ある老齢の夫による妻殺害事件の行方
「妻の最期の表情は、本当に楽そうだった。息子のところへ足早に行ったかのように思いました」
…布団に包丁を持ち込んでいた。
「もう限界。一両日中に絶対にやるからね」
「長男の看病を任せ、自分自身も妻を追いつめた」
「妻が息子のために息子を死なせたように、妻のために妻を殺そう」
…包丁を持ち出した。
「お父さんに罪は着せられない」 と、自ら…首を刺した。
「できないよ」
「いいのか」
「お願いします。ここだよお父さん」と首を指さした。
「今まで長い間つらかったね。これで楽になったな」
「家内を殺したことに後悔はないです。しかし、どんな理由があろうと人をあやめるべきではなく、反省しています」
横浜地裁で
「長年連れ添った妻を自らの手で死なせた苦悩、葛藤は想像の及ぶところではない」
「裁判所はあなたに深い同情を感じています」
「自身で命の大切さを確かめ、生き抜いてほしい」
猶予判決になりましたが、
古くて、新しい、とても哀しい事件です。
ソースは啓蟄の日の 朝日新聞東京版 38面