町外れ、小鳥がさえずる小さな森に、今日も僕は向かっていた。
「やぁ、ハンナ」
「あら、エレン。今日はいつもより遅いのね」
「それが、ここに来る途中、気にかかったことがあってね」
「気になるわ、聞かせてみて」
「…ついさっきのことなんだけれど、町の家が多く並ぶ道に、男の子が家から追い出されていてね。それはもう、大声で泣いていて、通りかかる人みんな彼のことを凝視していたよ。」
「みんな、あんな小さな子が泣いているのに、なんて酷いんだ!…そう思って男の子に声をかけようとしたんだ」
「でも、できなかった」
「…どうして?」
「頭の中に色々な考えが浮かんできてさ。もしかしたら、男の子に何か重大な問題があって、親が仕方なく心を鬼にして追い出したのかも…とか、そもそも僕が関わっていい問題なのかな…とか。考えるほど分からなくなって……逃げるようにここに来たんだ」
「…そうだったの」
「こういう時ってどうしたら正解なのか、いつも分からないんだ」
「店の中で喧嘩をしている人を見かけた時も、歩くことが大変そうなお婆さんが目に付いた時も、結局何が正解で、どう動けばいいのか分からなくて、毎回ことが収まるのを待つばかりだ」
「なぁ、ハンナ。君はどうするのが正解だと思う?僕にはもう分からないよ」
「……そうね。私だったら取りあえず、声をかけるかしら。あなたのよく考えてから行動しようとするところ、素晴らしいと思うわ。でも、さっきの男の子の話、男の子側から見たらあなたもあなたの周りにいた人たちも、きっと同じに見えていたわ。あなたがどんなに男の子のことを心配して、思いやりの心を持っていても、何もしなければ見て見ぬふりをして通り去っていく冷酷な大人の一員よ」
「…!何も言い返せる言葉が出てこないよ、、」
「私は、もう何年も町に出ていないから、本当に行動が起こせるかなんて分からないわ。でもね、もし私がその男の子で、あなたみたいな素敵な人が救いの手を差し伸べてくれたら、それほど嬉しいことはないわ。」
「……私の時は誰も助けてくれなかったもの。それがどんなに、辛くて悲しくて苦しいかは私がよく分かってるわ。そう思うとあなたのような人は希望の光だわ、エレン」
「…君が言うならそう思えるよ、ハンナ」
「僕は少し大人になりすぎたみたいだ。少年の頃の僕だったなら、真っ先に男の子に声をかけていたと思うよ」
「もし、またあの男の子を見かけたら、今度こそ声をかけてみるよ。僕が光なら、目の前にある闇は照らしてあげたいからね」
「…そう言ってくれて嬉しいわ。あなたはすごく優しいけれど、みんながそうではないから。」
「……ずっと今のままのあなたでいて欲しい、なんて思ってる私がいるわ」
「ハハッ、君がいる限り、僕は変わらないさ。だって今の僕は君で出来ているようなものだろう?僕の生活も、心も、君がいて出来上がっているんだから」
「あら、そう言ってのけるあなたのこと、大好きよ。明日も来てくれるんでしょう?」
「もちろん!明日はもっと早く来るよ。君と話をしている時が1番幸せなんだ」
「ほんとうにあなたって人は…。自覚しているのか、いないのか(ボソッ)」
「何か言った?」
「いいえ、何も。明日も楽しみにしているわ、それじゃあ、また明日ね、エレン」
「あぁ、また明日、ハンナ」
そうして2人は別れを告げて、明日を楽しみにオレンジの光の中に消えていった。