恋戦ファンの皆様、おはようございます♪
私の前に書かれた方々は1記事で終わらせておりますが、リーシャは案の定、2記事ですww
低脳リーシャの書いた稚拙文で長いお話ですが、「仕方ねえな読んでやるよ」という方はどうぞ。
企画者あいさん 序章
第一走者 更紗さん
第二走者 かざるさん
第三走者 やいさん そして、第4走者が、わたくしリーシャとなります。
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「よし!今日こそ!」
私はミニョリンさんへのプレゼントを手に、自分に気合を入れるように大きな声をあげて屋敷を出た。
昨日は颯太の恋仲であるミニョリンさんの誕生日の宴が義朝さんのお屋敷で開かれた。
しかし、私はその宴の席に招待されたものの、道に迷って遅れて到着し、
ある光景を目にして逃げるように清盛さんの屋敷へ帰ってきてしまったのだ。
(…びっくりして思わず逃げちゃったけど……気づかれてたかな?)
昨日自分が目にした光景をまた思い出してしまい、その光景を振り払うように私は首を左右に大きく降って義朝さんの屋敷へと向かった。
義朝さんの屋敷まであともう少しという辺りまで来た頃…。
耳に複数の足音と悲鳴のような声が聞こえてきて、私は足を止めた。
(なんだろう…。何か騒ぎでも起こったのかな?)
また悪さをする野盗でも出たのだろうか。
そう思うとまた厄介事に巻き込まれて清盛さんたちに迷惑がかかるかもしれない。
(私が首を突っ込むとロクなことがないから、ひとまず隠れたほうがいいかな)
とにかく隠れようと辺りを見回して隠れる場所を探していると、近づいて来る足音とともに聞き覚えのある声が聞こえてきた。
(あれ?……この声って)
そう思った途端…私の横を猛スピードであるものが駆け抜けていった。
「うわっ…!」
一瞬突風が吹いたかのように風が砂を巻き上げた。
頬についた砂を手でほろいながら、まぶたを開き横切っていったものへと視線を向けると見知った人の後ろ姿が見えた。
「え…か、かざるさん?」
砂を巻き上げるほどの猛スピードで駆けていったのは、どうやらかざるさんのようだ。
その脚力はオリンピック選手も驚愕するほどのもので、私は目を瞬かせながら小さくなる背中を見つめていた。
(でも、あんなに急いでどうしたんだろう?)
すると、また複数の足音が近づいてきた。
家盛「待ってくれ、かざるさん!!俺にはかざるさんしかいないんだ!!!」
(……告白?)
白昼堂々と告白をする家盛さんの声が澄んだ空に響く。
訳の分からないまま過ぎ去っていった家盛さんの後ろ姿を見ていると…
やい「家盛さん、逃げないで!!!」
今度は悲鳴のような苦しみを帯びた声が響いてきた。
よく分からないけれど、かざるさんを家盛さんが追い、家盛さんをやいさんが追いかけているらしい。
だけど、その光景はあまりに今の私には理解できなかった。
「えーっと……これってつまり………三角関係?」
起きて数時間しか経っていない、まだ少し頭が冴えない私が導き出した答えはその4文字だった。
「…あ、でもかざるさんは鳥羽様の恋人なんだよね?」
じゃあ、四角関係なのか…そう考えに至るも、家盛さんから逃げるかざるさんは必死な様子で。
家盛さんは嫌がる相手に無理に答えを迫ったりするのだろうか。
そんな疑問がたくさん浮かぶ中、ふとある言葉が浮かび上がった。
「もしかして…修羅場に遭遇してしまった?」
なんの根拠もなく導き出された言葉。
だけど、今の私には彼女たちを見てそれ以上の答えを導き出せなかった。
単に鬼ごっこをしているとは到底思えないし、走っている3人から真剣さが感じられたのだから。
もしかしたら、あれは鬼ごっこのように見えて修羅場の一場面だったのかもと我ながら乏しい予想しかできない。
(あの三人がどういう関係なのか気になるけど………)
「…ま、いっか♪」
3人のことがかなり気になる私ではあったが、首を挟まないほうがいい。
トラブルメーカーな私はそう直感し、再び義朝さんの屋敷に向かおうとするとすっと突然目の前に誰かが立った。
「うわっ!?……って茨木!」
急に目の前に立たれ声を上げて驚いた私を茨木が悪戯な笑みを浮かべて見つめていた。
「もう…びっくりしたでしょ」
茨木「……直美」
「ん?」
茨木「……かざるを見なかったか?」
茨木の言葉に少し耳を疑いながら、私は答えに迷ってしまう。
(茨木が人を見失うなんて珍しい……。というか、茨木…今かざるさんのところにいったら余計に状況が悪くなるんじゃ…)
私の中では3人がただの鬼ごっこをしているようには見えず、茨木にかざるさんを見かけたことを言うのを躊躇ってしまう。
きっと茨木はかざるさんの護衛をしていて、何らかの事情でかざるさんを見失い探しているのだろう。
けど、あの修羅場のような鬼ごっこを見たら、主である鳥羽様に報告することになってしまう。
(茨木…困るよね……)
茨木の顔をじっと見つめながら、口をつぐんでいると茨木が口を開いた。
茨木「……かざるを…」
「……?」
茨木「……家盛がかざるを…追っていくのを見かけなかったか?」
「…!?」
私の反応を見て茨木は後ろを振り返って、かざるさん達が走っていった方角を見つめた。
「茨木…知ってたんだ」
茨木「………?」
沈んだ声で茨木の背中に声をかけると、茨木が不思議そうな顔をして振り返った。
「かざるさん…きっと事情があると思うんだ。だから、鳥羽様には……」
かざるさんは誰よりも鳥羽様のことを理解していてお慕いしている。
彼のために何でもするその姿は、女性の私から見ても惚れ惚れしてしまうほどなのだから。
あの状況はきっと何か理由あってのことだろう、そう思った。
茨木「…………違う」
私の言葉を否定するように茨木が首を横に振りながら言うと、私は顔を上げた。
「え?」
茨木「………かざるは…巻き込まれただけだ」
「巻き込まれた?」
よく状況が理解できず、首をかしげると茨木はゆっくりとミニョリンさんの誕生日の宴の時に起こったことを話し始めた。
ひと通り、茨木が淡々とかざるさん達の身に起こったことを話してくれて私はやっと状況を把握してきた。
「じゃあ、家盛さんとやいさんはその……変な薬のせいでおかしくなっちゃったんだね」
確認を取るために茨木に尋ねると、そうだと茨木は頷いてみせた。
(……其一さんが持ってくる薬ってロクなものがないなぁ…)
話によれば…
第1にミニョリンさんが其一さんから貰った薬を飲んで鬼嫁化。
颯太にアキレス腱固めを決めたり、止めに入った家盛さんをラリアットで気絶させるというプロレスラー顔負けの腕前を披露したそうだ。
颯太相手にタップするまで技を止めなかったらしいが、技をかけられる度にミニョリンさんの愛を颯太は噛み締めていたらしい。
そんなことから、颯太のドM疑惑が浮上している。
そして第2の被害者はノリちゃん。
其一さんが恋人の更紗さんに小瓶の中身を飲ませようとして、それを更紗さんが抗った結果。
手に弾かれた小瓶が宙を舞い、瓶が逆さになって中の液体がちょうど更紗さんを訪ねて来たノリちゃんに降りかかったらしい。
その後、其一さんの目の前で、更紗さんを口説き迫ったという話だ。
その様子を見ていられず、其一さんが更紗さんを連れ出し、そこへ丁度やってきた家盛さんを足止めに使ったらしい。
「……で、家盛さんと清盛さんのおかげでノリちゃんを沈めたはいいけど、今度は家盛さんがおかしくなったってこと?」
茨木「………そういうことだ」
第三の被害者、家盛さんは直接中身を飲んだわけではないらしいが急におかしくなったらしい。
様子がおかしくなった家盛さんはかざるさんに、「あなたと出会うために、俺は生まれてきたのだと思う」だの
「めいど服だの、女郎だの、妙な格好をさせて愛でる法皇よりも、俺を選んで欲しい。俺は生涯をかけてあなたを愛することを誓う」
と、聞いてて歯が浮くような口説き文句を口にし、かざるさんはそれに耐え切れずに逃げ出したそうだ。
「だけど、やいさんまでどうして…」
茨木「……かざるが」
「え?」
よく意味が分からずに茨木の答えを待っていると、茨木が小さく息を吐いてから一気に告げた。
茨木「…かざるが八雲の手を握らせて…家盛と目を合わさせたら………ああなった」
「…は…はい?」
茨木の説明に一度では理解でできずに聞き返すが、茨木はこれ以上語らないといった顔をする。
(…茨木の話を聞く限り、やいさんがおかしくなったのはかざるさんが引き金…って言ってるように聞こえるんだけど)
とにかく、第4の被害者の隣に住むやいさんは、ノリちゃんの手を握り家盛さんと目が合わせられておかしくなったらしい。
その結果、先ほど私が目にした三角関係と誤解してしまうような鬼ごっこが開始されたという。
(…とはいえ、口にせずとも効力をもたらすとは……)
「其一ドラッグ……恐るべし」
茨木「………?」
聞き慣れない言葉に茨木が首をかしげると、私はふふっと小さく笑いながら堪える。
「其一さんが持ってくる薬のことだよ。まー其一さんが作ったわけじゃないけどね。作ったのなら、其一散薬とか言いたくなるけど」
茨木「………」
茨木が更に眉をひそめて、私の言葉の意味を理解しようとしていておかしくなって笑った。
「でも、やっぱり、私は首を突っ込まなくて正解だったね!」
満面の笑みで微笑むと、茨木がやんわりと笑みを返す。
かざるさん達の状況を理解しながらも、まったく手を貸そうと思わない私だがおそらく私では手に負えない。
むしろ、状況悪化させかねないだろうと予想できたのでほとぼりが冷めるまでそっとしておくのが一番だと考えに至った。
しかし、時に運命というのは残酷なもので。
私が避けようとも、事件は向こうから近づいて来る。
茨木「……っ!」
(ん?何だろう…すごい足音が聞こえてくる)
二人に忍び寄る魔の足音ということに気づかず、私と茨木は不審に思いながら足音のする方へと視線を向けた。
すると、視線の先からはかざるさん、家盛さん、そしてやいさんが物凄い勢いでこちらに向かってくるのが見えてきた。
そのあまりの勢いに、思わず後ずさりしてしまいながらも、私はある違和感に気がついた。
(…あれ?)
茨木も私同様に異変に気がついたようで、首をかしげているのが横目に見える。
(………なんかすごく嫌な予感がする)
こういう嫌な勘ほどよく当たってしまうだけあって、迫ってくるかざるさん達に嫌な予感が頭の中を覆い尽くしていった。
「……ね、ねぇ……かざるさんって正気……なんだよね?」
迫るかざるさんたちから少しずつ後ずさりながら茨木に問いかけると、茨木は表情を崩さず何も答えない。
「家盛さんから逃げてるはずのかざるさんが、家盛さんと並んで走ってるんだけど……」
茨木「…………」
茨木に答えを急かすように言うも、茨木は視線をかざるさん達に向けたまま何も答えない。
「やいさん…家盛さん追いかけてたけど、やいさんもかざるさんと家盛さんと仲良く横に並んで迫って来てるんですけど!」
徐々に距離を詰めてくるかざるさん達に焦りを感じてか、言葉に力が入り早口になった。
冷や汗が頬を伝い、私は茨木の答えを待ちながら息を呑むと、ぐいっと茨木が急に私の手を掴んだ。
茨木「……逃げるぞ」
「え?!」
真剣な顔つきになった茨木が私の手を引いて、かざるさん達とは反対側に走っていく。
すると、後ろから声が響いてきた。
かざる「待って、茨木!」
やい「待ってください!茨木さん!!」
家盛「直美さん!俺の愛を受け止めてくれ!」
それぞれ後ろから声が飛び交ってきて、私は茨木の手を離すと全力で走り始めた。
「ちょっと!家盛さんはかざるさんに惚れてるって話じゃなかったの!」
茨木「……そのはずだ」
茨木も少し恐怖を感じているのか、必死な顔つきで私の隣を走っている。
息を乱しながら、彼らからどう逃げ切ればいいのか、私は必死に思考を巡らせていた。
(かざるさんまで変にしちゃうなんて……あの後いったいかざるさんの身に何が……)
私の前を過ぎ去った後、かざるさんの身に何があったかは知らないが、絶対に捕まってはならないということだけはわかっていた。
「茨木!」
茨木「……」
私の声に茨木が横を向くと、私は追いかけてくるかざるさん達をちらっと振り向いて見ると口を開いた。
「かざるさんとやいさんには悪いけど、ノリちゃんの時みたいにできないの?」
私の言葉に信じられないのか、驚いた顔をした茨木が慌てたように首をぶんぶんと振る。
「けど、捕まったらおしまいだよ!其一ドラッグの効力は絶大で、感染力大だよ!」
家盛さんのように愛の言葉を叫びながら走るのだけは勘弁して欲しい。
しかも、だれ相手に惚れてしまうか分からないというのがまた恐ろしいところで。
話によれば、見た相手だそうだが、それでも薬に操られるまま誰かを想いを寄せて追いかけるのはごめんだ。
そう思い彼女たちのように変貌しまいと必死に目で訴えかけると、茨木は足を動かしながら俯いてぼそっと告げた。
茨木「……かざるを…傷つけたくない」
「……茨木」
主の大切な人を傷つけたくない思いからか。
それとも、自分自身、かざるさんを傷つけたくないと思っているからか。
茨木の寂しさを含んだ声音と、俯いた横顔に茨木のかざるさんへの思いを知り、これ以上の説得は無意味だと判断する。
(じゃあ…一体どうしたら!)
このまま逃げていても、いつかは体力が尽きて捕まるのは目に見えている。
だけど、かざるさんややいさんはともかく、家盛さんを力づくで止めることはできそうにない。
迫る足音に危機感と焦りを感じながら、ただがむしゃらに走り続けているとぞぞっと悪寒を感じだ。
かざる「へぇ~直美ちゃん結構足早いね~。茨木に付いていけるなんてびっくりだなぁ♪」
(うわっ!?いつの間に!!!)
考えを巡らせている間に私たちへと着実に距離を縮めていたかざるさん達がもうすぐ側にいるのに気がつく。
やい「茨木さ~ん、逃げないで!私と一緒に来てください!!」
家盛「直美さん、絶対に逃がさない」
(ひ、ひええ~っ。家盛ファン卒倒するだろう言葉だけど、今はただ怖い言葉にしか聞こえないよー!!)
茨木へ向けられるふたりの言葉はともかく、私にとって鋭い眼差しで私を射止める家盛さんの視線の方が恐ろしい。
捕まったら最後、捕まれば家盛さんに迫られるだけではなく、自分すらおかしくなってしまう。
そんな考えを巡らせているうちに、手の伸ばしたら掴まれてしまうんじゃないかというほどに距離が迫る。
私はもうダメだと、息を切らし始めてそう思って目を閉じようとしたその瞬間…私の足がふわりと宙に浮いた。
「え?…うわっ!?」
何事かと思って閉じかけた目を見開くと、私は茨木に抱きかかえられているのがわかった。
「…っ、ちょっと、茨木!」
茨木「………少しだけ…」
「え?」
茨木の声が足音などの雑音で聞き取れずにいると、茨木は私の抱えたまま更にスピードを上げていった。
茨木の足に誰もついてこれないのか、後ろから聞こえていたかざるさんたちの声が徐々に掠れ……聞こえなくなっていった。
私を抱えたまま茨木がやってきたのは、森の入口近くにある綺麗な川がある場所だった。
「あ、ありがとう…茨木」
やっと茨木に降ろしてもらい、少し気恥ずかしくて頬を熱くなるのを感じながらお礼を告げる。
茨木「……」
茨木はただ無言で頷いて見せると、綺麗な水を手ですくって一口含んだ。
木々から射し込む太陽の光が、水面をきらきらと輝かせている。
走り疲れて喉の渇きを癒したい私は、その光に引き寄せられるように近づいていった。
「…っはぁー」
茨木を真似て両手で水をすくって口に含むと、私は息を大きく吐いた。
そして、くるりと振り返って茨木を見た。
「茨木、有難う。おかげで、逃げ切れたよ」
茨木「……礼はいらない」
もう一度お礼を告げると、いつものように素っ気ないように返される言葉だけど、茨木に助けてもらったからか、なんだかそんな茨木も可愛く思えた。
「…それにしても、かざるさんまで其一ドラッグの被害に。どうしたらいいんだろう?」
茨木「……かざるがああなった以上……俺は主に意見を仰ぐ」
私は茨木の考えに賛同し、大きく頷いた。
「私もそれがいいと思う。鳥羽様なら、きっといい解決策を出してくれるよ」
これからのことが決めり、ほっと一安心しながらもかざるさん達の身を案じてしまう。
(其一さんの用意したものだから、体に害はないと思うけど。あれだけキャラ変わっちゃうと心配になるよね)
一刻も早くかざるさん達を元に戻してあげなくてはという思いに、事件解決へのやる気が出てきた。
ガサッ――
茨木とひと時の安らぎの時を邪魔するかのように、近くの茂みが揺れた。
茨木は私を庇うように前に立ち刀に手を添えると、二つの影が見えた。
其一「あ、やっぱりアンタたちか」
「あーー!!!」
更紗さんの手を引いて、茂みから姿を現した其一さんに私は指をさして叫ぶ。
その姿に、くすくすと更紗さんの上品に笑う声がして私ははっと我に返る。
(うわっ…思いっきり叫んじゃった…)
思わず叫んでしまったことを恥ずかしく思い、頬を赤く染めると其一さんがにやにやとしながら側に寄って来た。
其一「かなり汗かいてるみたいだけど、どうしたの?」
全てを知っているのにあえて知らないふりをしているような口ぶりに、私はむっとしながら声を上げた。
「どうしたか知ってくせに……!こうなったのも其一さんのせいなんですから…其一さん、責任とってください!」
其一さんの態度に少し苛立ちながら、其一さんに責任を問うと更紗さんの手を離してやれやれと大げさに大きなため息をついた。
其一「どうにかしてやりたいけど、あの薬のことは俺もよく知らないんだよね」
茨木「…しばらく経てば効果は切れる…そう言ったはずだ」
茨木が少し低くした声で呟くように告げると、くくっと其一さんは笑った。
其一「そんなこと言ったっけ?」
(……其一さん責任取る気はまったくないみたいだなぁ…。鳥羽様でもどうしようもできない代物だったらどうしよう……)
其一「それよりさー」
茨木へと向けた視線がちらりと私に向けられると、嫌な予感を過ぎらせるような何かを目論んだ笑みを其一さんが浮かべた。
其一「直美……アンタさ…、昨日……見てたよな?」
「……っ!」
更紗「え?」
其一の言葉に思わず目を見開き息を飲む。
だけど、更紗さんは何の話だかよく分からないようで首を軽く傾けていた。
其一「裏庭で俺と更紗を見て、逃げただろ」
更紗・直美「「ええええ!?」」
二人同時に発せられた声が森に響いていくと、私と更紗さんはお互いに顔を見合わせた。
そして、二人して顔を赤くして視線をすっと逸らす。
其一「まーアンタのことだから、照れて顔真っ赤にして逃げたんだろうけど。今みたいに」
にやりと口角を上げながら、頬を赤く染めた更紗さんの腰に手を回してぐいっと引き寄せる。
更紗「ちょ、ちょっと!」
愛らしく頬を染めたまま、抵抗しようとする更紗さんに満足げな笑みを浮かべながら其一がその手を離そうとしない。
其一「…可愛い更紗の声を聞いたんだから…その責任アンタも取ってもらうよ」
「…は?」
恥ずかしくて俯いていた視線が上がり、私の頬の熱も一気に覚めるようだった。
その一言に嫌な予感がしたのはもちろん言うまでもない。
其一「というわけだから、この騒動はアンタがどうにかしなよ」
「えっ!?」
予想していた通りの言葉であったが、驚きの声をあげてしまう。
茨木は黙ってその場を見守るように傍観し、更紗さんは其一さんに抱かれながら少し呆れた様子で其一さんを見上げていた。
「そ、…そもそもっ!あ、んなところで、あのようなことをしてた其一さんに責任がっ」
其一「あんなことって?」
「……っ」
私の言葉を遮るように口にした其一さんに私は口をつぐんだ。
押し黙る私に其一さんはどこか面白がっている様子で、私は悔しくなって頬を膨らませる。
「だっ…だから……そ、そのく…くち…っ」
其一「くちがなに?」
「っ――!もういいです!」
最後まで結局言い切れず、其一さんの思惑通りになってしまったことに拗ねたように背を向ける。
すると、背後から心配そうにする更紗さんの優しい声音が聞こえてきた。
更紗「其一さん!直美ちゃんをあまりからかうのやめなよ。しかも、責任まで押し付けたら可哀想でしょ」
(…更紗さん、優しい人だなぁ)
其一さんを恨めしく思う気持ちを押しつぶしながら、更紗さんの言葉に心が穏やかになっていくのを感じた。
だが、その穏やかさはすぐ其一さんの言葉によって消されてしまった。
其一「直美はからかうと面白くて飽きないよ。更紗も今度からかってみたら?結構、ハマるかもよ?」
(ハマるかもよ?って私はからかい人形じゃないって!)
あまりに苛立つ言葉を耳にして、ぎゅっと自分の着物を掴んだ。
(いつも口で言い負かされるけど、今日こそ言ってやる!)
打倒其一を胸に、私は勢いよく振り返って口を開いた。
「其一さんの薬が元凶でこんなことになってるんですよ!」
怒りを含んだ声でいうも、其一さんはけろっとした顔で言葉を返す。
其一「あのさ、前から言いたかったんだけど。俺は『きいつ』じゃなくて『きいち』だから」
「今はそんなことどうでもいいです!」
其一「いや、どうでもいいって。俺の名前はどうでもいいわけ?」
怪訝そうにする其一さんだけど、私はじっと其一さんを睨むように見る。
すると、其一さんは呆れたようにため息をついた。
其一「まー俺の名前はもう『きいち』でも『きいつ』でもどうでもいいけど。更紗の声を聞いた責任は取ってもらわないとね。偶然とはいえ聞かれるのは面白くない」
更紗「……え」
更紗さんが其一の言葉にハッとして見上げると、其一さんが見たことのないような優しい眼差しで更紗さんを見下ろしていた。
(其一さんって更紗さんの前だと、あんな表情もするんだ……)
見たことのない其一の穏やかな一面に、なんだかこみ上げてきた怒りが一気に冷めてしまった。
ふたりの仲を見て、なんだか其一さんだけを責めるのも気が引けたのかもしれない。
其一「俺もあんなところで更紗に手を出したのがいけなかったわけだし、一応手は貸すけど、まーあまり当てにしない方がいいだろうな」
「…いえ、大いに当てにしたいんですけど」
優しい眼差しが急にからかうような視線に変わり、その視線が私に向けられて私は眉間に皺を寄せた。
其一「今度はもう少し人に見られないところじゃないとダメだな。案外、外は声が響くし」
更紗「なっ…!」
其一「あー家の中でも声が響くってのは同じか」
更紗「……!!」
ぺらぺらと言葉を重ねる其一さんに、慌てて止めに入る更紗さんの手を其一さんが掴んだ。
更紗「変なこと言わないでよ!誤解されちゃうでしょ!!」
照れくさそうにしながら更紗さんが其一さんに訴えかけると其一さんは更に腰を引き寄せて顔を近づけた。
其一「外は嫌だとか言いながら、そんな反応じゃなかったと思うけど?」
更紗「……っ」
かあっと顔を真っ赤にした更紗さんを見下ろし、くくっと笑う其一に茨木が小さく息を付きながら私の手を取った。
「…茨木?」
茨木「…行こう……。主は後白河天皇のところだ」
「?」
茨木が強引に手を引くので、少し驚き戸惑いながら小さく頷くと後ろから声がした。
其一「まあ、何か分かったら教えるから頑張ってよ」
更紗「茨木、直美ちゃん、またね!」
ふんわりと笑って手を振る更紗さんと、にやりと口角を上げている其一さんに手を振り、私はふたりの元を去っていった。
そして、やってきたのは鳥羽様がいるという御所。
茨木と門をくぐって庭へと進むと、カーンと規則的にししおどしの音が響き、木々がさわさわと音を立てる。
心地よい音に耳を澄ませながら、鳥羽様の姿を探し歩いていると廊下先から優雅に歩く姿を見つけた。
「あ、雅仁様!」
彼の姿を目にして思わず声をかけると、雅仁様は私に気づいてふっと笑みを浮かべた。
庭先から駆け寄る私を見下ろし、雅仁様は私に口を開いた。
後白河「直美、ちょうど良かった」
「え?」
(ちょうど良かったって…雅仁様、何か御用なのかな?)
首を傾げながら雅仁様の言葉を待っていると、雅仁様の表情が徐々に曇っていった。
(あ…れ?なんか、すごく不機嫌そう…)
急に表情が変わったことを不思議に思っていると、雅仁様が不機嫌そうな声を響かせた。
後白河「清盛はどうしている」
「え?清盛さんですか?」
(もしかして、用って私じゃなくて清盛さん?)
ひとり考えていると、雅仁様は話を続けていった。
後白河「昨晩、あいつに早々に参内するようにと文をやったのだが、いつまでたっても来ないのだ」
(あー……私が屋敷を出る前はまだ寝てたような…)
屋敷を出る前のことを思い出しながら、雅仁様から視線をさりげなく逸していく。
すると、雅仁様はまだ文句が言い足りないようで更に言葉を続けた。
後白河「もう陽が高く昇っているというのに、あいつはいつになったら来るつもりだ」
「えーっと……おそらく、そろそろ目を覚ます頃じゃないかと」
そう答えると、雅仁様は不満そうに眉をひそめて私を見下ろした。
そして、大きくため息をつき、心配そうな声で呟くように言う。
後白河「それに…あいつの元に文を持って行かせたかざるも戻ってきていない。もしや、清盛に何かされたのではないんだろうな」
「えっ!」
(そ、そうなの?)
帰ってきた清盛さんの様子がどこかおかしかった気がしたけど、もしかしてかざるさんと何かあったのでは?
そう思うと私の胸がざわめき始めた。
清盛さんと別に恋人同士というわけではない。
ただ、事情があって清盛さんの屋敷に住まわせてもらっている身。
(……かざるさんと何があろうと私には関係ない)
沈んでいく気持ちと清盛さんへの気持ちから顔を背けたくなり、私は小さく首を振り思いを振り切る。
すると、にやりと口端を上げた雅仁様と目があった。
後白河「あいつに限ってかざるに手は出さないだろう。だが、そんなに心配なら、ずっと清盛のそばにいてやればいいだろう?」
「…っ……別に心配はしてません!」
後白河「そうか?かざると清盛の話をした途端に表情が陰った気がしたのだが」
「…かざるさんに清盛さんが迷惑かけたら困ると思っただけです」
これ以上、心を探らせないようにと顔をそらすと雅仁様はやや呆れ気味のため息をついて庭へと降りてきた。
後白河「…相変わらず、素直ではないな」
「…私はいつも素直です」
ちらっと雅仁様の顔を覗き見て言うと、雅仁様は私の心を見透かしているように妖艶な笑みを浮かべていた。
後白河「それより…なぜ、お前がここにいる、茨木。お前はかざるの護衛を任されていたはずだろう」
私に向ける眼差しとは打って変わり、厳しい眼差しを向ける。
茨木はすっと私の前に出て、これまでの経緯を雅仁様に説明した。
後白河「なるほどな…。其一の薬でかざるがそんなことになっているのか」
雅仁様は愉しそうににやにやと何かを企むように笑う。
「…愉しそうですね…」
後白河「ああ。これ以上に愉しいことはないな。今のかざるを見たあいつがどんな反応をするか楽しみだ」
「あいつ?」
首をかしげると、ガサッと茂みから音がした。
驚いて振り返ると、思いもよらない人たちの姿があった。
かざる「茨木み~っけ!」
やい「茨木さん!もう逃がしませんからね!」
家盛「直美さん、もう観念して欲しい」
(また出た!?)
せっかく逃げ切ったというのに、こうも簡単に見つかるなんて…。
もしかしたら、薬には惚れた相手の匂いを嗅ぎ分けるようになる効果もあるのか。
それとも…野生の勘なのか。
もはや、彼らがどうやって私たちを探し当てたのかはどうでもいい。
今はこの場を切り抜けることが先決だ。
そう思って私は後ずさりながら雅仁様に助けを乞おうと、雅仁様に手を伸ばした。
(あ…あれれ?)
しかし、その手は雅仁様の体に触れることはなく。
不思議に思って振り返ると、先程まですぐそばにいたはずの雅仁様の姿がそこには既になかった。
慌てて辺りを見渡し雅仁様の姿を探すと、雅仁様は縁側に上がって私を見下ろしていた。
「ま、雅仁様!助けてください!!」
後白河「俺があいつらのように誰かを追い掛け回すのは、流石にまずいだろう?」
「…そりゃ、そうですけど」
(口説き文句叫びながら雅仁様が町中駆け走ったら、そりゃ京に激震が走るわ)
雅仁様が口説き文句を叫びながらひとりの女性を追う姿を想像する。
(……あー…誰もがこの世の終わりを見たかのような気分になるな…きっと)
危機が迫っているにもかかわらず、どうしてこんなにも余裕に想像を膨らませるのだろう。
そう思いながらも、私の頭の中には雅仁様の残念な姿を嘆き泣き崩れる女性たちと、世界の終わりだと叫び平安時代の幕引きを悟る民の姿が浮かんだ。
(…雅仁様だけは守らないと…。まー大抵、こういう時にその大役を背負う人は限られてくるんだけど)
雅仁様に火の粉が降り注がぬようにと、願いながら迫り来る家盛さんたちから後ずさり状況打破の手立てを考えていた。
かざる「もうそろそろ、鬼ごっこも疲れてきたからもう終わりにしようよ」
茨木「……かざる」
かざる「ん?」
彼女を止められないことに自分の無力さを感じているのか。
茨木は自分の手のひらをじっと見つめ、少し悲しそうな表情を浮かべた。
茨木「………直美」
「え、何?」
自分の手のひらから視線を上げ茨木が私の名前を呼んだ。
そして、その呼びかけに答えると茨木が静かに告げた。
茨木「……俺はふたりを連れてここを離れて、撒いたら戻ってくる」
それだけ言うと、茨木は走っていってしまった。
かざる「えー、茨木そんなに鬼ごっこ好きなの?なら、付き合っちゃおうかな♪」
疲れてきたと言いながらも、まったくそんな様子はなく。
汗ひとつも流さない涼しげな表情で、かざるさんは軽い足取りで茨木を追っていく。
やい「どうして茨木さんは逃げるの?…でも、諦めない!」
小さくなっていく茨木の背中と茨木を楽しそうに追っていくかざるさんの背中を見つめながら、やいさんは悲しげに呟く。
たが、健気にも茨木を捕まえる決意は揺らがず、やいさんはかざるさんの後を追って走っていった。
そして、この場に残された家盛さん。
さて、この方を誰が相手にするというのだろうか。
(……って私だよね?)
茨木が何を考えて行動をとったのかは分からないが、私にはとても家盛さんをノックアウトさせられる力は持ち合わせはいない。
じりじりと迫る家盛さんに、ただ後ずさりながら懸命に状況打破の手を思いつく限り浮かべてみる。
しかし、そのどれもが愚策と呼べるもので到底家盛さんを倒すことはできそうにはなかった。
(雅仁様のては借りられないし…だからといって私がここで捕まったら、もしかしたら雅仁様を追いかけることになるかも)
雅仁様を決して嫌いというわけではない。
むしろ、色々とよくしてくれていつも優しく頭を撫でてくれる雅仁様のことを慕っている。
だが、私は側室候補の仲間入りする気はまったくない。
それに、雅仁様を追いかけでもしたら、雅仁様に想いを寄せる女性たちの目の敵にされかねない。
もしかしたら、それだけでは済まされず雅仁様を口説い迫り追いかけた罪を問われてしまうかもしれない。
(……そんな理由で罪を問われるとか、絶対にごめんだ!)
そう思いはするも、じゃりじゃりと砂利を踏む音がやけに耳に響いてくる。
その音に迫られる感覚を覚えてしまい、焦りばかりが募っていく。
(こんな時、清盛さんだったら……)
こっちの世界に来てからずっと見てきた人のことを思い返す。
そして、どんな状況でも諦めたりはしない姿を思い出した。
(こうなったら、一か八か…布越しで家盛さんを突き飛ばして池に落とそう!)
家盛さんには悪いなと思いながらも、今はそれが最善の策だろうと思い私は意を決して家盛さんへと向かって走った。
「家盛さん!ごめんなさいっ!!」
叫ぶように声を張り上げながら、着物越しに家盛さんを突き飛ばそうと手を伸ばすとガッチリと家盛さんの手が私の腕を掴んだ。
(そ、そんなっ!)
私の動きをいとも簡単に予知して、腕を掴む家盛さんは私へと顔を近づける。
(……っ!)
近づけられる顔に目をギュッと固く閉じると、砂利を踏む音がこちらに近づいてきて声が響いた。
???「直美から離れろー!」
家盛「なっ?!」
家盛さんが勢いよく突き飛ばされ、私の体も傾く。
その体を温かなぬくもりが抱きかかえ、私はぬくもりを感じながら目を開いた。
目に映ったのは見知らぬ男の顔。
銀色の髪に深い菫色の瞳をした綺麗な顔立ちの少年。
私を心配そうに見下ろすその視線に、なぜか懐かしい感覚を覚える。
(誰だろ、この人…)
懐かしいと感じても、私はこの男の人に見覚えはなかった。
知らない人物の登場に困惑したのは私だけでなく、地面に座り込んでいる家盛さんも同じようだった。
驚いたような顔で私を抱きかかえる少年を見ている。
そこへ傍観していた雅仁様が口を開いた。
後白河「見ない顔だな」
振り返ってみると、雅仁様はますます愉快そうに笑みを浮かべている。
家盛「………お前は誰だ。直美さんから離れてくれないか」
低く響く声に、びくりと私の肩が震えると銀髪の少年は私を安心させるように強く抱きしめた。
???「大丈夫。僕が直美を守るよ」
(誰?あなたは誰なの?)
私を守ろうとしてくれるけれど、正体の分からない彼に小さな不安が膨らんでしまう。
すると、廊下の先からまた一人思わぬ訪問者が現れた。
巳船「…ん?これは何かあったのか?」
何も事情を知らない巳船さんが包みを持って不思議そうに歩いてきた。
家盛さんと対峙している私の代わりに、雅仁様が巳船さんから包みを受け取りながら状況を説明をした。
巳船「あいつの薬でまた騒ぎが起こっていたのだな。直美も巻き込まれて大変だろう」
後白河「ああ。直美だけではなく、かざるも巻き込まれたようだ」
巳船「助けてはやらないのか?」
後白河「助けてやりたいが、触れただけでおかしくなるのではどうしようもないな」
小さく首を振り息をつくと、雅仁様はちらりと巳船さんに視線を向けた。
巳船「直美が困っているのなら、手を貸すぞ」
後白河「話が早いな。家盛には早く元に戻ってもらわねば困る。やってもらいたいこともある。それに、他の奴らも助けてやらねばならん」
(雅仁様、みんなのこと考えてくれてたんだ)
この状況を愉しそうに傍観しながらも、打開策を考えてくれていたことに嬉しくなって少し胸が熱くなった。
そんな私をよそに、銀髪の少年と家盛さんはにらみ合い続け…そこへ巳船さんが助けに入った。
巳船「お前は下がっていろ」
???「僕だって直美を守れる!」
巳船「ここは私が受けもとう」
巳船さんは、何故かそばの柱にかけてあった箒を手にして家盛さんの前に立つ。
(ほうき?…あれでどうするんだろう)
家盛「巳船さんが相手でも、直美さんとの仲を邪魔するなら容赦しない」
巳船「……」
家盛「俺には直美さんだけなんだ」
(…かざるさんにも似たようなこと言ってたような……)
薬のせいとはいえ、純情で真っ直ぐな家盛さんがこんな発言をするのは心が痛む。
巳船さんがどうやって家盛さんを止めるのかは深く考えないことにして、今は家盛さんが早く元に戻ることを願った。
家盛「……」
家盛さんが真剣な表情へと変え、巳船さんに向かってくる。
その表情は敵を前にした時の清盛さんの表情とよく似ていて、家盛さんの本気を感じ巳船さんの身が心配になりながらその場を見守る。
巳船「…悪いな、家盛」
小さく呟くと、家盛さんの動きを読むように巳船さんが伸びてきた家盛さんの手を交わし、手の持っていた箒を力強く家盛さんめがけて振り回した。
家盛「ぐっ…!?」
巳船さんの振り回した箒が家盛さんの横腹を払い、家盛さんが吹き飛ぶように地面に飛ばされて倒れる。
家盛「っ…なお、み…さんっ……」
家盛さんは私に手を伸ばしながら意識を手放し、地面に手が落ちた。
「い、家盛さん!」
倒れ込んだ家盛さんに少しだけ近くまで駆け寄り様子を見ると、ただ気絶してるだけだと知りひとまず安心した。
後白河「相変わらずの力だな」
巳船「ふふふ。毎日寺の掃除で鍛えられているからな」
「み、巳船さん…す、すごいです!!」
雅仁様は家臣たちを呼びつけ家盛さんに直接触れないように注意しながら丁重に部屋まで運ばせて寝かせた。
続きます(笑
私の前に書かれた方々は1記事で終わらせておりますが、リーシャは案の定、2記事ですww
低脳リーシャの書いた稚拙文で長いお話ですが、「仕方ねえな読んでやるよ」という方はどうぞ。
企画者あいさん 序章
第一走者 更紗さん
第二走者 かざるさん
第三走者 やいさん そして、第4走者が、わたくしリーシャとなります。
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
「よし!今日こそ!」
私はミニョリンさんへのプレゼントを手に、自分に気合を入れるように大きな声をあげて屋敷を出た。
昨日は颯太の恋仲であるミニョリンさんの誕生日の宴が義朝さんのお屋敷で開かれた。
しかし、私はその宴の席に招待されたものの、道に迷って遅れて到着し、
ある光景を目にして逃げるように清盛さんの屋敷へ帰ってきてしまったのだ。
(…びっくりして思わず逃げちゃったけど……気づかれてたかな?)
昨日自分が目にした光景をまた思い出してしまい、その光景を振り払うように私は首を左右に大きく降って義朝さんの屋敷へと向かった。
義朝さんの屋敷まであともう少しという辺りまで来た頃…。
耳に複数の足音と悲鳴のような声が聞こえてきて、私は足を止めた。
(なんだろう…。何か騒ぎでも起こったのかな?)
また悪さをする野盗でも出たのだろうか。
そう思うとまた厄介事に巻き込まれて清盛さんたちに迷惑がかかるかもしれない。
(私が首を突っ込むとロクなことがないから、ひとまず隠れたほうがいいかな)
とにかく隠れようと辺りを見回して隠れる場所を探していると、近づいて来る足音とともに聞き覚えのある声が聞こえてきた。
(あれ?……この声って)
そう思った途端…私の横を猛スピードであるものが駆け抜けていった。
「うわっ…!」
一瞬突風が吹いたかのように風が砂を巻き上げた。
頬についた砂を手でほろいながら、まぶたを開き横切っていったものへと視線を向けると見知った人の後ろ姿が見えた。
「え…か、かざるさん?」
砂を巻き上げるほどの猛スピードで駆けていったのは、どうやらかざるさんのようだ。
その脚力はオリンピック選手も驚愕するほどのもので、私は目を瞬かせながら小さくなる背中を見つめていた。
(でも、あんなに急いでどうしたんだろう?)
すると、また複数の足音が近づいてきた。
家盛「待ってくれ、かざるさん!!俺にはかざるさんしかいないんだ!!!」
(……告白?)
白昼堂々と告白をする家盛さんの声が澄んだ空に響く。
訳の分からないまま過ぎ去っていった家盛さんの後ろ姿を見ていると…
やい「家盛さん、逃げないで!!!」
今度は悲鳴のような苦しみを帯びた声が響いてきた。
よく分からないけれど、かざるさんを家盛さんが追い、家盛さんをやいさんが追いかけているらしい。
だけど、その光景はあまりに今の私には理解できなかった。
「えーっと……これってつまり………三角関係?」
起きて数時間しか経っていない、まだ少し頭が冴えない私が導き出した答えはその4文字だった。
「…あ、でもかざるさんは鳥羽様の恋人なんだよね?」
じゃあ、四角関係なのか…そう考えに至るも、家盛さんから逃げるかざるさんは必死な様子で。
家盛さんは嫌がる相手に無理に答えを迫ったりするのだろうか。
そんな疑問がたくさん浮かぶ中、ふとある言葉が浮かび上がった。
「もしかして…修羅場に遭遇してしまった?」
なんの根拠もなく導き出された言葉。
だけど、今の私には彼女たちを見てそれ以上の答えを導き出せなかった。
単に鬼ごっこをしているとは到底思えないし、走っている3人から真剣さが感じられたのだから。
もしかしたら、あれは鬼ごっこのように見えて修羅場の一場面だったのかもと我ながら乏しい予想しかできない。
(あの三人がどういう関係なのか気になるけど………)
「…ま、いっか♪」
3人のことがかなり気になる私ではあったが、首を挟まないほうがいい。
トラブルメーカーな私はそう直感し、再び義朝さんの屋敷に向かおうとするとすっと突然目の前に誰かが立った。
「うわっ!?……って茨木!」
急に目の前に立たれ声を上げて驚いた私を茨木が悪戯な笑みを浮かべて見つめていた。
「もう…びっくりしたでしょ」
茨木「……直美」
「ん?」
茨木「……かざるを見なかったか?」
茨木の言葉に少し耳を疑いながら、私は答えに迷ってしまう。
(茨木が人を見失うなんて珍しい……。というか、茨木…今かざるさんのところにいったら余計に状況が悪くなるんじゃ…)
私の中では3人がただの鬼ごっこをしているようには見えず、茨木にかざるさんを見かけたことを言うのを躊躇ってしまう。
きっと茨木はかざるさんの護衛をしていて、何らかの事情でかざるさんを見失い探しているのだろう。
けど、あの修羅場のような鬼ごっこを見たら、主である鳥羽様に報告することになってしまう。
(茨木…困るよね……)
茨木の顔をじっと見つめながら、口をつぐんでいると茨木が口を開いた。
茨木「……かざるを…」
「……?」
茨木「……家盛がかざるを…追っていくのを見かけなかったか?」
「…!?」
私の反応を見て茨木は後ろを振り返って、かざるさん達が走っていった方角を見つめた。
「茨木…知ってたんだ」
茨木「………?」
沈んだ声で茨木の背中に声をかけると、茨木が不思議そうな顔をして振り返った。
「かざるさん…きっと事情があると思うんだ。だから、鳥羽様には……」
かざるさんは誰よりも鳥羽様のことを理解していてお慕いしている。
彼のために何でもするその姿は、女性の私から見ても惚れ惚れしてしまうほどなのだから。
あの状況はきっと何か理由あってのことだろう、そう思った。
茨木「…………違う」
私の言葉を否定するように茨木が首を横に振りながら言うと、私は顔を上げた。
「え?」
茨木「………かざるは…巻き込まれただけだ」
「巻き込まれた?」
よく状況が理解できず、首をかしげると茨木はゆっくりとミニョリンさんの誕生日の宴の時に起こったことを話し始めた。
ひと通り、茨木が淡々とかざるさん達の身に起こったことを話してくれて私はやっと状況を把握してきた。
「じゃあ、家盛さんとやいさんはその……変な薬のせいでおかしくなっちゃったんだね」
確認を取るために茨木に尋ねると、そうだと茨木は頷いてみせた。
(……其一さんが持ってくる薬ってロクなものがないなぁ…)
話によれば…
第1にミニョリンさんが其一さんから貰った薬を飲んで鬼嫁化。
颯太にアキレス腱固めを決めたり、止めに入った家盛さんをラリアットで気絶させるというプロレスラー顔負けの腕前を披露したそうだ。
颯太相手にタップするまで技を止めなかったらしいが、技をかけられる度にミニョリンさんの愛を颯太は噛み締めていたらしい。
そんなことから、颯太のドM疑惑が浮上している。
そして第2の被害者はノリちゃん。
其一さんが恋人の更紗さんに小瓶の中身を飲ませようとして、それを更紗さんが抗った結果。
手に弾かれた小瓶が宙を舞い、瓶が逆さになって中の液体がちょうど更紗さんを訪ねて来たノリちゃんに降りかかったらしい。
その後、其一さんの目の前で、更紗さんを口説き迫ったという話だ。
その様子を見ていられず、其一さんが更紗さんを連れ出し、そこへ丁度やってきた家盛さんを足止めに使ったらしい。
「……で、家盛さんと清盛さんのおかげでノリちゃんを沈めたはいいけど、今度は家盛さんがおかしくなったってこと?」
茨木「………そういうことだ」
第三の被害者、家盛さんは直接中身を飲んだわけではないらしいが急におかしくなったらしい。
様子がおかしくなった家盛さんはかざるさんに、「あなたと出会うために、俺は生まれてきたのだと思う」だの
「めいど服だの、女郎だの、妙な格好をさせて愛でる法皇よりも、俺を選んで欲しい。俺は生涯をかけてあなたを愛することを誓う」
と、聞いてて歯が浮くような口説き文句を口にし、かざるさんはそれに耐え切れずに逃げ出したそうだ。
「だけど、やいさんまでどうして…」
茨木「……かざるが」
「え?」
よく意味が分からずに茨木の答えを待っていると、茨木が小さく息を吐いてから一気に告げた。
茨木「…かざるが八雲の手を握らせて…家盛と目を合わさせたら………ああなった」
「…は…はい?」
茨木の説明に一度では理解でできずに聞き返すが、茨木はこれ以上語らないといった顔をする。
(…茨木の話を聞く限り、やいさんがおかしくなったのはかざるさんが引き金…って言ってるように聞こえるんだけど)
とにかく、第4の被害者の隣に住むやいさんは、ノリちゃんの手を握り家盛さんと目が合わせられておかしくなったらしい。
その結果、先ほど私が目にした三角関係と誤解してしまうような鬼ごっこが開始されたという。
(…とはいえ、口にせずとも効力をもたらすとは……)
「其一ドラッグ……恐るべし」
茨木「………?」
聞き慣れない言葉に茨木が首をかしげると、私はふふっと小さく笑いながら堪える。
「其一さんが持ってくる薬のことだよ。まー其一さんが作ったわけじゃないけどね。作ったのなら、其一散薬とか言いたくなるけど」
茨木「………」
茨木が更に眉をひそめて、私の言葉の意味を理解しようとしていておかしくなって笑った。
「でも、やっぱり、私は首を突っ込まなくて正解だったね!」
満面の笑みで微笑むと、茨木がやんわりと笑みを返す。
かざるさん達の状況を理解しながらも、まったく手を貸そうと思わない私だがおそらく私では手に負えない。
むしろ、状況悪化させかねないだろうと予想できたのでほとぼりが冷めるまでそっとしておくのが一番だと考えに至った。
しかし、時に運命というのは残酷なもので。
私が避けようとも、事件は向こうから近づいて来る。
茨木「……っ!」
(ん?何だろう…すごい足音が聞こえてくる)
二人に忍び寄る魔の足音ということに気づかず、私と茨木は不審に思いながら足音のする方へと視線を向けた。
すると、視線の先からはかざるさん、家盛さん、そしてやいさんが物凄い勢いでこちらに向かってくるのが見えてきた。
そのあまりの勢いに、思わず後ずさりしてしまいながらも、私はある違和感に気がついた。
(…あれ?)
茨木も私同様に異変に気がついたようで、首をかしげているのが横目に見える。
(………なんかすごく嫌な予感がする)
こういう嫌な勘ほどよく当たってしまうだけあって、迫ってくるかざるさん達に嫌な予感が頭の中を覆い尽くしていった。
「……ね、ねぇ……かざるさんって正気……なんだよね?」
迫るかざるさんたちから少しずつ後ずさりながら茨木に問いかけると、茨木は表情を崩さず何も答えない。
「家盛さんから逃げてるはずのかざるさんが、家盛さんと並んで走ってるんだけど……」
茨木「…………」
茨木に答えを急かすように言うも、茨木は視線をかざるさん達に向けたまま何も答えない。
「やいさん…家盛さん追いかけてたけど、やいさんもかざるさんと家盛さんと仲良く横に並んで迫って来てるんですけど!」
徐々に距離を詰めてくるかざるさん達に焦りを感じてか、言葉に力が入り早口になった。
冷や汗が頬を伝い、私は茨木の答えを待ちながら息を呑むと、ぐいっと茨木が急に私の手を掴んだ。
茨木「……逃げるぞ」
「え?!」
真剣な顔つきになった茨木が私の手を引いて、かざるさん達とは反対側に走っていく。
すると、後ろから声が響いてきた。
かざる「待って、茨木!」
やい「待ってください!茨木さん!!」
家盛「直美さん!俺の愛を受け止めてくれ!」
それぞれ後ろから声が飛び交ってきて、私は茨木の手を離すと全力で走り始めた。
「ちょっと!家盛さんはかざるさんに惚れてるって話じゃなかったの!」
茨木「……そのはずだ」
茨木も少し恐怖を感じているのか、必死な顔つきで私の隣を走っている。
息を乱しながら、彼らからどう逃げ切ればいいのか、私は必死に思考を巡らせていた。
(かざるさんまで変にしちゃうなんて……あの後いったいかざるさんの身に何が……)
私の前を過ぎ去った後、かざるさんの身に何があったかは知らないが、絶対に捕まってはならないということだけはわかっていた。
「茨木!」
茨木「……」
私の声に茨木が横を向くと、私は追いかけてくるかざるさん達をちらっと振り向いて見ると口を開いた。
「かざるさんとやいさんには悪いけど、ノリちゃんの時みたいにできないの?」
私の言葉に信じられないのか、驚いた顔をした茨木が慌てたように首をぶんぶんと振る。
「けど、捕まったらおしまいだよ!其一ドラッグの効力は絶大で、感染力大だよ!」
家盛さんのように愛の言葉を叫びながら走るのだけは勘弁して欲しい。
しかも、だれ相手に惚れてしまうか分からないというのがまた恐ろしいところで。
話によれば、見た相手だそうだが、それでも薬に操られるまま誰かを想いを寄せて追いかけるのはごめんだ。
そう思い彼女たちのように変貌しまいと必死に目で訴えかけると、茨木は足を動かしながら俯いてぼそっと告げた。
茨木「……かざるを…傷つけたくない」
「……茨木」
主の大切な人を傷つけたくない思いからか。
それとも、自分自身、かざるさんを傷つけたくないと思っているからか。
茨木の寂しさを含んだ声音と、俯いた横顔に茨木のかざるさんへの思いを知り、これ以上の説得は無意味だと判断する。
(じゃあ…一体どうしたら!)
このまま逃げていても、いつかは体力が尽きて捕まるのは目に見えている。
だけど、かざるさんややいさんはともかく、家盛さんを力づくで止めることはできそうにない。
迫る足音に危機感と焦りを感じながら、ただがむしゃらに走り続けているとぞぞっと悪寒を感じだ。
かざる「へぇ~直美ちゃん結構足早いね~。茨木に付いていけるなんてびっくりだなぁ♪」
(うわっ!?いつの間に!!!)
考えを巡らせている間に私たちへと着実に距離を縮めていたかざるさん達がもうすぐ側にいるのに気がつく。
やい「茨木さ~ん、逃げないで!私と一緒に来てください!!」
家盛「直美さん、絶対に逃がさない」
(ひ、ひええ~っ。家盛ファン卒倒するだろう言葉だけど、今はただ怖い言葉にしか聞こえないよー!!)
茨木へ向けられるふたりの言葉はともかく、私にとって鋭い眼差しで私を射止める家盛さんの視線の方が恐ろしい。
捕まったら最後、捕まれば家盛さんに迫られるだけではなく、自分すらおかしくなってしまう。
そんな考えを巡らせているうちに、手の伸ばしたら掴まれてしまうんじゃないかというほどに距離が迫る。
私はもうダメだと、息を切らし始めてそう思って目を閉じようとしたその瞬間…私の足がふわりと宙に浮いた。
「え?…うわっ!?」
何事かと思って閉じかけた目を見開くと、私は茨木に抱きかかえられているのがわかった。
「…っ、ちょっと、茨木!」
茨木「………少しだけ…」
「え?」
茨木の声が足音などの雑音で聞き取れずにいると、茨木は私の抱えたまま更にスピードを上げていった。
茨木の足に誰もついてこれないのか、後ろから聞こえていたかざるさんたちの声が徐々に掠れ……聞こえなくなっていった。
私を抱えたまま茨木がやってきたのは、森の入口近くにある綺麗な川がある場所だった。
「あ、ありがとう…茨木」
やっと茨木に降ろしてもらい、少し気恥ずかしくて頬を熱くなるのを感じながらお礼を告げる。
茨木「……」
茨木はただ無言で頷いて見せると、綺麗な水を手ですくって一口含んだ。
木々から射し込む太陽の光が、水面をきらきらと輝かせている。
走り疲れて喉の渇きを癒したい私は、その光に引き寄せられるように近づいていった。
「…っはぁー」
茨木を真似て両手で水をすくって口に含むと、私は息を大きく吐いた。
そして、くるりと振り返って茨木を見た。
「茨木、有難う。おかげで、逃げ切れたよ」
茨木「……礼はいらない」
もう一度お礼を告げると、いつものように素っ気ないように返される言葉だけど、茨木に助けてもらったからか、なんだかそんな茨木も可愛く思えた。
「…それにしても、かざるさんまで其一ドラッグの被害に。どうしたらいいんだろう?」
茨木「……かざるがああなった以上……俺は主に意見を仰ぐ」
私は茨木の考えに賛同し、大きく頷いた。
「私もそれがいいと思う。鳥羽様なら、きっといい解決策を出してくれるよ」
これからのことが決めり、ほっと一安心しながらもかざるさん達の身を案じてしまう。
(其一さんの用意したものだから、体に害はないと思うけど。あれだけキャラ変わっちゃうと心配になるよね)
一刻も早くかざるさん達を元に戻してあげなくてはという思いに、事件解決へのやる気が出てきた。
ガサッ――
茨木とひと時の安らぎの時を邪魔するかのように、近くの茂みが揺れた。
茨木は私を庇うように前に立ち刀に手を添えると、二つの影が見えた。
其一「あ、やっぱりアンタたちか」
「あーー!!!」
更紗さんの手を引いて、茂みから姿を現した其一さんに私は指をさして叫ぶ。
その姿に、くすくすと更紗さんの上品に笑う声がして私ははっと我に返る。
(うわっ…思いっきり叫んじゃった…)
思わず叫んでしまったことを恥ずかしく思い、頬を赤く染めると其一さんがにやにやとしながら側に寄って来た。
其一「かなり汗かいてるみたいだけど、どうしたの?」
全てを知っているのにあえて知らないふりをしているような口ぶりに、私はむっとしながら声を上げた。
「どうしたか知ってくせに……!こうなったのも其一さんのせいなんですから…其一さん、責任とってください!」
其一さんの態度に少し苛立ちながら、其一さんに責任を問うと更紗さんの手を離してやれやれと大げさに大きなため息をついた。
其一「どうにかしてやりたいけど、あの薬のことは俺もよく知らないんだよね」
茨木「…しばらく経てば効果は切れる…そう言ったはずだ」
茨木が少し低くした声で呟くように告げると、くくっと其一さんは笑った。
其一「そんなこと言ったっけ?」
(……其一さん責任取る気はまったくないみたいだなぁ…。鳥羽様でもどうしようもできない代物だったらどうしよう……)
其一「それよりさー」
茨木へと向けた視線がちらりと私に向けられると、嫌な予感を過ぎらせるような何かを目論んだ笑みを其一さんが浮かべた。
其一「直美……アンタさ…、昨日……見てたよな?」
「……っ!」
更紗「え?」
其一の言葉に思わず目を見開き息を飲む。
だけど、更紗さんは何の話だかよく分からないようで首を軽く傾けていた。
其一「裏庭で俺と更紗を見て、逃げただろ」
更紗・直美「「ええええ!?」」
二人同時に発せられた声が森に響いていくと、私と更紗さんはお互いに顔を見合わせた。
そして、二人して顔を赤くして視線をすっと逸らす。
其一「まーアンタのことだから、照れて顔真っ赤にして逃げたんだろうけど。今みたいに」
にやりと口角を上げながら、頬を赤く染めた更紗さんの腰に手を回してぐいっと引き寄せる。
更紗「ちょ、ちょっと!」
愛らしく頬を染めたまま、抵抗しようとする更紗さんに満足げな笑みを浮かべながら其一がその手を離そうとしない。
其一「…可愛い更紗の声を聞いたんだから…その責任アンタも取ってもらうよ」
「…は?」
恥ずかしくて俯いていた視線が上がり、私の頬の熱も一気に覚めるようだった。
その一言に嫌な予感がしたのはもちろん言うまでもない。
其一「というわけだから、この騒動はアンタがどうにかしなよ」
「えっ!?」
予想していた通りの言葉であったが、驚きの声をあげてしまう。
茨木は黙ってその場を見守るように傍観し、更紗さんは其一さんに抱かれながら少し呆れた様子で其一さんを見上げていた。
「そ、…そもそもっ!あ、んなところで、あのようなことをしてた其一さんに責任がっ」
其一「あんなことって?」
「……っ」
私の言葉を遮るように口にした其一さんに私は口をつぐんだ。
押し黙る私に其一さんはどこか面白がっている様子で、私は悔しくなって頬を膨らませる。
「だっ…だから……そ、そのく…くち…っ」
其一「くちがなに?」
「っ――!もういいです!」
最後まで結局言い切れず、其一さんの思惑通りになってしまったことに拗ねたように背を向ける。
すると、背後から心配そうにする更紗さんの優しい声音が聞こえてきた。
更紗「其一さん!直美ちゃんをあまりからかうのやめなよ。しかも、責任まで押し付けたら可哀想でしょ」
(…更紗さん、優しい人だなぁ)
其一さんを恨めしく思う気持ちを押しつぶしながら、更紗さんの言葉に心が穏やかになっていくのを感じた。
だが、その穏やかさはすぐ其一さんの言葉によって消されてしまった。
其一「直美はからかうと面白くて飽きないよ。更紗も今度からかってみたら?結構、ハマるかもよ?」
(ハマるかもよ?って私はからかい人形じゃないって!)
あまりに苛立つ言葉を耳にして、ぎゅっと自分の着物を掴んだ。
(いつも口で言い負かされるけど、今日こそ言ってやる!)
打倒其一を胸に、私は勢いよく振り返って口を開いた。
「其一さんの薬が元凶でこんなことになってるんですよ!」
怒りを含んだ声でいうも、其一さんはけろっとした顔で言葉を返す。
其一「あのさ、前から言いたかったんだけど。俺は『きいつ』じゃなくて『きいち』だから」
「今はそんなことどうでもいいです!」
其一「いや、どうでもいいって。俺の名前はどうでもいいわけ?」
怪訝そうにする其一さんだけど、私はじっと其一さんを睨むように見る。
すると、其一さんは呆れたようにため息をついた。
其一「まー俺の名前はもう『きいち』でも『きいつ』でもどうでもいいけど。更紗の声を聞いた責任は取ってもらわないとね。偶然とはいえ聞かれるのは面白くない」
更紗「……え」
更紗さんが其一の言葉にハッとして見上げると、其一さんが見たことのないような優しい眼差しで更紗さんを見下ろしていた。
(其一さんって更紗さんの前だと、あんな表情もするんだ……)
見たことのない其一の穏やかな一面に、なんだかこみ上げてきた怒りが一気に冷めてしまった。
ふたりの仲を見て、なんだか其一さんだけを責めるのも気が引けたのかもしれない。
其一「俺もあんなところで更紗に手を出したのがいけなかったわけだし、一応手は貸すけど、まーあまり当てにしない方がいいだろうな」
「…いえ、大いに当てにしたいんですけど」
優しい眼差しが急にからかうような視線に変わり、その視線が私に向けられて私は眉間に皺を寄せた。
其一「今度はもう少し人に見られないところじゃないとダメだな。案外、外は声が響くし」
更紗「なっ…!」
其一「あー家の中でも声が響くってのは同じか」
更紗「……!!」
ぺらぺらと言葉を重ねる其一さんに、慌てて止めに入る更紗さんの手を其一さんが掴んだ。
更紗「変なこと言わないでよ!誤解されちゃうでしょ!!」
照れくさそうにしながら更紗さんが其一さんに訴えかけると其一さんは更に腰を引き寄せて顔を近づけた。
其一「外は嫌だとか言いながら、そんな反応じゃなかったと思うけど?」
更紗「……っ」
かあっと顔を真っ赤にした更紗さんを見下ろし、くくっと笑う其一に茨木が小さく息を付きながら私の手を取った。
「…茨木?」
茨木「…行こう……。主は後白河天皇のところだ」
「?」
茨木が強引に手を引くので、少し驚き戸惑いながら小さく頷くと後ろから声がした。
其一「まあ、何か分かったら教えるから頑張ってよ」
更紗「茨木、直美ちゃん、またね!」
ふんわりと笑って手を振る更紗さんと、にやりと口角を上げている其一さんに手を振り、私はふたりの元を去っていった。
そして、やってきたのは鳥羽様がいるという御所。
茨木と門をくぐって庭へと進むと、カーンと規則的にししおどしの音が響き、木々がさわさわと音を立てる。
心地よい音に耳を澄ませながら、鳥羽様の姿を探し歩いていると廊下先から優雅に歩く姿を見つけた。
「あ、雅仁様!」
彼の姿を目にして思わず声をかけると、雅仁様は私に気づいてふっと笑みを浮かべた。
庭先から駆け寄る私を見下ろし、雅仁様は私に口を開いた。
後白河「直美、ちょうど良かった」
「え?」
(ちょうど良かったって…雅仁様、何か御用なのかな?)
首を傾げながら雅仁様の言葉を待っていると、雅仁様の表情が徐々に曇っていった。
(あ…れ?なんか、すごく不機嫌そう…)
急に表情が変わったことを不思議に思っていると、雅仁様が不機嫌そうな声を響かせた。
後白河「清盛はどうしている」
「え?清盛さんですか?」
(もしかして、用って私じゃなくて清盛さん?)
ひとり考えていると、雅仁様は話を続けていった。
後白河「昨晩、あいつに早々に参内するようにと文をやったのだが、いつまでたっても来ないのだ」
(あー……私が屋敷を出る前はまだ寝てたような…)
屋敷を出る前のことを思い出しながら、雅仁様から視線をさりげなく逸していく。
すると、雅仁様はまだ文句が言い足りないようで更に言葉を続けた。
後白河「もう陽が高く昇っているというのに、あいつはいつになったら来るつもりだ」
「えーっと……おそらく、そろそろ目を覚ます頃じゃないかと」
そう答えると、雅仁様は不満そうに眉をひそめて私を見下ろした。
そして、大きくため息をつき、心配そうな声で呟くように言う。
後白河「それに…あいつの元に文を持って行かせたかざるも戻ってきていない。もしや、清盛に何かされたのではないんだろうな」
「えっ!」
(そ、そうなの?)
帰ってきた清盛さんの様子がどこかおかしかった気がしたけど、もしかしてかざるさんと何かあったのでは?
そう思うと私の胸がざわめき始めた。
清盛さんと別に恋人同士というわけではない。
ただ、事情があって清盛さんの屋敷に住まわせてもらっている身。
(……かざるさんと何があろうと私には関係ない)
沈んでいく気持ちと清盛さんへの気持ちから顔を背けたくなり、私は小さく首を振り思いを振り切る。
すると、にやりと口端を上げた雅仁様と目があった。
後白河「あいつに限ってかざるに手は出さないだろう。だが、そんなに心配なら、ずっと清盛のそばにいてやればいいだろう?」
「…っ……別に心配はしてません!」
後白河「そうか?かざると清盛の話をした途端に表情が陰った気がしたのだが」
「…かざるさんに清盛さんが迷惑かけたら困ると思っただけです」
これ以上、心を探らせないようにと顔をそらすと雅仁様はやや呆れ気味のため息をついて庭へと降りてきた。
後白河「…相変わらず、素直ではないな」
「…私はいつも素直です」
ちらっと雅仁様の顔を覗き見て言うと、雅仁様は私の心を見透かしているように妖艶な笑みを浮かべていた。
後白河「それより…なぜ、お前がここにいる、茨木。お前はかざるの護衛を任されていたはずだろう」
私に向ける眼差しとは打って変わり、厳しい眼差しを向ける。
茨木はすっと私の前に出て、これまでの経緯を雅仁様に説明した。
後白河「なるほどな…。其一の薬でかざるがそんなことになっているのか」
雅仁様は愉しそうににやにやと何かを企むように笑う。
「…愉しそうですね…」
後白河「ああ。これ以上に愉しいことはないな。今のかざるを見たあいつがどんな反応をするか楽しみだ」
「あいつ?」
首をかしげると、ガサッと茂みから音がした。
驚いて振り返ると、思いもよらない人たちの姿があった。
かざる「茨木み~っけ!」
やい「茨木さん!もう逃がしませんからね!」
家盛「直美さん、もう観念して欲しい」
(また出た!?)
せっかく逃げ切ったというのに、こうも簡単に見つかるなんて…。
もしかしたら、薬には惚れた相手の匂いを嗅ぎ分けるようになる効果もあるのか。
それとも…野生の勘なのか。
もはや、彼らがどうやって私たちを探し当てたのかはどうでもいい。
今はこの場を切り抜けることが先決だ。
そう思って私は後ずさりながら雅仁様に助けを乞おうと、雅仁様に手を伸ばした。
(あ…あれれ?)
しかし、その手は雅仁様の体に触れることはなく。
不思議に思って振り返ると、先程まですぐそばにいたはずの雅仁様の姿がそこには既になかった。
慌てて辺りを見渡し雅仁様の姿を探すと、雅仁様は縁側に上がって私を見下ろしていた。
「ま、雅仁様!助けてください!!」
後白河「俺があいつらのように誰かを追い掛け回すのは、流石にまずいだろう?」
「…そりゃ、そうですけど」
(口説き文句叫びながら雅仁様が町中駆け走ったら、そりゃ京に激震が走るわ)
雅仁様が口説き文句を叫びながらひとりの女性を追う姿を想像する。
(……あー…誰もがこの世の終わりを見たかのような気分になるな…きっと)
危機が迫っているにもかかわらず、どうしてこんなにも余裕に想像を膨らませるのだろう。
そう思いながらも、私の頭の中には雅仁様の残念な姿を嘆き泣き崩れる女性たちと、世界の終わりだと叫び平安時代の幕引きを悟る民の姿が浮かんだ。
(…雅仁様だけは守らないと…。まー大抵、こういう時にその大役を背負う人は限られてくるんだけど)
雅仁様に火の粉が降り注がぬようにと、願いながら迫り来る家盛さんたちから後ずさり状況打破の手立てを考えていた。
かざる「もうそろそろ、鬼ごっこも疲れてきたからもう終わりにしようよ」
茨木「……かざる」
かざる「ん?」
彼女を止められないことに自分の無力さを感じているのか。
茨木は自分の手のひらをじっと見つめ、少し悲しそうな表情を浮かべた。
茨木「………直美」
「え、何?」
自分の手のひらから視線を上げ茨木が私の名前を呼んだ。
そして、その呼びかけに答えると茨木が静かに告げた。
茨木「……俺はふたりを連れてここを離れて、撒いたら戻ってくる」
それだけ言うと、茨木は走っていってしまった。
かざる「えー、茨木そんなに鬼ごっこ好きなの?なら、付き合っちゃおうかな♪」
疲れてきたと言いながらも、まったくそんな様子はなく。
汗ひとつも流さない涼しげな表情で、かざるさんは軽い足取りで茨木を追っていく。
やい「どうして茨木さんは逃げるの?…でも、諦めない!」
小さくなっていく茨木の背中と茨木を楽しそうに追っていくかざるさんの背中を見つめながら、やいさんは悲しげに呟く。
たが、健気にも茨木を捕まえる決意は揺らがず、やいさんはかざるさんの後を追って走っていった。
そして、この場に残された家盛さん。
さて、この方を誰が相手にするというのだろうか。
(……って私だよね?)
茨木が何を考えて行動をとったのかは分からないが、私にはとても家盛さんをノックアウトさせられる力は持ち合わせはいない。
じりじりと迫る家盛さんに、ただ後ずさりながら懸命に状況打破の手を思いつく限り浮かべてみる。
しかし、そのどれもが愚策と呼べるもので到底家盛さんを倒すことはできそうにはなかった。
(雅仁様のては借りられないし…だからといって私がここで捕まったら、もしかしたら雅仁様を追いかけることになるかも)
雅仁様を決して嫌いというわけではない。
むしろ、色々とよくしてくれていつも優しく頭を撫でてくれる雅仁様のことを慕っている。
だが、私は側室候補の仲間入りする気はまったくない。
それに、雅仁様を追いかけでもしたら、雅仁様に想いを寄せる女性たちの目の敵にされかねない。
もしかしたら、それだけでは済まされず雅仁様を口説い迫り追いかけた罪を問われてしまうかもしれない。
(……そんな理由で罪を問われるとか、絶対にごめんだ!)
そう思いはするも、じゃりじゃりと砂利を踏む音がやけに耳に響いてくる。
その音に迫られる感覚を覚えてしまい、焦りばかりが募っていく。
(こんな時、清盛さんだったら……)
こっちの世界に来てからずっと見てきた人のことを思い返す。
そして、どんな状況でも諦めたりはしない姿を思い出した。
(こうなったら、一か八か…布越しで家盛さんを突き飛ばして池に落とそう!)
家盛さんには悪いなと思いながらも、今はそれが最善の策だろうと思い私は意を決して家盛さんへと向かって走った。
「家盛さん!ごめんなさいっ!!」
叫ぶように声を張り上げながら、着物越しに家盛さんを突き飛ばそうと手を伸ばすとガッチリと家盛さんの手が私の腕を掴んだ。
(そ、そんなっ!)
私の動きをいとも簡単に予知して、腕を掴む家盛さんは私へと顔を近づける。
(……っ!)
近づけられる顔に目をギュッと固く閉じると、砂利を踏む音がこちらに近づいてきて声が響いた。
???「直美から離れろー!」
家盛「なっ?!」
家盛さんが勢いよく突き飛ばされ、私の体も傾く。
その体を温かなぬくもりが抱きかかえ、私はぬくもりを感じながら目を開いた。
目に映ったのは見知らぬ男の顔。
銀色の髪に深い菫色の瞳をした綺麗な顔立ちの少年。
私を心配そうに見下ろすその視線に、なぜか懐かしい感覚を覚える。
(誰だろ、この人…)
懐かしいと感じても、私はこの男の人に見覚えはなかった。
知らない人物の登場に困惑したのは私だけでなく、地面に座り込んでいる家盛さんも同じようだった。
驚いたような顔で私を抱きかかえる少年を見ている。
そこへ傍観していた雅仁様が口を開いた。
後白河「見ない顔だな」
振り返ってみると、雅仁様はますます愉快そうに笑みを浮かべている。
家盛「………お前は誰だ。直美さんから離れてくれないか」
低く響く声に、びくりと私の肩が震えると銀髪の少年は私を安心させるように強く抱きしめた。
???「大丈夫。僕が直美を守るよ」
(誰?あなたは誰なの?)
私を守ろうとしてくれるけれど、正体の分からない彼に小さな不安が膨らんでしまう。
すると、廊下の先からまた一人思わぬ訪問者が現れた。
巳船「…ん?これは何かあったのか?」
何も事情を知らない巳船さんが包みを持って不思議そうに歩いてきた。
家盛さんと対峙している私の代わりに、雅仁様が巳船さんから包みを受け取りながら状況を説明をした。
巳船「あいつの薬でまた騒ぎが起こっていたのだな。直美も巻き込まれて大変だろう」
後白河「ああ。直美だけではなく、かざるも巻き込まれたようだ」
巳船「助けてはやらないのか?」
後白河「助けてやりたいが、触れただけでおかしくなるのではどうしようもないな」
小さく首を振り息をつくと、雅仁様はちらりと巳船さんに視線を向けた。
巳船「直美が困っているのなら、手を貸すぞ」
後白河「話が早いな。家盛には早く元に戻ってもらわねば困る。やってもらいたいこともある。それに、他の奴らも助けてやらねばならん」
(雅仁様、みんなのこと考えてくれてたんだ)
この状況を愉しそうに傍観しながらも、打開策を考えてくれていたことに嬉しくなって少し胸が熱くなった。
そんな私をよそに、銀髪の少年と家盛さんはにらみ合い続け…そこへ巳船さんが助けに入った。
巳船「お前は下がっていろ」
???「僕だって直美を守れる!」
巳船「ここは私が受けもとう」
巳船さんは、何故かそばの柱にかけてあった箒を手にして家盛さんの前に立つ。
(ほうき?…あれでどうするんだろう)
家盛「巳船さんが相手でも、直美さんとの仲を邪魔するなら容赦しない」
巳船「……」
家盛「俺には直美さんだけなんだ」
(…かざるさんにも似たようなこと言ってたような……)
薬のせいとはいえ、純情で真っ直ぐな家盛さんがこんな発言をするのは心が痛む。
巳船さんがどうやって家盛さんを止めるのかは深く考えないことにして、今は家盛さんが早く元に戻ることを願った。
家盛「……」
家盛さんが真剣な表情へと変え、巳船さんに向かってくる。
その表情は敵を前にした時の清盛さんの表情とよく似ていて、家盛さんの本気を感じ巳船さんの身が心配になりながらその場を見守る。
巳船「…悪いな、家盛」
小さく呟くと、家盛さんの動きを読むように巳船さんが伸びてきた家盛さんの手を交わし、手の持っていた箒を力強く家盛さんめがけて振り回した。
家盛「ぐっ…!?」
巳船さんの振り回した箒が家盛さんの横腹を払い、家盛さんが吹き飛ぶように地面に飛ばされて倒れる。
家盛「っ…なお、み…さんっ……」
家盛さんは私に手を伸ばしながら意識を手放し、地面に手が落ちた。
「い、家盛さん!」
倒れ込んだ家盛さんに少しだけ近くまで駆け寄り様子を見ると、ただ気絶してるだけだと知りひとまず安心した。
後白河「相変わらずの力だな」
巳船「ふふふ。毎日寺の掃除で鍛えられているからな」
「み、巳船さん…す、すごいです!!」
雅仁様は家臣たちを呼びつけ家盛さんに直接触れないように注意しながら丁重に部屋まで運ばせて寝かせた。
続きます(笑