成田空港の手荷物返却場のサービスカウンターに勤務する
一人の難聴の女性がいた
お客さんから搭乗時に預かった荷物を
スムーズに返却する仕事をしていた
彼女が旅客サービス全般を行う会社の面接で志望動機を聞かれた時に
「私には難聴の障がいがあります。 それが、御社で働きたい理由です」そう答えると
面接官が「どういうこと?」と詳しい理由を聞いてきた
高校2年の夏休みカナダに短期留学
当時の彼女は飛行機に乗る時の決まり事を知らず
電車と同じで出発時刻ギリギリに乗ればいいと思っていたので
免税店などをブラブラしていると10分前に自分の名前を呼ぶ声が
慌てて搭乗口に誘導する女性スタッフに詫びながら難聴の事を伝え
飛行機に乗ると、先ほどの女性スタッフが伝えてくれたことで
客室乗務員全員が懇切丁寧に接してくれたことが理由だと述べる
しかし、3年間、難聴の事実を何度も突きつけられたが
幼い日、難聴のため、危ない目に遭い愚痴をこぼすと
「今日一日だけは頑張ってごらん」翌日になると
「昨日一日、生きてこられたじゃない
じゃあ、また今日一日だけ、頑張ってごらん」と励まされたことを思い出し頑張り続けた
そんなある日、出口で困った様子で手話をしている初老の夫婦を見かけ
考える間もなくカウンターから飛出し、手話で応対し感謝される
帰りも同じ航空会社の飛行機を利用すると言うので
これで、あの日の恩返しができると心を躍らせ
帰りの便のクルーに、耳が不自由なお客さんがいる事伝えた
その晩、母親に電話をした
「お母さん、今日一日頑張れたよ」
「そう、良かったわね」
「うん、明日もう一日だけ・・・・頑張ってみるね」
電話の向こうで、母親のすすり泣く声が聞こえた・・・・