どうやらNetflixは「ハリウッドの歴史」そのものを手に入れようとしているようである。
ネトフリが12月5日、米ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー(WBD)の映画事業と配信事業を720億ドル(約11兆円)で買収することで合意したと発表。
このニュースに椅子から転げ落ちるほど驚いた、という映画ファンがいたほどだが、そりゃそうだろう。
この買収が実現すれば「ハリーポッター」をはじめ「ゲーム・オブ・スローンズ」「カサブランカ」など、これまでワーナーが製作した名作ライブラリー全てがネトフリの支配下に置かれ、文字通りネトフリが最強のコンテンツ帝国として君臨することになるからだ。
この大型買収が完了したら、ワーナーの作品を見たいと思う消費者は、必然的にネトフリに入会しなければならなくなるが、結果、多くの消費者が他のサブスク・サービスを解消し、ネトフリ一強体制が出来上がってしまうことは必至。
ただ、市場競争が減退すれば、価格競争も減退することは市場の原理。競争相手が排除されたことで、これに乗じてネトフリのサブスク料金が大幅に値上げされる、という可能性は否定はできない。
そして、その影響をモロに受けるのが消費者だということ。
さらに懸念されるのが、クリエーターたちの「自由な創造」だ。
というのも「ハリウッドの歴史」を作り上げてきたWBDは、クリストファー・ノーラン監督に代表されるように「クリエイティブな直感」を重視し、その作家性を尊重してきた。
対するネトフリは作家性うんぬんより、まずは視聴データに基づき『何秒で離脱したか』『どんなサムネイルがクリックされるか』などをAIで徹底分析。
それを作品に反映させている。
もちろん今回の買収でこの2つがうまく融合し、化学反応が起きれば、より優れた作品が生まれる可能性は高まるのだが…。
しかし一方ではWBDに根付いた芸術性がネトフリの「アルゴリズム」に圧殺され、魅力のない量産型コンテンツになる危険性を孕む。
つまりハリウッドのクリエーターたちが、ネトフリのデータが導き出す『売れるための法則』を受け入れながら作品に向かうことができるかどうか。彼らの間では、この話題で持ちきりだという。
ネトフリがハリウッドの歴史を変えるかもしれない。
それはクリエーターたちにとって、また我々視聴者にとって、許容できる未来となるのか。