「翔さん…山田さんはね…ずっと翔くんの事が好きだったんだけど…言い出せずにいて、気を引きたいが為に…遥さんを…」




「松本くん…だっけ…?それは、ちょっと違うんだ…」

俺は…混乱の為、しゃべることさえ出来ずにいた…

「櫻井が遥と付き合っていた時…俺は遥に嫉妬していた…だから…2人を引き離したかった…」

「だから…遥かに近づいた…?」

山田は俺を見ると…

「そう…櫻井より俺の方を好きになるように仕向け…そして捨てる予定だった…」

「じゃあ…俺が遥のアパートへ行って、鉢合わせたのは…」

「完全な事故…」

「でも、あの時のお前の態度…」

山田が俺に向かって言った“遥は、お前がエリートサラリーマンだから付き合っていた”って言葉の事だ…

「あれは…出来るだけ遥の印象を悪くする為に言っただけ…」




「でも…あの件で…俺はお前を最低のヤツだと思った…」

「それは俺も分かってる…櫻井がいきなり遥のアパートへ来るから…」

「いや…どちらにしろ…俺はお前を受け入れられない…」

「なぜ…?今は…彼と付き合っているんだろう?」

そう言って潤を見る…




「お前は…何にも分かってない…」

山田は…じっと俺を見つめていた…

「まあ…ある意味…潤と出会えたのは、あんな修羅場があったから…とも言えるけど…」

俺が川に投げ込んだ指輪を、潤が拾わなければ…俺たちの関係は始まっていなかったかもしれないのだ…




「俺が、遥とお前にあんな目に合わされて…真っ暗闇へ突き落とされたていた時…潤が…天使のように現れて…その暗闇から救い出してくれたんだよ…」

潤を見ると…

美しい笑顔を見せてくれた…

「今は…潤のおかげで、こんなにも穏やかで幸せな時間を過ごせてるんだ…」

山田は…うつむいている…

「だから…今の幸せを邪魔しないで欲しい…」




山田は…泣いていた…

「俺…学生時代から…ずっと櫻井しか見ていなくて…お前はいつも取り巻きに囲まれていて…俺の事なんか…全く興味を持ってなかっただろう?」

確かに…

「まあ…その程度だよな…だから…俺は、お前にアピールするために、変な事したり笑わせたり…」

「それで俺は…山田は面白いヤツだと思ってた…」

「だから…それは全て…櫻井の気を引きたくてやった事なんだよ…」

俺は…深いため息をつく…

「山田が…そんな事を思っていたなんて…申し訳ないが全く知らなかった…」




俺は、潤を見ると…

「潤が以前…“遥さんは翔さんにとって運命の人じゃなかったんだよ”って話してくれた事があって…」

潤はうなずいていた…

「その時はピンとこなかったけど…今は、よく分かるんだ…」

そう言って潤の手を握る…

「その…運命の人に出会ったから…」

俺は…潤を見つめたまま…

「今の俺は…潤が全てだ…」




山田は…何も言わず…ただ涙を流していた…

「山田…これで…分かってくれたかな…?」

泣いていた山田は、涙を拭くと…




「櫻井…ごめん…」




そう言っリビングを出て行く…

その後を追って潤が玄関へ向かった…




「山田さんが…翔さんと遥さんに悪いことをしたって…言ってたよ…」

リビングに戻ると潤が山田の伝言を伝えてくれる…

俺は潤を抱きしめると…

「潤に何もなくて良かった…」

「ええ…?あ…さっき電話してた時の事?」

「そう…山田が潤に危害を加えたらどうしょうかと思った…」

「ふふっ…心配してくれてありがとう…あの時翔さん…物凄い形相で走って来て、俺を守ろうと山田さんから引き離した時…カッコ良かったよ」

「パニックってて…何にも覚えてない…」




それ以来…

山田は俺たちの前に現れる事もなく…

穏やかな時間を取り戻した俺たちは…

幸せな日々を過ごしていた…




そして…




再び桜が咲く季節が巡って…

俺たちは、潤が無事大学を卒業した記念に、国内の小旅行へ出掛けた…




田舎の静かな田園地帯に、桜と菜の花のコントラストが美しい場所を見つけると…シートを広げ、2人で寝転ぶ…

「翔さん…ここ凄いね…こんなに綺麗なのに誰もいないから、鳥の声だけが聞こえる…」

「こんな穴場を見つける事が出来て、俺たちはラッキーだ」

すると潤が、俺の上に覆い被さるようにして抱きついてきた。

「おいおい潤…人がきたら…」

「見られてもいいよ…」

そう言われると…何だか…色々な事が、どうでもよくなってくる…

「潤…愛してるよ…」

桜の木の下で…潤とキスをする…




「そうだ…」

俺はカバンの中から、長いケースを取り出すとそのケースを開き、中身を潤に見せる…

「えっ…?これは…?」

「卒業記念」

ケースの中には、鳥の羽根の形をしたトップが付いたペンダントが入っていた。

「つけてみて」

俺は、ペンダントを取り出すと潤の首にかけた。

「すごく綺麗…」

潤は、羽根の形のトップが気に入ったようだ。




「潤…卒業おめでとう」

「翔さん…俺…嬉しい…」

潤が俺に抱きつく…




「潤は…俺の人生をカラフルに変えてくれた大切な人だから…」

「カラフル?」

「そう…黒一色の闇の中にいた俺を…こんなに美しい色彩の満ち溢れた世界へ連れ出してくれた…運命の人…」




「俺も…運命の人に廻り会えた」




「これからも…ずっと2人で、幸せに生きていこうな…」




「うん…幸せ過ぎて…涙が出る…」




俺と潤は…満開の桜の木の下で、幸せを噛みしめながら…




ずっと抱き合っていた…









Fin








個人・団体の全ては、フィクションです。











※「カラフル」にお付き合いいただき、ありがとうございました。

今回も何とか毎日アップする事が出来て、安堵しております。

ちょっと私生活で、3月末から4月にかけて、ドタバタする事出来事があり…次回作についても、色々と考えていることがありますので、よろしければ「あとがき」を読んでいただければ嬉しいです。