多分、誰も関心が無いと思いますけど、イスラエルと(アフリカの)チャドという国が国交正常化しました。100%の方が「ふーん」だと思います。今日の話は「縁遠い話」、「根拠レス」な話ばかりです。
 
 ネタニヤフ首相がチャドの首都ンジャメナまで行って、同国のイドリス・デビー大統領と国交正常化のセレモニーをやっていました。この地図を見ると、直線距離ではそこまで遠くはありません(それでも5000キロはあります。アフリカ大陸は大きいのです。)。しかし、直線ルートは(イスラエルと国交のない)リビアやスーダンを通らざるを得ないため無理です。今回、ネタニヤフ首相はグーンとインド洋を南下して、ケニアからアフリカ大陸に入り、ウガンダ、コンゴ民主共和国、中央アフリカ共和国を経由して大幅な南回りで行っています。多分、こんな感じで行っています。
 
 ただ、ンジャメナからの帰りは、どうもスーダン政府と調整が付いたようで南スーダン上空を通って帰ったそうです(南スーダンの空域はスーダン政府が引き続き管理しているとか)。これによってかなりの短縮になっていて、その事自体がイスラエルでそれなりのニュースになっています。
 
 イスラエルはイスラム圏の国との国交正常化を進めていて、今回のチャドとの国交正常化もその内の一環だと言えばそれまでです。ただ、結構急速に本件が進んだのです。昨年11月にデビー大統領がイスラエルを訪問し、その答礼とばかりに今回のネタニヤフ首相のチャド訪問で国交正常化。下拵えがあったとは言え、エラく早いなと思います。しかもネタニヤフ首相は今年4月9日に前倒し総選挙を予定しています。そんな中、行きと帰りで機中24時間以上、現地滞在6時間の強行軍をやっているんですよね。
 
 一応、建前上は「ボコハラム等とのテロとの戦いを進めるチャドとの関係構築」みたいな話が出てきています。その他、イスラム諸国との関係改善をやっているというのは、国内のムスリム(大体20%くらい)に対してアピール材料に....多分、ならないと思うけどな、と思います。
 
 しかし、もう20年以上、フランス語圏を中心にアフリカをウォッチしている身として、今回のイスラエルのチャドとの国交正常化についてちょっと疑っている事があります。「経済援助と見返りで、イスラエルの核のゴミ捨て場になるんじゃないかな。」と思うのです。
 
 昔、1999年-2009年まで(西アフリカの)モーリタニアという国とイスラエルは国交がありました。国交正常化の際は何故かワシントンにおいて、オルブライト国務長官の仲介でレヴィ―・イスラエル外相とウルド・シダフメド・モーリタニア外相が握手をしています(写真)。
 
 当時、私はもうセネガルから帰国していましたが、セネガル在勤時にモーリタニアを兼轄していて本件も個人的にフォローしていました。そして、この国交正常化には元から「核のゴミ関係の話があるのでは。」と噂にはなっていました。その後、イスラエルはモーリタニア東部(マリとの国境)のサハラ砂漠のど真ん中に核のゴミを捨てていた疑惑はずっとモーリタニア国内に残っています。私は「多分、やっていただろう。検証できないけど。」と思っています。今はもう両国は国交が切れてしまっていて、廃棄した場所は大した管理はしてないでしょう。「あの時の核のゴミの廃棄場、どうなってんのかな。遊牧民通ったら危ないよ。」と首を傾げてしまいます。
 
 イスラエルは核のゴミ捨て場を常に探しているものの、国内には限界があり、周辺に捨てられる良い場所がありません。ヨルダン川西岸やゴラン高原に捨てているとも言われています。シリアは昔から「(ゴラン高原北部の)ヘルモン山にトンネルを掘って、核のゴミを埋めている。」とイスラエルを非難しています。アフリカのサハラ砂漠がいいのでしょうが、今となっては国交のある国は殆どありません。今回のチャドとの国交正常化を聞いた時、まず私の脳裏に浮かんだのが「核のゴミ捨て場関連の裏取引」の可能性でした。チャド北部には(モーリタニア同様)果てしない居住不可能な砂漠が広がっています。
 
 なお、チャドという国はデビー大統領の独裁で、トランスペアレンシー・インターナショナルから汚職のひどい国家として睨まれています。南部で石油がある程度出るにも関わらず世界最貧国で、為政者は蓄財というパターンです。この手の指標ではいつも最下位付近で出て来ます。ただ、フランスはチャドのデビー大統領を徹底的に守ります。なお、デビー大統領は体調が悪いので、よく欧州で治療しています。何度か過去にクーデターがあったのですが、チャドに常駐しているフランス軍ががっちりデビー大統領を守り切りました。アフリカの地図を見ていると、この国がボコハラム等で不安定化すると周囲に広がってしまうという不安感があります。だからこそ、フランスは軍を置いているわけでもあります。
 
 ここでイスラエルと仲良くするとなると、自動的にアメリカからお駄賃が貰えるようになります。アメリカは破綻国家たるチャドには本質的には厳しい姿勢を取るべきところですが、ここでイスラエルと国交を結ばれてしまうと大事にしないわけには行きません。上記でも書きましたが、モーリタニアはイスラエルと国交正常化した後はアメリカに可愛がってもらっていました。ともかく、イスラエルと国交正常化した国に対してはアメリカは厳しく出る事が出来ません。そういう意味で、チャド側から見ると「これで欧米からガチャガチャ言われずに済む。」という事なのかもしれません。
 
 そういうインテリジェンスはまだ何処にも出てきていないようです。ネットで検索しても出て来ません。強調しておきますが、100%根拠レスです。将来、当たっていたら誉めてください(笑)。