1990年代のなかばくらいだったと思うが、四条木屋町の路地裏、私がアルバイトをしていた古着屋があるレイホウ会館の近くにGASPというお店があって当時足繁く通った。

※ここの提灯のところにGASPがあったと……思う!


店主はアパレルメーカーを退職の後、アメリカでアウトレット品を買い付けてお店に並べていた。古着とDCブランド一辺倒だった私だったが、ここでいろいろと新しい感覚を学んだように思う。ラルフローレンの米国旗柄セーター、アルマーニエクスチェンジのTシャツ、グッチのシャツ、ポンプフューリーやエアフォースワン、そういったものは店主さんに出会わなかったら着ることもなかっただろう。

途中ご病気なされたとかで店名が変わった。「GASP」という英語が、食らいつくすとかそういう意味があってそれが自分の身体に良くなかったのではないか、とそういう理由だと聞いた気がする。
店はたしか大阪でもされていたように思うが、それからしばらくして私は就職したりして足が遠のいてしまった。毎日スーツを着る生活になり服を買わなくなるし、何よりファッションに振り向ける気力を失っていた。

数年たち、営業周りをしている最中に、河原町御池に真っ黒なビルが建っているのを発見した。コムデギャルソンである。「ギャルソン好きだったな~」と店内を見て、ふと上にもお店があることに気づき、上がってみることにした。
そこに懐かしい顔の男性が座っていた。件のGASPの店主である。

今はこのブランドをやってるんだよ、良い響きだから付けたというのが「RINN FOOUN PURPLE」だった。凛・風雲・パープル(紫)だそうである。服はどれもシンプルなんだけど尖っているところもあった。白いシャツに白糸でユニオンジャックがステッチされている、水玉部分が透けた生地になっているポルカドットのシャツ、などはお気に入りだった。営業に着て行けなくもないとスーツも買った。


JMウエストンのリバプールを買おうか迷っていると話したら「ABCマートに置いてあるホーキンスにちょうど同じようなのがあるよ、それが良いよ」などと教えてくださり、相変わらず適切ではっきりしたアドバイスをくれるなあと思ったものだ。

※ダメージジーンズ。なんか早すぎた中二病ファッションのような側面もある。


まだ手元に置いてあるのはこのジーンズだけになってしまった。最近ダイエットに成功してふたたび穿けるようになったので当時のことを思い出して書いてみた。ご存知の方はご存知と思うが、店主は今では京都を代表するブランドをされている。何度か寺町通りでお姿を見かけたこともあったが、なぜか気後れして声をかけずじまいだ。