6月10日月曜19時半より、トークイベントがあります。

ゲストスピーカーはウイメンズヘルスとELLEグルメの編集長である影山桐子さん、

司会は博報堂ケトルのコピーライター皆川壮一郎さん。

気軽に真摯にカジュアルに新しい家族の形について語り合います。

お時間あれば、ぜひご参加ください。

 

 

 

「拡張家族」という言葉を聞いたことはありますか?

それは、血縁や法制度とは別のつながりで生活を共にし、お互いを家族と(もしくは家族のように)認識している人々のこと。父がいて母がいて子供がいて、という集団だけが「家族」ではないのです。

友人にも、離婚した後でも元夫の母親と暮らし、子育てや家事を頼んでいる人や、大きなマンションで友人と共同生活をして、子育てやペットの面倒、家事などを共有している人がいます。それらもすべて拡張家族と呼べます。

 3月に刊行した『私、産まなくていいですか』という小説集には、『独身夫婦』『拡張家族』『海外受精』という3本の中編が収められているのですが、ダントツで反応がいいのは『拡張家族』でした。こんな生き方もあると思うだけで安心できた、なんて声を多くいただきました。独身で未婚の人は「自由で孤独な一人」か「我慢して妥協して結婚」かの選択で悩まなくてもいいと知って、気が楽になったのかもしれません。もちろん、すべての結婚に「我慢」と「妥協」が必要なわけではないですが。

未婚の独身のみならず、既婚で子供がいる人に「将来、こういう暮らしがしたい」といわれたのには、書いた私も驚きました。

昔より生活の単位が格段に小さくなっている昨今、家族という概念を広げてもいいのではないかと思います。

十年前、シリーズ第一弾の『産む、産まない、産めない』を出した時、「タイトルで手に取ったのに、産めない人ばかりで産まない人が出てこない」といった批判を受けました。私もまだ「女性はみんな産みたいもの」というあいまいな先入観で物語を作っていたんですね。必ず「産まない女性」の物語を書いて、リベンジしようと決めてました。今回、やっと実現できたというわけです。

『独身夫婦』は、子供は作らないという約束で結婚したはずなのに、男性が四十歳になって気持ちが揺らぎ、二人はすっかりぎくしゃくしてしまい、という物語。産みたいことの理由は聞かれないのに、産まない選択にはぜ理由(=いいわけ)が必要なのだろうかという疑問を書きました。『海外受精』は、どうしても自分たちの遺伝子を持った子供が欲しいと最新医療を追い求め、振り回される夫婦の話です。最新の医療技術をトピックに使ってあるので、一見 SFのようですが、世界ではもう実例があるそうです。

「産む産まない」シリーズを書くことで、家族の形について考えるようになりました。やっぱり「暮らし」が基本にあると思います。家という箱の中で生活の細部を共有し合い、お互い迷惑をかけ合って、社会に対して責任を持ち合うのが家族なのではないでしょうか。

拡張家族は暮らしを共有しあいますが、書類も届出も社会的保障も何もなく、気持ちでつながっている関係です。気持ちだけでつながることができるならば、それは人間関係の理想かもしれない。しかし、気持ちの余裕がなくなったり、金銭面でこじれたりした時、果たして家族でいられるのだろうか。

次は拡張家族の崩壊と再生の物語を書いてみたいと思ってます。