セッションも終盤を迎えたとき、ふと気になったことが口をついた。
陰陽師だった時代、私は統合失調症の娘の病をなんとか治そうと、書物を読みあさったり、星空を観察したり必死だった。
なんで星空を観察していたかっていうと、陰陽道って天文学なのだ。
もちろんそれだけじゃないけど、当時は天で起こることが地上でも起こる、天と地は連動すると考えられていたので(というかそのとおりなんだけど)星空の動きをかかさず読んでいた。
ある日、東の夜空を見上げてものすごいおののいている自分が見えた。
驚愕している様子で、声もでない、といった感じだ。
このシーンが見えたとき、あれはきっと夜空に超新星爆発を見たのだと思った。
超新星爆発って何か?ネットで検索すると
「重い星が一生の最期に起こす宇宙最大の爆発現象である」
とある。
それはO先生のクリニックを辞める3ヶ月くらい前のこと。
(そのときはまさか3ヶ月後にお世話になったO先生の元を去るとは思ってなかった)
ある日私は一冊の古本を手に入れた。
別の古本を買ったときに、その本にしおりがはさまっていて、そのしおりに新刊の案内として「宇宙への招待」という本が紹介されていた。
新刊の案内と言っても手に入れた本自体が古いので、この「宇宙への招待」も絶版になっていた。
が、どうもこの「宇宙への招待」は読んだ方がいい気がして私はメルカリで探して購入した。
本が届き、パラパラとめくっていると、「客星」という言葉が目についた。
「客星」とは英語ではゲストスターというらしい。
まさに、夜空に突然現れるお客さんの星のことで、超新星爆発やハレー彗星などをそう呼ぶということを知った。
そのときは、ふーんと思った。だけど何かが引っかかったし、この後から本を読んでいると立て続けに超新星爆発という言葉を目にした。
今までまったくなじみのない言葉だったし、日常生活で出てくる言葉でもないのに。
夜空を見上げてひどくおそれおののいている陰陽師の自分は、ありえないものをみてパニック状態になっていたのだ。きっとあれは超新星爆発だったのではないか?
それかハレー彗星とか通常の星の動きとは違う何かを見て、自分が何か星を読み間違えたのだ、なにかとんでもない過ちをおかしたのではと恐ろしくなって、治療も進まず、それを娘の両親から責め立てられていてもともと追い詰められていた私は逃げ出したのだ。
私はあのとき、何を見たのだろう、とずっと思っていた。
星空を見ておののいている所は、O先生のクリニックを辞めることになって、陰陽師だったときのいろんなシーンが浮かんできたときに初めて見えた。
でもそのときは、他にも見えたいろんなシーンの一部に過ぎなかった。
それが、越智先生のセッションの予約が取れた頃からか、毎晩その場面が浮かぶようになった。
そのたびに、
一体何を見たのだろう、
でもきっと死ぬまで分かんないな…
この人生が終わってあの世へ帰ったらあの夜空の正体を知りたいな…
とぼんやり思っていた。
毎晩その場面が浮かぶと言っても、そんなにセンセーショナルな感じではなく、夕ご飯の支度をしているとき、冷蔵庫から野菜や食材を出し入れしようと振り返ったときに窓が目に入り、するとふっと脳裏にその場面が繰り返し見えるのだった。
謎がとけるとも思わず、私はそのことを越智先生に話した。
すると、越智先生が
UFOじゃない?といたずらっぽく笑ったのだ。
UFO…?と思わず反復した。
越智先生が続けていった。
そう、UFOそのものずばり見たの、それでとにかくもう驚いちゃったのね!と。
えー…あれ、UFOだったのか…
えー…
…えー…
…
ええぇー、それは分かんないよ、UFOって…
UFOと聞いても私はピンと来なかったけど、後になってからじわじわとしみるようにこのときのことをかみしめた。
この出来事は今回の私の人生というか行動に大きく影響していたことが分かったから。