僕は漣(さざなみ)


人口100世帯以下の小さな島で生まれた


海に囲まれた僕の耳の世界は


いつも漣の様な小さな波のように穏やか世界


大きな波が来ることもなく


静かに静かに毎日を過ごしていた。


みんなのおかげで勉強ができ、


僕は歯科技工士になることができた。


僕は義歯を作れる様になった。


クラスプも誰にも負けないくらい上手にできるようになった。


技工士になって約20年。


1人で静かにただひたすら


小さな波の上で泳いでいた。


あるとき、


僕は1人の女性と出会った。


その人は聴こえる人だった。


たくさん仲良くなって僕を好きになってくれて


僕も彼女を好きになった。


ずっと1人で生きていくと思ってた僕は


彼女と結婚する事もできた。


そして6月29日


僕はお父さんになることができた


遺伝性難聴の聴こえない僕と聴こえるママから


健康な赤ちゃんが生まれてきてくれた。


僕にも守るものができた。


42年間独身で彼女を待ってて

44年で父親になれた。


僕の心はいつもどんなときも穏やか波


だけどこれからは

波の上を鷹の様に強く飛ぶんだ。



新しい家族 


新しい夢


聴こえなくても必ず叶えてみせる。


今日からまた1つスタート。