昨日、ジャパンウィメンズオープン@有明テニスの森、行ってきました。
伊達公子さんの最後の試合。
セルビアのクルニッチ選手を相手に、0−6、0−6の完敗でした。
「手も足も出ない」という比喩表現がありますが、
本当に古傷が痛み出した肩も二度メスを入れたという膝も限界だったのだろうなあと思います。
試合に出られるような状態ではなかったのかもしれません、46歳の肉体は。
なんでも、1ゲームも取れなかったのは、長い現役生活で初めてのことらしい。
この場を体感できて良かったです。
ゲームが進むにつれて、今までの心が震えたいくつもの試合が思い浮かんできました。
ちょっとだけですが、引退というゴールに向かう物語に触れられた、というか。
ボールを打つ音が一つずつ記憶に刻まれていきました。
あと2ポイントで負けという局面での伊達さんのサーブで5時の時報が鳴って、
あのチャイムの音もずっと忘れられないなあ。
最後は映画のエンドロールを見ているような気持ちになりました。
同じ有明で、9年前、
現役復帰のきっかけとなったシュテフィ・グラフとのエギジビジョン・マッチも見ています。
あの時は室内のコートでした。
まあ、エキジビジョンだし、グラフは本当に「顔見せ」にやってきたという感じでした。
ラケットバックも持たずにコートに現れて、その片手間感に驚きました。
それまでテニスから離れていた伊達さんはグラフ相手にみっともない試合はできないと、
かなり追い込んだ練習をして臨んだと関係者に聞きました。
その結果、伊達さんが勝ったわけですが、
あの日の試合より、昨日の0−6、0−6の試合の方が見応えがありました。
クルニッチはやりにくなっただろうなあ。
彼女の試合後のインタビューも良かったです。
「私が勝ってしまい、ごめんなさい。でも、私もプロだから真剣にやらざるを得なかった」
「引退はどの選手にもある。偉大な選手の最後の相手になれて光栄です」
こんなことを話していたはずです。
勝った後、日本式のお辞儀をして敬意をあらわしていました。
ファンになっちゃった。
試合後の引退セレモニーでは、
いつもクールな伊達さんがスピーチの最後で涙ぐんでました。
そりゃあ、そうだよね!
でも、私は伊達さんよりももっと泣いちゃいました。
これを書きながらも、涙が出そうです。
伊達さんを見ていると、
一つのことに必死になること、なりふり構わずに目標を掴み取ろうとすることの美しさを感じるんですよね。
自分ももっとストイックになりたいなあと、しょっちゅう気が散っている私は痛感する。
屋外のコートだったのですが、雨で試合スタートが一時間遅れました。
わずか46分の試合でしたが、終わる頃にはすっかり晴れていて、
引退セレモニーの後には、あざやかな夕陽が空を飾っていました。
忘れらない一日です。