北朝鮮の「火星15号」が発射され、日本の排他的経済水域に落ちたとの事です。断じて許す事が出来ません。

 

 その上で、メディアを見ていると「何が問題なのか?」という事について混乱があるように見えます。整理が付いていない部分があるのではないかと気になります。何が問題なのかという事は、その対応にも影響してきます。

 

 私が考え得る問題点というのは、以下のようなものです。

 

(1) 累次の国連安保理決議に反している事

(2) 北朝鮮のミサイルが将来、日本に発射されるおそれがある事

(3) 北朝鮮のミサイルが将来、日本の同盟国に発射されるおそれがある事

(4) 日本の上空を飛んでいる事

(5) 日本の排他的経済水域に落ちた事
 

 これらを順に見ていきたいと思います。

 

(1):「国際社会の平和と安全に対する脅威」だという事です。世界全体として、これは問題だと認めた上で制裁を課しています。これはきちんとやっていくべきです。

 

(2)及び(3):これは(1)とほぼ同義です。正にこれらが「(日本や日本の同盟国を始めとする国際社会への)脅威」になっているので、国際社会として制裁という形を通じて対応しているという事です。また、日本が独自制裁を課しているのも、こういう脅威に対する対応と見ていいでしょう。

 

(4):超高度を飛んでいるので、現在の国際法における領空の考え方からすると、飛んでいる場所そのものは主権の及ばない地域という判断になります。国内法的にも、日本の領域に落ちる可能性がある時のみミサイル防衛が発動できるという事になっています。今回はそういう可能性は無かったでしょう。

 

(5):現在の日本の国連海洋法条約の解釈では、排他的経済水域へのミサイル発射については「妥当な考慮」が払われていれば国際法違反にはならないという事になっています(勿論、払われていませんが)。あくまでも仮定中の仮定の話ですが、北朝鮮が「妥当な考慮」を払ってきたら問題ないのかという事になります。

 

 しかし、本当にそれでいいのかなと私は思うのです。(4)と(5)について、本当にその程度の認識で良いのかなと思うのです。今の日本の法解釈では、(4)と(5)について真正面から「問題だ」と言えるようになっていないのです。今は(1)~(3)を経由してのみ問題視し得るようになっています。逆に国民感情としては、(4)や(5)がかなり重視されているはずです。

 

 これまでの法解釈を徹底的に見直して、(4)や(5)そのものが問題であるという姿勢を取れるようにすべきだと思います。たしかに宇宙空間を飛んでいるという事ではありますが、自国の上空をミサイルが飛んで行っている事を法律上問題視できないという理屈を持っている国は世界中何処にも無いと思います。また、自国の排他的経済水域にミサイルが落ちている事への対応を「妥当な考慮が無かった」で留める国も無いはずです。例えば、米国はグアム上空をミサイルが飛んで行ったり、グアム沖の排他的経済水域にミサイルが落ちたら、その事実を以て厳しく対応するはずです。

 

 (1)~(5)、どれも看過し難い事ですが、現在の法制度の中で(4)と(5)に対する姿勢が弱いと思うのです。勿論、超高度のミサイルを撃墜出来るわけではありません。しかし、だからといって、それ自体を問題にする事なく、あくまでも(1)~(3)の範囲でしか問題視しないというのは不十分だと思います。やはり、上空を飛んでいる事や排他的経済水域に落ちた事そのものによって、日本の「何か」が侵害されているという前提に立つべきです。

 

 あくまでも物事の把握の問題でしかありませんが、報道を見ていると若干の混乱があるように見えたので一文書きました。なお、こう書くと「現職の時代にやればよかったではないか。」と言われます。内閣委や外務委で問題提起はやっていた事は付言しておきます。