3月13日、ついにその幕が開くことになった。

 

 国民的グループ「嵐」のラストツアー初日、札幌・大和ハウスプレミストドーム周辺は、文字通り「嵐」に飲み込まれている。

 

 だが、皮肉なことに、この熱狂の裏には理不尽な「前夜祭」があったことを忘れてはならない。

  「1泊50万円」。

 

 ライブ発表直後から始まった宿泊施設の争奪戦は、異次元の相場を招いた。

 

 市内のビジネスホテルが軒並み数万円から十数万円へ跳ね上がるなか、ファンが殺到したのはススキノのラブホテルだ。

 

 通常ならカップルが愛を語る場に、「予約不可・当日入室のみ」という隙を突いた遠征組の女性たちが、早朝からキャリーケースを引いて列をなす。

 

 5人への愛を噛み締めるための「最終防衛ライン」がラブホというのも、今回の狂騒を象徴している。

 被害を被ったのは、ライブ前日の12日に「国立大後期試験」を控えていた受験生たちだった。

 

 ライブ自体は13日からだが、グッズ購入や聖地巡礼のために11日から「前ノリ」した数万人のファンが、受験生に必要な宿を根こそぎ奪い去ったのである。


 通常1万円程度の宿が5倍以上に高騰し、経済的負担は限界突破。

 

 さらに、試験前夜に静寂を求める受験生の隣室で、ファンの歓喜が響くという精神的苦痛もあり、まさに、実力とは無関係な「理不尽なハードル」が課せられた形になってしまった。

 この窮地に立ち上がったのは、地元の建設会社や設備会社だ。

 

 「社員寮」や「会議室」を無償開放し、簡易ベッドと自習スペースを提供し、受験生の親たちが「チケットか宿か」と絶望するなか、北の大地の善意が、かろうじて彼らの受験資格を守ったのだが…。

 とはいえ、13日夕方現在、会場周辺の国道36号は警察による厳戒態勢が敷かれ、短時間の停車すら厳禁の「アイドルの検問所」と化している。

 

 宿泊を諦めたファンは、LCCは新千歳発の深夜便を緊急運航。宿がないなら空へ逃がすという「弾丸システム」で、札幌入りしているが…。

 熱狂の3日間が去った後、札幌には巨額の経済波及効果が残るだろうが、同時に燃え尽きた街の虚無感も残るはずだ。

 

 「嵐」のラストライブという伝説の幕開けは、北の大地、札幌に何をもたらすことになるのだろうか。