【翔潤】







「有給消化なんだよ」

「有給消化?」

出会ったばかりの彼に、俺は自分の事を話していた…

「来月転職するので、今所属している会社の有給を使い切ろうと思って旅をしてる」

「へーそうなんですね…俺、まだ大学生なんでピンとこなけど…楽しそうですね」

「うん、自由だから楽しいよ」

「自由か…」

彼は、そう呟くと…遠い目をして窓の外を見つめた…




「えっと俺は櫻井翔って言うんだけど…」

「あ…すいません、松本潤です」

「潤くんか…潤くんって言っていい?」

彼は微笑むと…

「全然、いいですよ」

「潤くんは何処へ行くの?」

「実家に帰省します」

「大学は東京?」

「そうです」

そこで彼が大学の名前を教えてくれたのだが…

その名前を聞いて驚いた…




「マジで?俺…その大学の出身なんだけど…」

「本当に!?櫻井さんが先輩…?凄い…こんな場所で先輩に巡り会えるなんて…」




そう…

俺も、この出会いに…何か不思議な巡り合わせを感じていた…

「俺…ちょっと感動しています…」

彼は本当に嬉しそうだった…




俺は…そんな彼に対して何だか…言葉に出来ない感情が湧き上がってくるのを感じていた…

「俺…教育学部なんですけど…翔さんは?」

「経済学部だよ」

「そっか…学部は違うんだ…共通の先生とかいらっしゃるかな…何て思ったから…」

「同じ学部だったとしても、卒業してもう6年経ってるからね…」




「翔さんって…28歳?」

「そうだよ」

「俺…2年生…20歳です」

「教育学部って…先生になるんだ…高校?」

「いえ…小学校です…」

「小学校!いや…それは正解かも…」

「え…?なぜ?」

「こんなイケメンが高校の教師だと、女子高生が騒いで大変な事になりそうだから」

彼は笑うと…

「全然そんな事ないですから…」

そう言うと…すぐに真顔になった…

そして…




「実は今…行き詰まっていて…」

「行き詰まる…?」

彼は窓の外を眺めて…言うか言わないのか葛藤しているようだった…




「無理して言わなくてもいいよ」

俺がそう言うと…

彼は弱々しく微笑んだ…

その様子から…彼がその事に関してかなり悩んでいるのが窺われた…




「そういえば、もうすぐ降りるんだよね」

話題を変えるため、俺はそう言った。

「あっ…そうです…次の駅です…」




次の駅か…

何だか寂しいな…

え…?俺は何を考えてるんだ…

「翔さんは、どこまで行かれるんですが?」

「うーん…風の向くまま気の向くまま…降りる駅も宿も何も決めてない…」

潤くんは俺を見つめると…




「翔さん…もし、よければ…なんですが…」




「ん…?」




「うちの実家に来ませんか?」










つづく










個人・団体の全てはフィクション(妄想)です。