D&D(ダンジョンズアンドドラゴンズ)と出会ったのは中学で寮に入ったことがきっかけである。ビデオゲームもできない、アニメも観れない、そんな制限された寮生活の中で、娯楽に飢えたわたくしがたどり着いたのがテーブルトークRPG(TRPG)だったのだ。当初は先輩に誘われて始めたのだが、キャラメイクの楽しさ、設定の奥深さにすぐに引き込まれることになった。

 

(写真は現在ホビージャパンから刊行されている新版)

谷山電停近くにあった鹿児島模型センターという店で、入口脇に積まれていた新和のD&D箱ルールセットやモジュールを揃えたのはもちろん、その他のTRPGルールブックやボードゲーム関連商品をとにかく買い漁った。当時まだ未訳だったAD&D(アドバンスドダンジョンズアンドドラゴンズ)のルールブックやモジュールなどを読めないくせに見かけたら買っていた。人生で初めて触れる「*本物の」ファンタジーの世界は実に蠱惑的だったのだ。そして指輪物語やマイクル・ムアコックなどにもつながり、ますますのめりこむようになる。

さて、プレイしているうちに「はたして自分の遊び方、ルールの解釈は正しいのだろうか」という疑問に行き当たってしまう。そんな折りに見かけたのがコンベンションの案内チラシだった。もちろん、ウォーロックなどの雑誌やドラゴンマガジン(これは新和のD&Dファンクラブの会報誌のこと)でコンベンションの存在は知っていたし参加せねばならないとすら考えていた。しかし、何しろこの時のわたくしはまだ中学2年生だし、もちろん今で言う陰キャである。正直なところ、死ぬほどビビッていたのだ。

そういう感じで海にでも飛び込むような気分で扉を叩いたコンベンションだったのだが、そこにあったのはおそろしく優しい世界だった。この時のことは忘れられないし、つぶさに思い出すことができる。会場のだれもがTRPGが大好きで、情熱があり、他人を思いやり、なにより新しい世界を創り出しているという気概に溢れていた。ここでの出会いがまたあらたな出会いにもつながり、TRPGの楽しみ方もずいぶん増した。
この体験はその後自分が人生で新しい趣味やイベントに挑む際の意識までをも根本的に変えることになる。

 


(写真のマーブルの20面体ダイスはウィザードリィTRPGに付いていたものでお気に入り)


堀井雄二さんの「人生はロールプレイング」という言葉に触れるたび、わたくしはこの頃のことを思い出すのだ。