先日、社長から高校生の時に見たという映画の話を聞きました。
タイトルは「茗荷村見聞記」
滋賀県にある、ごく普通の老若男女と心身障害者たちが、一緒になってそれぞれに適した仕事についてその日、その日を明るく生きるユートピアでの物語です。
その中に、チエ遅れの母親と娘がいました。
父親は、娘が小学校の頃に亡くなったのですが、亡くなるときに、本来なら母親に頼むべきところ
小学生の娘に向い、「お母さんを頼むよ。成人式の晴れ着姿が見たかった」と伝えました。
母親は一生懸命に働き、娘を育てます。
高校を卒業し就職する時、娘は母親に「お母さん、これからは私が働くから、ゆっくりして」と言っても
ただ微笑むだけで、相変わらず一生懸命に働き続けます。
そんな娘も、やがて社会の風に流され、いつしか父親の最後の言葉を忘れ、母親を疎まし思うようになってしまいます。
月日は流れ、成人式の前日、同僚と食事をしほろ酔い加減で帰宅した娘を、母親が洋服ダンスに連れて行き、早く開けて、早く開けてと急かす声に、洋服ダンスを開け茫然と立ち尽くした娘の目からは、後から後から止めどなく涙がこぼれ、やがてその場に倒れこみ、娘の成人式の為に作られた鮮やかな晴れ着を握りしめながら大声を上げて号泣してしまいました。
健常者の娘が忘れた父親の最後の言葉を、チエ遅れの母親はどんな時も、ほんの一瞬でも忘れませんでした。シャンソンの名曲「愛の賛歌」の”ただ命の限りにあなたを愛いしたい”とは、どういう事かを母親が教えてくれたのではないかと思います。
娘さんはこの先、この晴れ着を見るたびに、命の限りに、あらゆる生ある物に愛を持ち続けることでしょう。
私たちは、人間が大好きです。貴方方を愛していることを、どうか忘れないで下さい。