『あのとき始まったことのすべて』
著 者:中村航
出版社:角川書店
評 価:★★★★★
- あのとき始まったことのすべて/中村 航
- ¥1,470
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あらすじ(「BOOKデータベース」)
確かなのは、僕らは今を生きるしかないということだ。社会人三年目―中学の同級生との十年ぶりの再会。それが、僕らのせつない恋の始まりだった…。
感想
(ネタバレ&多分に私情を含んだ感想になります。ご了承いただける方のみご覧ください。)
中村作品大好きな私。
中でも、『僕の好きな人が、よく眠れますように
』「ハミングライフ(『あなたがここにいて欲しい
』収録)」が断トツで大好き!!
その突出して最高な二作に並ぶ、素晴らしい作品だった。
(この三作品は好きすぎて優劣つけられない)
やっぱり中村さんの言葉の選び方、文章、雰囲気…すべてが好き。
そして、岡田くん(『僕の~』の山田さんもだけど)のような会話をしてくれる人がいたら、私は好きになってしまう。
読み始めてすぐ、思い出と重ねて切なくなったけど。
その切なさも懐かしさも、すべて込みでこの作品が好きなのかな。
「好きな人のパーカーのフードには何か入れたくなる」という白原さんが可愛くて。
「サラダガール」「お肉姫」「米飯娘」と言う門前さんは木戸さんみたいで。
人間は七十%の水分と三十%の優しさでできている。
ポケットに入っていた/入っているモノについて、「覚えたてのラブソング」「ほのかな恋心」「月曜日の秘訣」「折り合い」と列挙したり。
パーカーのフードに入れたくなるものを「届かなかったあの思い」「時代を先取るニューパワー(入れないでほしいと言われたけどw)」なんて会話をしている岡田くんと石井さんが素敵で。
中村作品が好きな人は、おそらくとても好きな作品。
でも、中村作品を知らない人でも、懐かしい思い出を胸のどこかにしまっている人は…きっと甘酸っぱくて切なくて…そして楽しめるんじゃないかなぁ、と思う。
ただ、もっとも納得ができないコト。
「遠距離恋愛は無理」という決めつけで、やってもみないでこんなにも想い合っているのに付き合わなかったコト。
確かに、2人の新しい関係だってとても素敵だし、「いいなぁ」って思うし、ほっこりとした終わり方で、大好きな作品になった。
でも。
誰を傷つけるわけでもなく、むしろ付き合い始めれば周囲から祝福される2人なのに、たかだか大阪⇔東京くらいの距離(海外ならともかく)で無理って。
しかも、高校生とかでなく社会人。
「そんなこと言う女、こっちから願いさげ!」とか思ってしまった。
(イヤ、石井さん好きだけど)
こんなにもお互いを想い合って、会話も楽しくて、過去の思い出まで共有できる2人。
それなのに、なんで??
……なんて、完全に八つ当たりなのはわかっているけど。
あのとき始まったことのすべてを大切にしたい、そんなふうに感じるのは奇跡みたいなことだと思う。
「こんな楽しいな中学時代を送りたかった~」なんて、目が泳いだ残念な私w
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