教育テレビの「福祉ネット」において、「プレ更年期」
を取り上げていた。
コメンテイターとして招かれていた女性の医師が
「アンチ・エイジング」という言葉は好きではないと
述べていた。
実は、私もこの言葉があまり好きではない。
以前、神谷美恵子さんの本を読んだ時のことを思い出した。
神谷美恵子さんは精神科医であった。かつて偏見にさらされ、
社会から隔離を余儀なくされていたハンセン氏病をわずらう
人々の支援を続けた人である。
患者の中には、ハンセン氏病に加えて精神病に罹患して
いる人々もおり、そうした人々は2重の病の中で苦悩して
いた。
当時、社会の中で最も見捨てられていたと言える人々の
苦悩に寄り添うために、神谷さんは生涯をかけて通い続け
たのだ。おそらく、そうした役割を担うことに人生の意味を
見出していたのだろう。
幾冊か読んだ神谷さんの著作のなかには、彼女の写真
が小さく載っているものがある。
若いころの写真は、いかにも聡明な様子が伝わってくる
のだが、やや表情に硬さがあるように感じられる。
しかし、晩年のころのものは、とても柔らかい表情であり、
慈愛に満ちたような眼を持っている。何ともいえぬ美しさが
あるのだ。
彼女の人生には、凡人の私には想像もつかないような
葛藤や懊悩もあったことだろう。
しかし、おそらく人間の表情にはそれまでの人生で培ったきた
ものが色濃く刻印されるのではないだろうか。
年を重ねたからこその柔らかな美しさを追求したいものである。