一昨年の春、父がバイクを手放した

幼い頃から父はバイクが大好きな少年だったと祖母は語る。部屋の壁にバイクのポスターを貼り、それを眺めては自分も大人になったら乗るんだと目を輝かせながら話していたとか... 
バイクを買いに行ったときの笑顔は今でも忘れないという。
友達とまな板を器用に使い膝当てを作ってみたり、近所を乗り回してはうるさいと怒られたり..ハメを外す事もあったが、父とバイクはとても相性が良く何十年とそばにいることができた。

私はバイクに乗ってかっこよく走る父の姿が大好きだった。幼い時からバイクに乗せてもらったこともある。少し大きめのヘルメット、全身に当たる心地よい風、外にひびくエンジン音、この全てが私は大好きだった。今思えばバイクなんて滅多に乗れないもの、当時の自分にもっと乗っとけ!と言っておきたい笑

私が3歳の頃、父と母とツインリンクもてぎで行なわれたMoToGPを観戦しに行った。
当時の私はうるさくて帰りたくて...汗、アイスを頬張ってました。笑
でも今思えば見に行けたことが凄いことだと思う。
スタート前の夜明け前のような一瞬の静けさ、早く走らせろ!というようなバイクのエンジン音
これだけは今でも忘れない。
父の興奮する姿は鮮明に覚えている。 

そんなバイク好きの父がなぜバイクを手放さなければならなくなったのか知りたかった。
そんな時、YouTubeでバイクのMADの動画を見た。感動で涙が溢れ出てしまった。
それまでバイクなんてと思っていた私が恥ずかしくなった。
危険を承知でレースに参加し、順位を決める。命を失うかもしれないのにスピードを上げる。途中転倒してしまい自分もバイクも引退に追い込んでしまったレーサー。途中棄権してしまったレーサーの背中。画面の中で走る全てのレーサー達の姿がとてもかっこよく見えた。

レーサーは語る
ヘルメットを被ると、途端に意識が切り替わるんだ。個人そしてチームの目標は優勝することさ。
そのためにバイクはさらに速く、さらに利口に、さらに美しくなった。
これが僕たちの最後の使命なんだ、と。

父の幼い頃からバイクが好きだと言っていることに初めて共感できた。
私よりバイクが大好きな父がバイクを手放した理由を尋ねてみた。
寿命だそうだ。
バイクは命を使い切るより、少し炎を灯ている間に手放すのが持ち主のバイクへの感謝の表し方だという...
バイクを手放す時の父の寂しそうな背中は絶対に忘れない。


話が長くなってしまいましたが、この事を一人でも多くの方に知ってもらい、糧にしていただけると幸いです。