしかしたら車関係で何かあるのではないかと心配になったのだ。

特に翌日は車で3時間かけて向かう一人旅立った。

「止めた方がいいの?」

問いかけても、こちらが理解できる応答はなかった。




結局、一人旅では何事も起こらなかった。

時たま、彼が行きたい場所をインスピレーションのように私に送ってきたり、私がそれに気付かないでいると、激しい耳鳴り(どうやらこれは彼が叫ぶようなシチュエーションが多い)がしたりして、体は一つだったが、彼と行く二人旅の感覚で行程を終えた。


ではあの電気によるシビレは…?


薄々自分でも勘付きながら、D君に相談してみた。


「危険を知らせるのでなければ…  多分遠足行く前日の子供みたいに興奮してたんだろうね。」


やっぱり。

「旅行行くのって楽しいもんなの?」

「そりゃ楽しいだろうさ。それもりりと一緒に行くんだから。」


そう考えると、一人旅も全然寂しいものとは思わなくなった。
あまりに若くして亡くなった恋人の死に納得できず、D君に聞いてみたことがあった。

「寿命って決まってるの?」

「うん。寿命は産まれた時から決まってる。だから、ヒカリさんも、もし病気でなくても事故でとか…仕方なかったと思う。」

「それはもう変えられないの?」

「うん、運命だからね。ヒカリさんも運命を変えようとしてがんばって病魔と戦ったと思うんだ。だから実際宣告されてた余命より長く生きたんだと思う。そうやって多少は伸びたり縮んだりってあるかもしれないけど、やっぱり寿命は変えられないんだと思う。」

そうだとしたら、まだ事故のように突然でなく、ちゃんと別れの時間を持てて、彼を看取れたことというのが、とても幸せなことのように思えた。

そしてそれまで「どうして」「なんで」「私がしっかりしてれば」など、全く整理が付かなかった自分の気持ちに、「仕方なかったんだ」と、なんとなく決着がつけられた。