思い返せば、私が幼少のみぎり、うちの母が買ってくれる本は、3文字タイトルが多かったような気がします。
 『小公子』、『鉄仮面』、『八犬伝』……。(『小公女』が入っていないのが母のチョイスの面白いところ)
 そして、挿絵が楽しそうじゃないので、買ってくれるというのを泣いて拒んだ『巌窟王』。

 そういや、同じクラスの女の子が『ナイチンゲール』とかの伝記を買い与えられていた時、私が買ってもらったのは『ナポレオン』と『ノーベル』でした。
 ナポレオンはフランスの皇帝にまでなりながら、失脚して流刑地で死亡した英雄、ノーベルはダイナマイトで巨万の富を手に入れながら、それが戦争の道具になるという苦悩の中で亡くなっていった人です。
 あと、挿絵にだまされて(きれいな女の人だった)買ってもらってしまった『悲しみの王妃』。ツバイクの原作が子供向けにリライトされていたもので、主人公はフランス革命で断頭台に消えたマリー・アントワネットでした。
 大人になった私が、出世したいとか、お金になりたいとか、玉の輿に乗りたいと思わないからって、そらあ無理がないだろうってもんですぜ。ママン。

 まあ、そんなこんなで成長した私は、深夜アニメの『巌窟王』と出会いました。
 古くは黒岩涙香の流麗な訳で紹介された、アレクサンドル・デュマ御大の名作です。
 なんでも、このアニメの監督は『虎よ!虎よ!』をアニメ化しようとしたらハリウッドに映像化権を買われていて、「それじゃあ、『虎よ!…』の種本をやろう」と、『巌窟王』をアニメ化したのだとか。
 最初はテクスチャを貼り付けた人物と3Dの背景の合体ロボにくらくらしていた私も、今ではすっかり平気です。
 画面に慣れると同時に、物語の面白さにも目が行くようになりました。
 さすが、古今東西で映像化されて、200年がた生き残ってきた作品だけあるわ。

 と、いうわけで、ちょっと原作の『モンテ・クリスト伯』を読んでみようかな、と、思った私。
 以下、明日へ続く。