2日程前、吉祥寺で友達と飲んでて、ジムの知り合いのK氏と飲み屋で偶然一緒になった。
K氏はオレと同じ年なのだが、同席してるのは若い女の子だった。
(おぬし、やるな)と反射的に思った。
女の子がこちらを見た。見憶えのある娘(ここは敢えて ”こ” と読んで頂きたい)だ。
この女の娘も同じジムに通っていて、たまに同じクラスで汗を流す事もあった。 話した事はない。
「どうも。」軽く会釈をした。
しばらくして、K氏らとオレ達は一緒に飲む事になった。
お互い自己紹介したあと、その女の娘がオレに言った。
「ジャッキー・チェンに憧れてらっしゃるんですよね」
「へ?オレ?」
「うん。」
「・・な・・ん・・・でかな?」
「なんか見ててぇ~、あぁ、この人、ジャッキーの事がとっても好きなんだな~と思ってたんです」
「へ・・ぇ・・そうなんだ・・じゃ、ひょっとして、この人、ジャッキーを意識してるぅ~とかってのも思ってた?」
「キャハッ」
恥ずかしくて席を立ちたくなった。ジャッキー・チェンの映画はオレも観るし、こないだもベスト・キッドは観た。
けど、ジャッキー・チェンに憧れたなどいう事は1度もない。
ここ大事なとこなんでよく聞いて下さい。いいですか。
「ジャッキー・チェンにとっても似てますよね~」と言われるのと「ジャッキー・チェンにとっても憧れてるんですよね~?」は、パッと見はなんだか似てるけど、この二つは全く違います。
前者なら言われて恥ずかしい気持ちになる男はそういないと思う。いや、むしろ喜ぶ人が多いんじゃないか。オレも素直に「そうかな・・へへ・・」と照れ笑いの1つも浮かべたであろう。
しかし後者の場合、こんな事を言われた日にゃたまったもんじゃない。昭和の中学生じゃねぇんだから。
いったいオレのどこをどう見て思ったんだ!?
45歳の男がジャッキー・チェンに憧れて、しかも意識してると人に思われてるって、とっても恥ずかしい事だと思いませんか?(アホと思ってたんでしょうね)
その後、女の娘は言った。
「ボイストレーニングにも出てましたよね?ジャッキー、こんなクラスにも出るんだぁって思ってました」
「うん、まぁ・・ちょっとね。」
「ねぇ、あのさ・・あなたの中ではオレ、ジャッキーって呼ばれてたの?」
「キャハッ」
顔見知りは数多かれど、話さないとお互いどう思っているかはわからないもんですね。当然オレだって、顔だけ知ってて名前を知らない人を心の中で呼ぶ時は自分でつけたあだ名で呼ぶ。
そのうちの1人のあだ名は”本当のハウンド警部”。
女性なんだけど、その人を見かけると、(あ、”本当のハウンド警部”だ)と思ってしまう。
何故そのおばちゃんを見ると、”本当のハウンド警部”と思ってしまうのかは自分でもわからない。