6月2日、フランス語教育学会で30分強、フランス語で講演しました。映像はココです。聞き直してみて、「発音悪いなあ」と反省していますが、最後にフランスに行ったのは2004年。13年フランス語圏と殆ど縁が無いので仕方がない、と勝手に諦めています。元々は先輩議員からのご紹介で、「君くらいしかやれないだろ」という事で、「たしかにそうかも」と思ってお受けしました。

 

 原稿は自分で書きました。A4で9枚の原稿を書くのは結構辛いものでして、苦労しました(勿論、最後に若干のネイティブチェックがありました。)。

 

 スタートの所で緊張のあまり発言でコケています。一応、「緊張しています。国会で演説する時、安倍総理と激しいやり取りをやる時より緊張しています。」と話したらウケました。一応、ジョークの予定だったので安心しました。

 

 内容としては、以下のようなものでした。

 

● 自己紹介

 大学時代はドイツ語が第二外国語だった。しかし、今、覚えているのは「Ich kann nicht Deutsch sprechen(私はドイツ語が話せません)」だけだ(と話したらこれもウケました。)。それはともかくとして、フランス語を始めたのは20歳の時で、外務省から指定された。最初はかなり苦労した。なお、日本人は「r」の発音が難しいと思っている人が多いが、一番日本人が苦手にしているのは実は「ou」の音。これが正しく出来ていないフランス語話者はかなり多い。

 

 フランスではブザンソン、リールにそれぞれ1年住んだ。大学に登録したけど、言葉がよく分からなかったので結局学位を取れなかった。フランス語が上達したのは、その後のセネガルでの2年間の勤務だった。

 

● 一票の格差

 日本では衆参共に一票の格差が問題になる。しかし、フランスやアメリカは違う。いずれの国も上院は「領土」、「州」を代表するという位置づけである(結果として人口の少ない地域の過剰代表になるという傾向がある。)。このまま、今の制度のまま行くと、人口が減少する県の将来はどうなるのかという事を気にしている。日本でも「領土」、「県」を代表するような制度を憲法改正の枠組みで考えるべきではないかと思っている。

 

● 国会における「左」と「右」

 フランスの国会では、議長から見て左派が左、右派が右に居る。これが「左派・右派の」区分の原点。今、日本でも自民党が右、民進党が左に居る。ただ、これはフランスとは違う。2009年(2004年と言い間違えています)、民主党が政権についた時、民主党は左から右にお引っ越しをした。つまり、日本では右に居るのは「与党」、左に居るのは「野党」、これだけである。

 

 それが影響してかどうかは分からないが、日本では政治信条的にも左派・右派の違いはかなり低い。自民党にも左派っぽい人は居るし、民進党にもかなり右寄りの人がいる。日本には永遠の「左」も、永遠の「右」も居ないと私は思う。

 

● フランス政治における「せり上げ」

 まず、この話をしています。

 

 フランスでは、急進左派からキャリアをスタートするものの、より左派の勢力が出てくる結果、どんどん中道から右派に押し出されていく現象がある(政党レベルでも、政治家レベルでも)。これを政治学者モーリス・デュヴェルジェは「せり上げ」と呼んだ。

 

 大統領選挙でも分かる通り、もう社会党は左派の理念を体現しているとは思われていない。また、共和党も極右国民戦線からどんどん右派の領域を侵食されている。結果として、中道の領域が大交通渋滞を起こしている。これは「せり上げ」が左からも、右からも生じているという事ではないかと見ている。そして、アメリカでトランプ、サンダース現象も同様の見方が出来ると思う。

 

 中道勢力がやりにくくなっている。何故、そういう事になるのか。それはグローバリゼーションが進み、世界的な競争が進む中、世界的に「ゆとり」が無くなってきている事がある。そして、人は気持ちのいいメッセージを聞きたがっている。それが実現できるかどうかはともかくとして、ともかくエッジの利いたメッセージを聞いて留飲を下げたいという思いが世界に広がっている。穏健なメッセージを100聞くより、都合のいいメッセージを1つ聞きたいという思いが、この「せり上げ」を生んでいるのではないかと思う。

 

 日本ではまだ有力な極右、極左勢力は出てきていない。しかし、足音は聞こえている。何故、政治的に有力にならないかと言えば、それは国民を引き付ける巧みさを兼ね備えてないからだけである。

 

● フランス外交と日本外交

 フランス外交と日本外交の最大の違いは、「安保理の常任理事国」であるか否かである。どの程度の外交上のオプションを持てるかは、ここに大きく左右されている。仮に憲法9条を改正したとしても、この違いは常に大きく圧し掛かる。

 

 日本も常任理事国入りを目指している。ただ、周辺国からいつも嫌がらせをされている(ここで韓国と北朝鮮を言い間違えています。)。ドイツ vs イタリア、ブラジル vs アルゼンチン、インド vs パキスタンという構図と同じである。なかなか、実現に向けた見通しが立ちにくい。

 

 私は常任理事国入りを強く願っている。今でも諦めたわけではないが、現実に立脚すれば、常任理事国入りせずとも広げられる日本の役割は何処までなのかという事を突き詰めて考えたい。

 

● フランス語の将来

 フランス語の将来は、フランス共和国のみにあると思ってはならない。フランス語も多様化を受け入れなければならない。フランス人はよく、英語の影響力拡大に対して対抗して多様化を訴えている。しかし、フランス語圏において多様性を認める方向で動いているようには思えない。何処か、フランス語はフランス人のものと思ってはいないだろうか。

 

 フランス語が話せることは私にとってはとても強み。ただ、それを日本の学生に売りこめているだろうか。大体、日本におけるフランスのイメージは古臭いステレオタイプに支配されている。今更、「枯葉」や「オーシャンゼリゼ」の世界ではないだろう。そんなイメージでは、第二外国語としてフランス語を選んでくれる学生はどんどん減っていく。

 

 フランス語圏が多様であることは、アフリカ経験のある私がよく知っている。世界で色々な訳に立つフランス語を売り込んでいかないと、大学教育においても中国語、スペイン語等に淘汰されていくだけだ。だから、フランス語内部における多様性という事を考えるべきだと思う。

 

 ・・・、こんな話をしています。言い間違いや発音の滞り、たくさんあります。ただ、あとで聴衆の皆様に確認したところ「概ね」通じていたようです。まあ、内容以前の問題として、これをやるだけで大変だったことだけはご理解していただければ幸甚です。